
だがじつは演奏家と聴衆には体だけでなく、脳においてもシンクロ現象が見られるらしい。
『NeuroImage』(2月18日付)に掲載された研究によれば、音楽を通じて、演奏家と聴衆は感情的にも行動的にも、それどころか神経レベルですらつながっているのだそうだ。
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バイオリン奏者と視聴した人の脳の血流を測定
華東師範大学の研究グループが調べたのは、楽曲を演奏する演奏者とそれを聴く聴衆に現れる「脳間コヒーレンス」だ。これは脳活動のシンクロレベルを表すもので、聴衆が音楽を楽しんでいる程度をも知ることができるという実験では、まずプロのバイオリニストにクラシックの楽曲12曲をそれぞれにつき100秒ほど演奏してもらいながら、そのときの脳の血流を近赤外線分光法という手法で測定した。
このときの様子は録画されてもいた。撮影中、バイオリニストは無表情のままカメラを見るように指示されていた。無表情なのは、ある曲の演奏が他に比べて楽しかった場合、それを聴衆に悟られないようにするためだ。
次に女性16人に録画した動画を視聴してもらい、やはりこのときの脳活動を同じ手法で測定した(聞き手が全員女性なのは、脳間コヒーレンスに存在する男女差を考慮したため)。
彼女たちは、視聴中はバイオリニストの顔を見るよう指示されており、1曲を聴き終わったら、その評価を7段階のスケールで採点してもらった。

Niek Verlaan from Pixabay
バイオリニストと聴衆の脳に類似の活動パターン
その結果、バイオリニストと被験者の脳には似たような活動パターンが観察されたそうだ。特に重要なのは、「左側頭皮質(left temporal cortex)」「右前頭葉下部(right inferior frontal cortex)」「中心後皮質(postcentral cortices)」でそのようなパターンが観察されたことだ。
左側頭皮質は、音情報のリズムを処理するとされている部分。そして残り2つは、「ミラー・ニューロン」の重要な中枢であるとされる部分だ。
ミラー・ニューロンとは、他人の行動を見て、それを自分自身の行動のように感じさせることができる神経細胞のこと。相手の立場になって、その人のことを考える上で大切な役割を果たしているとされる。
つまり、演奏者の姿を見つめる聴衆は、まるで自分で楽器を弾いているかのような感覚を味わっているらしいということだ。

Warren Miller from Pixabay
高評価だった楽曲ほど、脳のシンクロ率が高い
各曲ごとに観察された脳間コヒーレンスを平均化し、これを被験者がつけた楽曲の評価スコアと比較してみると、ここにもはっきりとした相関関係が確認されたという。被験者に好評だった曲ほど、被験者とバイオリニストの左側頭皮質には強い脳間コヒーレンスが現れていたのだ。ところが面白いことに、脳間コヒーレンスと高評価との相関は、各楽曲の後半でしか認められなかったそうだ。その理由について、研究チームは音楽鑑賞には2つの段階があるからではないかと推測している。
第1段階では、リズムが認識され、楽曲の大体の構成が把握される。その上で、第2段階として、メロディの流れを予測しながら、感情が共鳴し出す。
音楽が楽しいのと感じられるのは、自分が予想した音楽の展開と、実際に聞こえてくる音の展開が一致したときなのだそうだ。そのため、そもそも曲の流れを予測できない前半部分では、脳間コヒーレンスが高まらないということだ。

Gerd Altmann from Pixabay
他のジャンルや楽器ではどうか?
脳間コヒーレンスと評価のシンクロが集団レベルでしか確認されなかったことや、他の音楽ジャンルあるいは楽器を使った場合でも同じような結果が得られるのかどうかなど、演奏者と聴衆の神経レベルのシンクロについてはまだまだ研究を進める余地がありそうだ。また今回の研究では、皮質の血流しか測定されていないので、辺縁系のような脳のもっと奥深くにある領域の反応は不明だし、被験者が女性のみだったので、男性の反応も分からない。
それでも今回の研究は、音楽鑑賞という人間ならではの行為について洞察を与えてくれるとともに、さまざまな音楽に対する一般大衆の態度を予測するヒントにもなりそうだ。
References:Musicians And Their Audiences Show Synchronised Patterns Of Brain Activity – Research Digest/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1.
2. 匿名処理班
タイトルだけだと何かとてつもないことに思えるけど、
スポーツ観戦や映画鑑賞、果ては悩み相談でも同じようなことではなかろうか?
3. 匿名処理班
犬も遠吠えでシンクロしているね
実は仕組みが似ているのかも
4. 匿名処理班
「一体感」ってそう言う事ではないのかな
5. 匿名処理班
シンクロと言うか、同じ外部刺激を受けてる同士の反応が被るのは当然の様な…いや門外漢なので如何凄いのか判らんだけかもですが
意識向けてる対象を提供してるかされてるかの違いは有るけど提供する側だって最高の音聞きたくて演奏してる事には変わりないだろうし
6. 匿名処理班
最終的に演奏家と聴衆はシンクロします
7. 匿名処理班
マクロスシリーズを思い出したわ
8. 匿名処理班
自分がよくわからないジャンルのライブにポンっと放り込まれたら、最初は
9. 匿名処理班
管理人さん、ごめんなさい。自分がよくわからないジャンルのライブにポンっと放り込まれたら、最初はわからないけれど、最後はノリノリで楽しくなったよーも、シンクロってこと?…と、書こうとしてたの。
10. 匿名処理班
厨二病「っ!…共鳴してる…」
11. 匿名処理班
「共鳴」みたいな感じかな?
12. 匿名処理班
共感だね
ライブと収録での楽しさは別にあるっていう一つの要素だと
13. 匿名処理班
サバト
14. 匿名処理班
ライブ中推しとわたしは一つになってるんですね!
シアワセです!!
15. 匿名処理班
大縄跳び跳ぶ人と回す人みたいなかんじ?
16. 匿名処理班
だから、それこそが、所謂一つのロックンロールじゃねえかよ(爆
17. 匿名処理班
まあしかし今は自粛しないとねw