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Fast Companyの報告によると、カリフォルニア州にある薬物検査機関PeopleG2は、ネットを通じて、15分足らずで自分の体に新型コロナの抗体があるかどうかを診断できる検査キットを販売しているという。抗体検査は、コロナウイルスを克服した人を特定するために行われる。正確に判断できるのなら、誰が仕事に戻ることができ、誰が献血の有力な候補者であるかを判断するのに役立つという。
現在アメリカには、こうした新型コロナの抗体検査キットを扱う組織がいくつかある。企業はこれを従業員に行い、オフィスで働けるかどうか健康診断を行っている。
じつは、そのほとんどはアメリカ食品医薬品局(FDA)の認可を得たものではなく、その事実が当局の苦肉の策であることを示している。
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一定の基準を満たせば未認可の検査キットの販売が認められている現状
実際に抗体検査キットを利用していいのは医療機関においてのみという条件付きだが、一定のガイドラインさえ満たせば、未認可のまま抗体検査キットを販売することをFDAは容認している。その目的は抗体検査を後押しすることだ。ToxTest社もまた、すぐに結果が分かる抗体血液検査キットを販売している。開発したのはW.H.P.M.社で、同社サイトには、検査の精度は97.9パーセントであると謳われている。また、それと併せて、FDAの審査を受けていない旨や、医療の専門家のみが利用できる旨が説明されている。
PeopleG2社もToxTest社も、25回分の抗体検査を625〜650ドル(約68750〜71500円)で販売する。どちらも指先から採血して検査するタイプで、FDAの認可は受けていない。
現時点で、FDAが認可した抗体検査は唯一Cellex社のものだけで、それも緊急時という条件付きの認可だ。

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FDAの二正面作戦
FDAのガイドラインに沿ったものであるとはいえ、こうした未認可製品が出回ることを懸念する声もある。それらはしかるべき機関によってきちんと検証されたものではないので、本当に信頼できるのか定かではないのだ。実際、ヨーロッパ諸国は、当てにならない抗体検査にすでに悩まされてきた。それでも、FDAは一定の基準を満たした検査キットを容認しつつ、同時にその検証を進めるという二正面作戦を遂行している。
そもそも抗体検査キットは、FDAが管轄する”医療機器”の定義にはっきり当てはまるわけではない。FDAが管轄とする医療機器とは、病気や怪我を診断・治療・予防するための道具だ。
抗体検査が従業員が働けるかどうかを判断するために利用されるなら、それは病気の診断ではないことになる。
だが、それでもなおFDAは抗体検査の検証を進めており、きちんと機能しない詐欺的な検査を販売する企業が見つかれば、取り締まる可能性が高い。

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新型コロナ対策の一環として重要なコミュニティの健康診断
企業側の抗体検査販売へ向けたアプローチはさまざまだ。たとえばBioAmerica社は、およそ1000円でできる抗体検査の販売計画を発表しているが、FDAの認可が下りるまで流通させるつもりはないようだ。反対にAdvaite社は、すでにペンシルべニア州某郡の保健局に納品している。そうした保健局は、さまざまな分野で新型コロナへの対応に当たっている。そのため、そこで働く職員に抗体検査を行い、感染リスクが低い者を把握するのは大切なことなのだ。
抗体検査は、あるコミュニティの健康を診断するという重要な役割を担っている。検査結果は、病気に倒れることのない人間が誰であるのか明らかにしてくれるからだ。

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抗体検査は感染の有無を診断しない
だが、検査には注意が必要だ。特に問題となるのは、仮に陽性反応が出てしまったとして、その人がウイルスを他人にうつさなくなるまでどのくらいの時間がかかるのか? ということだ。体に抗体ができたとしてもなお、他人にうつす危険があるかもしれない。抗体検査はあくまで抗体の有無を調べるものであって、その人物が新型コロナの感染者であるかどうか断定するものではないのだ。
FDAは、未認可の検査キットを販売する会社に、その検査結果が新型コロナ感染の有無を診断するものではなく、それをきちんと調べるにはさらに検査が必要である旨を利用者に必ず警告するよう義務付けている。
References:Coronavirus (COVID-19) Update: FDA Alerts Consumers About Unauthorized Fraudulent COVID-19 Test Kits | FDA / COVID-19 antibody tests are here. But can you trust them?/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
本文の
”体に抗体ができたとしてもなお、他人にうつす危険があるかもしれない。抗体検査はあくまで抗体の有無を調べるものであって、その人物が新型コロナの感染者であるかどうか断定するものではないのだ。”
ここ重要
あと、近々では再感染が疑われてる事例が出て来てる。って事は「抗体があってもウイルスの変異が速いので、持っている抗体が直ぐに役に立たなくなる、抗体の効きが弱い可能性がある」
ここを大急ぎで研究機関が今調べてる。
2. 匿名処理班
FAAの事件で散々悪い教訓学んでるのに今度は
FDAでドジ踏むのかよ
緊急的処置が必要とはいえ、間違ったものだと逆効果
ある程度の臨床は必要だと思うぞ
3. 匿名処理班
アメリカ人女性が新型コロナの治療で請求された医療費
酸素吸入、脱水症状への処置で34,927ドル(約387万円)
死ぬほど苦しくても病院に行かない理由は医療費。
長期入院になったらゼロ60個くらいふえるからね。
紙幣で支払おうとしたらジャングルの木が失われて
地球が滅亡する。どっちみち滅びの道しかない。
4. 匿名処理班
※1
再感染に関しては変異の可能性も否定はできないけど
検査精度が100%でないのだから一定数は陰性反応がでた後でも陽性反応がでて当然です
それは再感染とは言えません
いたずらに恐怖心を煽るのはやめて欲しいです
5. 匿名処理班
もうほんとうにパニック状態なんだな
アメリカって結構簡単に自滅するんだなって
世界が知ったと思うわ
6. 匿名処理班
安価な医療機器の民間への供給になれてないアメリカとこの不景気に少しでも稼がなきゃならない民間企業の利害が一致したのね
不倶戴天のロシアから医療機器購入したりもうなりふりかまってないね。構える状況でもないんだろうけど
海岸沿いの大都市圏だととんでもない感染者がいるだろうし
7. 匿名処理班
みんな「とりあえずの安心」が欲しいんだよね
これで新型コロナに罹ってないって判断できたとしても、検査した時点で、って但し書きがつくだけなんだけど
罹ってないからどこに行っても大丈夫だ→罹患→知らず感染源に
って未来が見えるな
8. 匿名処理班
今日の日経の記事によれば残念ながらまだ実用可能レベルの精度ではないらしい
しかし実用可能までもってければ有力ではあるんだよね
医療者と接触すること無く検査できるのは大きいよ
確定のためにPCRしなきゃならなくてもその数を減らせる
9. 匿名処理班
急がば回れ
10.
11. 匿名処理班
風邪ウイルスを本気で防ごうとしたらこれだけ社会に負担がかかるってことだな
そろそろ限界迎えてこういう明らかに安全じゃない方法で無理矢理納得する人間が増えるだろうね
12. 匿名処理班
>>5
他人のこと笑える状況やないで
13. 匿名処理班
>>7
逆やで
交代がある=無敵の人やで
14. 匿名処理班
ワクチンが開発されるまでは攻防が続くだろうし、医療機関に少しでも余裕を持たせられるなら意味はある
って事かな
15. 匿名処理班
※5
宮城、山形、東京、神奈川、千葉、岐阜、福岡、高知、沖縄の病床はすでに満床。
福島、埼玉、福井、京都、愛知、広島、愛媛ももうすぐ満床。
もう入院できないんだぞ日本でも。
16. 匿名処理班
国立感染症研究所のHPにigr?抗体検査の精度に関するレポートあったけどやっばり精度低いんやね
17. 匿名処理班
※4
※1の投稿なら別に恐怖を煽ってはいないんじゃないかな。
今回始めてのウイルスであるだけにまだ不確定な事項が極めて多いってことで、だからこそ各研究機関も必死で調べてるってことだね。聞く方も一つ一つのニュースで一喜一憂しないで受け止めた方が(もしくはスルーした方が)いいよね。
18. 匿名処理班
昨日NHKの番組で、厚労省クラスター対策班の押谷教授が「感染者が急増している状況の中で、PCRの検査が増えていかないという状況は明らかに大きな問題です。このことは専門家会議でも繰り返し提言をしてきて…」と言ってたけど、日本で感染爆発が既に始まってるのでは?
19. 匿名処理班
※13
抗体があっても必ずしも再感染を防げるか専門家ですら断定できていないから現時点では無敵に成れない
20. 匿名処理班
アイロンビーズに見えた