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想像力が恐怖や不安の克服に役立つ。実際にその恐怖に危険がないことをイメージするだけでも効果があるという研究

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(著) (編集)

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 誰だって何かしら怖いものがあるだろう。クモが嫌いな人、狭い場所が苦手な人、高いところが嫌な人、死が怖い人など、恐怖の対象は様々だ。

 こうした”脅威”に遭遇したとき、心臓は鼓動を速め、手にはじっとり汗がにじむ。これは「脅威恐怖反応」といい、苦痛を味わう可能性を避ける手助けをするために生じている。

 ほとんどの人は、脅威があるときのみ恐怖心を抱くが、もし実際にそうした脅威がないのに脅威恐怖反応が生じるのなら、それは心的外傷後ストレス障害(PTSD)や恐怖症、不安神経症と診断される。

 目の前に脅威があるわけではないのに、不安から恐怖が発生してしまう、こうした症状の治療には「疑似体験療法」が使われるのだが、新しい研究によると、ただ想像してみるだけでも恐怖の克服に効果的なのだそうだ。

刺激とその結果の関連性を忘れることで恐怖を克服

 恐怖に関連する障害を治療するときに使われる疑似体験療法では、”引き金”(脅威恐怖反応を引き起こす映像や音など)があっても危険な結果は生じないということを示して、両者間の連想を断ち、脅威恐怖反応を忘れさせる。

 たとえば、PTSDの兵士にヘッドホンで爆音を聞かせたりする。

 このとき、実際の戦闘ではないので、爆音が鳴っても危険は生じない。すると患者はやがて爆音とそこから想像される危険は関係がないということを学習し、脅威恐怖反応を示さなくなる。

 しかし、そうした疑似体験すら刺激が強すぎたりする場合には、この療法が不適当なことがある。

 こうしたケースで有効とされるのが、患者に”引き金”を想像してもらい、そこから危険が生じないことを学習する「誘導イメージ療法」である。

 嫌いな刺激を想像するこのやり方では、患者は自分のペースでそれに浸ることができる。これが新しい治療法として有望視される理由だ。

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istock

想像はどのように働くのか?

 想像とは、現在は認知されていない物事の刺激を心で生じさせること。つまりは感覚情報や過去の経験から頭の中に作り上げたビジョンである。

 こうした心の中の表現は記憶としてきちんと残るし、将来や架空のシナリオを想像するために使うこともできる。

 想像をするとき、脳の視覚野や聴覚野のような目や耳からの情報を処理する領域、さらには海馬のような記憶検索領域が使われている。

 じつは、こうした脳のネットワークは、実際の認知や記憶がなされるときの脳ネットワークととてもよく似ている。

想像による恐怖の克服

何か恐ろしいと感じるものに遭遇すると、神経的反応(記憶や感覚処理領域の活性化)と生理学的反応(発汗、心拍数の上昇など)の両方が生じる。

 先述したとおり、脅威について想像すると、実際に認知や記憶をするときとよく似たネットワークが活性化する。

 しかし、想像の場合は実際に差し迫った危険があるわけではないので、こうした想像を何度も繰り返すことで、嫌いな刺激とそこから予測される危険を切り離すことができる。

 すると刺激と予測された結果との連想を脳が行わなくなり、それに対する神経的・生理学的反応も治ってくる。

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pixabay

想像による誘導イメージ療法の実験結果

 想像を駆使した誘導イメージ療法の効果を確かめるために、この研究チームは、66人の被験者に低音あるいは高音が鳴るのと同時に軽い電気ショックを与え、比較的無害な脅威に対する恐怖心を植え付けた。

 それから被験者を3グループに分けて、同じ音を電気ショックなしで聴かせる(従来の疑似体験療法)、電気ショックなしで同じ音を想像させる(誘導イメージ療法)、電気ショックなしで鳥のさえずりと雨音を聴かせる(対照群)のいずれかをグループに応じて行なった。

 その後、先ほどと同じ脅威を連想させる音を再度鳴らし、そのときの被験者の脳をfMRIで観察した。

 その結果、想像で誘導イメージ療法を行なったグループの脅威恐怖反応が和らいでいることが確認された。脳内の神経的反応も生理学的反応のどちらも緩和されていたのだ。

 その効果は、従来の疑似体験療法を施したグループのものと同じだった。

 一方、鳥のさえずりと雨音を聞いたグループでは、脅威恐怖反応に変化がなかった。

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pixabay

想像力が心身に与えるパワー

 想像によって現実の出来事とまったく同じ影響が生じることを示した研究はこれだけではない。

 たとえば、想像によって幸福度を向上させたり、人とのつながりが強まって感じられるようにさせたり、赤の他人を信頼できるようさせた研究が報告されている。

 想像を利用した認知療法の可能性はかなり大きく思える。時間・資金・リスクのいずれの点でも費用対効果が高いためだ。

 こうした方法がさらに発展し、既存の認知療法に組み込まれると期待されるだろう。

ただし医師の指導のもと、正しい方法でやること

 ただし、自己流でやることは慎むべきだ。想像を駆使した認知療法を行う際は、必ず医師や専門家の指導に従ってやらねばならない。

 虐待されたというあやふやな記憶が歪められ、偽の記憶になることがあるという証拠もあるのである。

・誰もが犯罪者に。記憶の書き換えにより犯していない罪を自分がやったと信じ込ませることは簡単であることが判明(国際研究) : カラパイア

References:How imagination can help people overcome fear and anxiety/ written by hiroching / edited by parumo

追記:2019年1月の記事を再送してお届けします。

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この記事へのコメント 23件

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  1. その恐怖の行き着く先を想像してしまう勢

    • +11
  2. 昔から想像力が豊かな人は怖がりって言われてるからきっと想像力は盾にも矛にもなるんだろうな。

    • +16
  3. こういう想像系ってなんか疑ってしまう。
    引き寄せの法則(笑) とか特に。
    想像だけで夢が叶ったり思いどうりになったら苦労しない。まぁ、やってみるけど。

    • -11
  4. 想像力って現実的な予測をする力でも有る筈だけど、妄想と推測の境が曖昧になりがちな気がする
    現実世界の経験値積んで選り現実的な想像が出来る様になると解決する恐怖症って結構有りそうだね

    • +5
  5. 客観的な事実が目の前にあると想像でどうこうできなかったりする
    そしてそれも固定概念の影響なのかも

    • 評価
  6. この記事だと『想像』という言葉ちょっと独り歩きしてるような気がする。

    PTSDなどは、強烈な記憶とその時の身体的な反応が過剰に結びつくことから生じると言われている。
    たとえば戦争のPTSDの場合、「大きな音(刺激)」を聞いたとき、本来続くはずの「この音は何か?」という認知が、強い記憶のせいでスキップされて「敵集だッ!」という脅威恐怖反応に一気に押し流されてしまう。
    恐らくこの研究は、刺激と脅威恐怖反応の間に意図的に認知のフィルタを噛ませることによって、記憶の中にある刺激と脅威恐怖反応の異常な結びつきを断ち切るものだと思う。
    この研究でいう「想像」は、その認知のフィルタが、外部からの別の刺激でなくても、実体のないイメージでも同様の効果が得られる、というものじゃないかと。

    • +6
    1. ※6
      パブロフの犬のような条件付けを上書きするということだね

      ベル音に対して餌が貰えると条件付けされているところにベル音に餌とは別の例えば散歩を結びつけたい時に普通ならベルを鳴らしてから散歩に連れて行くということを繰り返すけど実際に散歩に連れて行かなくても散歩に行く想像をして貰うだけでも条件付けが上書きしえるというお話

      まあ犬だと想像しろといっても無理だけど

      行動学で想像だけでも実際に行動するのと同様の効果があるというのは色々と証拠が出ている

      • +1
    2. ※6
      いや、想像力は諸刃だって話だから良いんだよコレで
      過ぎた想像は恐怖心を無限に増やしてしまうが適切な想像は恐怖を落ち着かせる材料を齎す

      もっとも、適度な恐怖さえ失くしちゃ早死にするだけだとも思うけどね

      • 評価
  7. 読んだ感じ、花粉症でやってる減感作療法に似てるなーと思いました

    • +2
  8. 昔からある曝露療法だよね
    多分新しいのはそのときの脳活動を調べたっていう点

    • +2
  9. 過去のトラウマをイメージする・匂いだけでもいいって記事あったね。
    あれと同じ、身体は時間経過を意識しないので、イメージするだけで反応する。
    過去の強烈なイメージに飲み込まれるのがフラッシュ・バック、それを軽いものを想起することで恐怖体験(身体の反応)を克服することができるわけだ。
    ビルから落ちるのは誰でも耐えられないものがあるが、バンジーやジェットコースター系では楽しみことができる、これも反応をコントロールしていると言える。
    なら、これから起こりうるであろう、まだ体験してない恐怖(恐れ・不安)も同じ、イメージングでそれ(未来の反応)を軽減したり対処できるようになる。

    実はハワイアン・カフナで同じテクニックがある。
    いや、ある意味優れている部分さえある、実際の怪我に使えるのだ。
    やり方は簡単『足の小指をぶつけた』のなら今度はぶつけないように『軽く同じ動作を繰り返す」だけ。
    箪笥の角に足を近づけるのを20~30回と繰り返すうちに『この動作は危なくない』と身体が反応し内出血や腫れが軽くなる。
    『金槌で手を叩いた』り『包丁で手を切った』も同じ、手の上で金槌を振る、包丁をひらひらさせるとOK。
    もちらん致命的なやつなら別の方法をオススメするが、ある程度耐えられるなら試してみるといい。
    こういうのはやらないと身につかないテクニック、小さな意識の切り替えになるから。

    • +7
  10. 間違っている

    危険でない認識をさせるのは
    危険である認識をするのと同意である

    例。三振するなと言われると三振する

    • -12
  11. 一人でいるとき幽霊とか怖いって思ってたけど
    幽霊なんて出たら何人でいても怖いわって思ったらちょっとマシになった

    • +2
    1. ※12
      幽霊だって元は人間。
      自分と同じく、笑ったり泣いたり、苦労が報われて喜んだりしていた人生があったと思うと、あんまり怖くなくなるよ。

      • +1
      1. PTSDが知れ渡ったきっかけは雑誌の表紙を飾ったこともあるある帰還兵さんによる
        休みの日に散歩してて橋の上で口笛を吹きながら歩く男とすれ違った時に症状が出て気づいたら男の首を締めていたという
        野砲の砲弾は口笛のような風切音を立てて飛んできて地面に大穴を開ける大爆発を起こすから、男の口笛が戦場の記憶を呼び覚まし無意識の内に止めようとした結果らしい

        ※13
        とある神社で神様とその眷属に遭遇した時は神様の持つ強大なパワーに圧されて息も出来ないくらいに動けなかったから人ならざる者はそんな生易しいものじゃないよ

        • 評価
  12. 恐怖は 1、確実に自分に害があるとわかっている 2、正体がわからない この2つから発生すると聞いて少なくとも2、は克服できると思った。

    • 評価
  13. 克服したらいけない恐怖もあるからな。
    トラウマから解放されたら自殺してしまった人がいるというし。

    • +2
  14. 斬り結ぶ太刀の下こそ地獄なれ 一足ふみこめそこは極楽

    • 評価
  15. 自分の体験から言うと逆効果、恐怖の対象から離れた方がいい
    医師の指導が大事なんだろうね

    • 評価
  16. 前にあった現実の体験をゲームにして追体験するみたいな荒療治だろ

    • 評価
  17. 昔の記事だね、自分の書いたコメントが良くて惚れ惚れした(誤字、説明不足は歩けどw)。

    あのTUNAMIを見た子供がその絵を描いたり、車のおもちゃでそれから逃げる遊びを繰り返す話があるが、まさにこの記事の内容。
    デカ過ぎる恐怖を簡略化して追体験、少しずつ消化していく姿だ。
    人は強いよ、再生力もあるんだ、前を向いて少しずつでも進むといい。

    • +3

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