
・関連記事:どことなくディストピア感が漂う、半分海に沈んだ水中レストラン「Under」(ノルウェー)
このレストラン、海底から現れた、あるいは海に倒れこんだコンクリート製のモノリスといった外見なのだが、一体どのような感じに仕上がったのだろうか。
陸上と海底をつなぐコンクリートのチューブ
「私たちのほとんどにとって、全く新しい世界の経験なのです。水族館ではなく、北海の野生です。だからこそ、より興味深いのです」と、建築家チームのリーダーであるルーン・グラスダル氏はいう。「天気が悪ければ(海は)荒れます。すごいですよ、こうして安全に座ったまま、自然を間近に感じることができるのですから。とてもロマンティックで素敵な体験です」
レストランの、限りなくシンプルな外観のコンセプトは、陸上と海底をつなぐ「コンクリートのチューブ(管、トンネル)」だ。長さは34m、コンクリートの厚みは50cmあり、波や水圧に十分耐えられるようになっている。
「(チューブによる海中への)移動はとてもわかりやすいですが、同時に強い印象を与えるものです。また、罠にかかったようにではなく、安全に感じられなければなりません」とグラスダル氏。
あたたかみのある三層のフロア
「コンクリートのチューブ」の内側に足を踏み入れると、大きく三層に分かれていることがわかる。クロークのあるエントランスフロア、続いてシャンパン・バーのフロア、そして一番下が、メインとなるダイニングフロアだ。インテリアは外見とは打って変わってあたたかいイメージだ。エントランスフロアと、三層をつなぐ階段には、白木のオーク材が用いられている。時を経るにしたがってオーク材は灰色味を帯びていき、コンクリートの中に溶け込んでいく。

image credit: dezeen
シャンパン・バーにはピンクとオレンジのあたたかい色味が用いられ、貝がらや、海岸の砂が想起されるようになっている。

image credit: Inger Marie Grini/Bo Bedre Norge
最大40席のダイニングフロアへ下りると、一転して、深い青と緑が主体となる。いわずと知れた、海底を思わせる色合いだ。そしてチューブの先端に当たる部分には、11m×3mの巨大なアクリルの窓があり、海中を眺めることができる。

image credit: Inger Marie Grini/Bo Bedre Norge
しかし、レストランとしてのメインの営業時間はディナータイムだ。そのままでは外は暗く見えなくなってしまうので、海中は電灯のやわらかい光で照らされ、逆に室内の照明はできる限り落とされている。また、インテリアにあわせたオーク材のテーブルとイスも特注の品だ。陶器の食器類は、まさにこの地の海床から採った砂を用いて、地元のアーティストがデザインした品である。
「海の中へ5mも下りていくことを考えたら、閉所恐怖症になるかもしれないという想像はすぐにつくでしょう。でも、ここでは誰一人としてそのような心配はいりません」とグラスダル氏はいう。
「あたたかい雰囲気が大切なのです。布による装飾、オークのような自然の素材、よい音響と照明、それらが一体となって、よい雰囲気を作り出しているのです」
外側は海洋生物の寝床に
さて、コンクリートの外側は、敢えてラフな仕上げになっている。海藻類や貝類の付着を促すためだ。時と共に、この人工の岩礁に棲みついた生命が水を浄化し、また新たな海洋生物を呼び寄せることが期待されているのだ。「Under」はレストランであると同時に、海洋生物学者のラボにもなる。レストランとしては、建築やメニューを通して、生物多様性について広く人々に発信していく。
ラボとしては、魚の行動を研究するための基地となる。季節ごとの行動様式の違いや、照明や音に対しての反応、野生の魚を訓練することができるのか、という研究課題などが考えられる。
また、将来的には機械学習のツールを導入し、ある特定の群れをモニターして一定の間隔で記録する、などといったことも考えられているようだ。

image credit: Andre Martinsen
「Under」の席はインターネットからでも予約できる。が、現在受け付けている9月末までは既にキャンセル待ちの状態だ。そんな訳なので、来年当たり北欧へ出かける予定のある人は、狙ってみてもいいかもしれない。References: Dezeen / Colossal など / written by K.Y.K. / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
海に突っ込んでる状態の構造なのか、シュールだね。
でもこれぞ近代建築!行ってみたい。
2. 匿名処理班
遠いィ!
3. 匿名処理班
寒冷地の海生物ってクリーチャー感満載なの多そう(〃∇〃)そして環境にも配慮されているとかも素晴らしい!是非一度は行ってみたい!
4. 匿名処理班
いいなあ〜この暗さがいい。
海洋国の日本も是非って思いつつ、
地震と台風を考えると怖くて行けないという思いもあり…
5. 匿名処理班
不時着したんか?って形がいいね
6. 匿名処理班
いいねえ、日本も水族館がどこかの飲食企業とコラボして作らないかなあ〜大金がかかりそうだから難しいだろうけど
7. 匿名処理班
面白いよね。
もっと海が華やかだといいんだけど、北の海では仕方ないかな?
8. 匿名処理班
海に電灯付けて明るくしちゃったら生態研究には向かないような気がするんだけどな
ディナータイムの間はずっと付けっぱなしでしょ?研究でちょっと潜って照らすのとは訳が違うし
プランクトンが集まりまくって凄いことになりそう
9. 匿名処理班
実家が国道挟んですぐ海って場所にある超海辺育ちだけど、建物のメンテナンスが心配。お店の入口の木彫っぽい部分が木製なら、綺麗に保つのはものはすごい手間とお金かかるよ……(普通に管理程度してるぐらいじゃ、すぐに白っぽくなってぼろぼろになる)。
10.
11. 匿名処理班
コナンの映画を思い出した
12. 匿名処理班
58.040952, 7.154708
ここかな、まだ google map には載ってないのか
13. 匿名処理班
水中レストランという特殊さに加えてノルウェーの物価を考慮すると、写真の一皿でも1万円くらいしそう
14. みあきち
海中を眺める窓はアクリルなんだろうが、水漏れ防止のコーキングなどは海水水槽のそれと同等の耐久性だとして、長いこと経つとやはり劣化して漏れてきそうで怖いかも知れん…
海中側の窓面もフジツボなどがつかないように除去など、メンテナンスも苦労しそうだ。
15. 匿名処理班
北欧のこう言うデザインってモダンで格好いいんだよねー。
16. 匿名処理班
自分は湖恐怖症なだけだと思ってたらこのレストランを見てもゾワワワ〜っと鳥肌が立った
閉所恐怖症ではないんだけどなぁ
17. 匿名処理班
お!できたんですね。前回記事の時に見てたコンセプト通りのイメージで仕上がっていてびびっています。すげえなあ、あんな通りのまんまに造れるんだ…
テーブルが記憶よりやや森林ぽい??コンセプト画像とゆっくり比較してみようと思います。
※12
そのポイントのやや左にあるUnder Lindesnesてトコっす
前回記事コメにも座標記しておきましたが書き写しときますね
58°02'27.0"N 7°09'15.1"E
18. 匿名処理班
四国のど田舎ですら海中レストランはあるのに
これまでヨーロッパになかったことが驚きだ
19. 匿名処理班
こういう難工事で作られたような建造物の、
テロでの破壊に対する復元性というか
再建容易度とコストが気になってしまう
一度海に沈んだらやべーだろうなぁ
20. 匿名処理班
立地環境とか、外観とかより、内装のセンスの良さの方が目立つ
シンプルだけどお洒落で、採光の具合もセンス良い
21. 匿名処理班
※13
コースでその3倍くらいっぽいね
ワインも頼んだら日本円で5万くらいかな
22. 匿名処理班
あっちでも生で食べるんだね。
何の身だろう?ロブスター?
23. 匿名処理班
ガラスが割れて水が入ってきても最後まで逃げられる構造になっていればと思うけど地震国でないとそういう発想ができないんかな
24. 匿名処理班
※23
水族館でもそうなんですが、この手のガラス面は透明度が非常に高いので、薄い部材で出来ていると思っている人が大勢います。ですが、実際は厚さが数十センチあるアクリル製です(この場合はもっと分厚い可能性もある)。なので、生半可な地震で割れたりする心配はないと思います。
ちなみに、海遊館のジンベイザメの入っている大型水槽のガラス面(まあ、ガラスじゃないんですがw)で、厚さは30〜60センチ(水深で厚さが変わる)あったと思います
25. 匿名処理班
そーんな水中レストラン
いろんな人がやってくる
26. 匿名処理班
下田と勝浦には海中水族館があるぞ。
27. 匿名処理班
これは面白そうだ
勝浦にも海中展望塔ってのがあるけど
そこまで広くはないし中でゆっくり食事は出来ないもんな〜