
日本では漫画で細胞が学べる「はたらく細胞」が人気だが、海外の科学者の話もなかなか面白い。
免疫学者が、免疫系や細胞の働きを日常生活や職場にたとえて興味深い話をしてくれるので見ていこう。免疫学に興味を持つきっかけになるかもしれない。
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1. 多様な人材が揃っていて協力的なチームワークで動いている
柔軟な免疫系はじつに独特なやり方で感染症やがん細胞を探し出し、その排除に乗り出す。その素晴らしい仕事ぶりを支えているのがチームワークだ。免疫チームの中で中心的な役割を果たしているのは樹状細胞である。いわばチームリーダーや社長、監督のようなものだと思えばいい。

樹状細胞
彼らはいろいろな場所を旅しており経験豊富だ――つまり人体内の病原菌にたくさん出会っている。肺の中でインフルエンザウイルスに遭遇したかもしれないし、蚊に食われたばかりの皮膚の中でデング熱ウイルスに遭遇したかもしれない。
そうした経験を積んだ樹状細胞はリンパ節に向かう。ここは免疫細胞の協力を円滑にするための器官だ。
彼らはこの場所で有能なリーダーとして、チームメンバーに自らの経験を伝え、ビジョンを示す。免疫細胞チームが一致団結し、病原菌の根絶という共通の目標に向かって動き出すためだ。
中でも樹状細胞にとって最も重要なことは、さまざまな専門能力を組み合わせた力について把握することだ。免疫チームの強さの秘訣は、メンバーの多様な背景だからである。
そのために樹状細胞はケモカインという小さな分子を分泌する。これは各種の免疫細胞同士のコミュニケーションを円滑にする機能があり、樹状細胞はチームメンバーとプランの話し合いがしやすくなる。
免疫学用語でこのことを「リクルートメント(求人の意)」という。
繰り返すが、現実の職場と同じく、多様性こそが鍵だ。多様な人材を集めることができなければミッションは失敗する。
だが樹状細胞がとりわけ多く採用するのはT細胞で、彼らにその知識と戦略を伝える。
T細胞はこの知識と戦略に従い、自ら病原菌との戦いに備えるか、B細胞のような防衛部隊との協働体制を敷く。このようにして免疫チームの感染症やがんとの戦闘体制が整えられるのである。
2. 賞賛も批判的も含め、フィードバックから学ぶ
免疫細胞たちは優秀な生徒でもある。T細胞は好意的な評価からも批判からも学んで成長する。

T細胞
これは胸の前にある胸腺という部分で行われる。このいわば学校のような場所でT細胞は試行錯誤を繰り返し、それに対する批判や助言を受けながら、自分が”見た”もの(自分の体の分子や外部からの病原菌など)に適切に反応するよう己を鍛え上げる。重要なのはこの過程では、賞賛と批判のバランスがきちんと取れていなければいけないということだ。どちらかばかりに偏ってしまってはダメなのだ。
多様な免疫系チームの中において、免疫細胞は生徒であり教師である。教育は樹状細胞とT細胞とB細胞とが交わす濃密な議論として行われる。
こうした支援体制が整った環境の中でB細胞はフィードバックを受けながら、感染症に対する理解を深め、各病原菌に特化した抗体を作り上げる。
3. 状況に応じて柔軟に対応
免疫チームは状況に応じて対応する大切さを理解している。それゆえに、あらゆる感染症に通用する最大公約数的なアプローチは採用しない。かわりにウイルス、かび、細菌、寄生虫といった各種病原菌に完璧に対応する柔軟性を備えており、免疫チームはそれぞれの状況に応じてさまざまなツールや戦略を用いる。
ここで重要なことは、危険を排除するための攻撃反応を細心の注意を払ってコントロールせねばならないということだ。

免疫学の大きな研究テーマの1つは、いかにしてそのバランスを取り、病気の治療に適切な免疫反応を作り出すかを探ることだ。
4. 最高のパフォーマンスを出すためライフバランスを取る
勤勉なのは結構だが、ずっと働き詰めでは最高のパフォーマンスは出せない。これは免疫細胞にも言えることだ。働きすぎの免疫細胞は慢性疲労状態にあり、そうなるとT細胞はガン細胞やウイルスに感染された細胞をうまく攻撃できなくなる。疲れ切った人間と同じように、活力に乏しく非効率だ。
T細胞にとって、こうしたオンとオフを切り替えるスイッチには、バランスのとれた免疫反応を行い、巻き添えを出してしまうことを避ける意味もある。
しかしウイルスやガン細胞はここに付け込んで、わざと免疫の疲労を起こさせるという戦略を取る。

それを可能にする免疫チェックポイント阻害因子は、T細胞にとっては日々の活力を取り戻す温泉のようなもの。発見者のジェームズ・P・アリソンと本庶佑はその業績を評価され2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。
5. 人生経験から学ぶ
順応性の高い免疫チームのキモは、過去に起きた感染を記憶しておく力だ。このおかげで、以前遭遇したことのある病原菌ならば、慌てることなく迅速かつ整然と対応することが可能になる。ワクチンとはつまりこの力を利用したもので、病原菌に感染する危険を冒さずに、免疫細胞にその記憶を覚えさせるやり方なのである。
だが迅速な免疫反応を支える細胞の記憶形成を最適化する方法は、まだまだ研究することがたくさんある。
マラリアやエイズといった手強い感染症ををターゲットとするために最も効率の良い記憶の種類やその作り方を発見しようと、研究者は日夜励んでいるのだ。
References:Five life lessons from your immune system/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
い〜かおめーら!インフルエンザが流行りだす季節だ。命令が下され次第2秒で仕留めろ。
取り逃がした腰抜けは秘蔵送りだ!!
2.
3. 匿名処理班
インフルエンザの抗体は長持ちしないっていうけど、それに関しては特定の時期にしか入ってこないせいで実際に忘れてしまっているのか、はたまたインフルエンザウィルスの変異が以前見たものとは余りに別物になってるのかどっちなんじゃろ
4. 匿名処理班
免疫細胞は生徒であり教師であるとか教育とか、あまりにも擬人化しすぎて何書いているのかわからん
この表現だと生まれたばかりの免疫細胞は赤子と同じく無能ということになる
5. 匿名処理班
免疫氏はさ…時にたてこもって銃乱射したり燃料撒いて火つけたりするからね…(不謹慎)
6. 匿名処理班
※4
アニメの「はたらく細胞」を見るといいと思うよ。13話+1話、すべてめちゃおもしろい。すごくすごーくよくわかるから!
7. 匿名処理班
樹状細胞さんの何でも知ってる陰の黒幕感
8. 匿名処理班
※1
秘蔵送りだ!
の意味が解らないのだが、脾臓と言う事?
※3
>変異が以前見たものとは余りに別物になってる
ワクチンも別物用になり新たな抗体が必要になるのでは?
本文
>かわりにウイルス、かび、細菌、寄生虫といった各種病原菌
寄生虫は菌とは違うと思うので「病原菌等」の方がよいのでは。
9. 匿名処理班
免疫くん、いつも体の為に本当にありがとう。
でもそれ花粉っていってね、無害なんだよ。
だから攻撃するのヤメテ…。
10.
11. 匿名処理班
某細胞とかホルモン系とか医学でも次々新説が出たりするから
はたらく細胞さんも数年したら性格変っていそう
12. 匿名処理班
時間の経過の概念が乏しい人には、免疫についていくら話してもムダ
13. 匿名処理班
自分の中でこんなに細胞達が頑張ってくれてると思うと、自分をちゃんと愛して労ってあげようって気持ちになる。
14. 匿名処理班
生物の身体って本当に上手いことできてるよね。
15. 匿名処理班
※9
肥満ちゃん「マニュアル通りにやってるだけですー」
16. 匿名処理班
>>4
擬人化がややこしい事の解説に向いてるだけじゃないかなぁ。それに免疫と言えば獲得免疫の説明が華みたいな所があるし。あと、レベルあげして役割が変わるタイプの「俺はまだ○回変身を残してる」なリンパ系の子は、伸び代から見て誕生したては子供みたいなものかと。
17. 匿名処理班
※7
多分それは8割くらい声優のせい
18. 匿名処理班
>>4
そう言っているのでは?
19. 匿名処理班
>>1
俺たちゃ無敵のT細胞ー!
20. 匿名処理班
>>3
変異しすぎて以前の抗体が効かないっていうから早さと変化具合の大きさじゃない?
ウィルスの変化(進化)速度は千倍とかなんとか
21. 匿名処理班
>>8
病原体でよくない?
22. 匿名処理班
説明読んでるとそもそも日本の職場と求められてることが違いすぎて悲しくなってくるわ
23. 匿名処理班
例えがよくわからなかった
はたらく細胞のほうがイメージしやすい