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「暗黒DNA」の存在が進化の定義を変える可能性が示唆される(英研究)

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(著) (編集)

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 DNAは生物の遺伝情報のほとんど全てを担う分子であり、基本的には塩基配列の形で符号化されている。

 DNAを構成するヌクレオチドの結合順序(塩基配列)を解明するDNAシーケンシング技術は、昔から人類が問い続けてきた動物に関する疑問の理解を進める手助けをしてくれた。

 この技術で動物のゲノムをマップ化し、キリンが長い首を持ち、蛇が細長く伸びた理由の解明を進めることができた。さまざまな動物のDNAを比較することで、それぞれがなぜそのようなやり方で進化したのか探れるようになったのだ。

 しかしかえって分からないことも出てきた。一部の動物のゲノムには生存に不可欠なはずの特定の遺伝子が欠けているようなのだ。

 だがそれは欠けているわけではなく、隠されていたのだ。

 そうした行方不明のDNAは”暗黒DNA(dark DNA)”と呼ばれている。そして、その存在は我々の進化に対する理解を変えてしまう可能性がある。

ネズミの実験で明らかとなった行方不明の遺伝子

 英オックスフォード大学のアダム・ハーグリーブス氏が、この現象に初めて遭遇したのはデブスナネズミPsammomys obesus)のゲノムを解析しているときであった。

 特定の動物が2型糖尿病になりやすい理由を知ることが狙いで、主にインシュリンの産生に関する遺伝子を調べていた。

 しかしインシュリンの分泌を制御するPdx1という遺伝子を調査していたとき、周辺の他の87個の遺伝子諸共それがないことに気がついた。

 Pdx1を含め、欠けている遺伝子は動物の生存に不可欠で、それがなければ生きられないはずのものだ。それなのになぜ?

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image credit:Psammomys obesus 01 – Psammomys – Wikipedia

 その答えの最初の手がかりは、スナネズミの体の組織にあった。そこで発見された化学物質は、消えた遺伝子からの指示によって作り出されるものだった。

 こうしたことが起きるのは、ゲノムのどこかに遺伝子が存在する場合のみである。したがって、それらは消えたのではなく、隠されているだけであることを示唆していた。

きわめて検出の難しい暗黒DNA

 これらの遺伝子のDNA配列にはATGCのうちG分子とC分子が非常に多い。

 GCが豊富な配列は特定のDNAシーケンシング技術に問題を起こすことが知られている。このため目当てだった遺伝子が欠けているというよりは、検出が難しかった可能性の方が高い。

 このことから隠された遺伝子を、宇宙の25パーセントを占めるが直接観測ができないダークマター(暗黒物質)にならい、”暗黒DNA”と呼ぶことにした。

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 また、スナネズミのゲノムの調査からは、その一部は他のげっ歯類に比べ突然変異が多いことも判明した。

 この突然変異スポットの遺伝子はいずれもGCが非常に多いDNAを持っており、標準的な手法では検出が難しいほどに突然変異が進んでいる。

 過剰な突然変異は遺伝子の働きを阻んでしまうことがしばしばだが、スナネズミのそれはどうにか役割を果たしている。これは遺伝子にとって相当に困難な作業だ。

 こうした暗黒DNAは鳥類でも発見されている。それはレプチンに関係する遺伝子などで、検出までに長年がかかった。やはりGCが豊富で、その生産物が鳥の体の組織から発見されている。

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暗黒DNAが進化に影響を与えていた可能性

 ほとんどの教科書では、進化の定義について、2段階で発生すると述べられている。突然変異とそれに続く自然選択だ。

 DNAの突然変異は一般的かつ継続的なプロセスで、完全にランダムに起きる。そして自然選択が、生殖の成功率に基づき、その突然変異を受け継がせるかどうか判定する。

 つまり突然変異が生物のDNAにバリエーションをもたらし、自然選択がその合否を判断し、進化の方向性にバイアスをかけるということだ。

 しかしゲノム内に突然変異のホットスポットがあるということは、特定の場所にある遺伝子は他よりも高い確率で変異するということだ。

 このことは、こうしたホットスポットが正しく評価されていないメカニズムで、やはり進化の方向性を変えているのかもしれないことを意味している。すなわち自然選択は唯一の駆動力ではないのかもしれない。

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 これまで2種のかなり異なる種に暗黒DNAが存在するらしいことが分かっている。しかしそれがどの程度一般的なことなのかどうかは不明だ。

 どの動物のゲノムにも暗黒DNAが含まれているのか、そうでないなら、なぜスナネズミと鳥には存在するのかも分からない。

 だが最も興味深いのは暗黒DNAが進化に与えた影響だろう。

 スナネズミの例では、突然変異スポットはネズミに砂漠への適応を可能にした可能性がある。一方、この突然変異は自然選択によって有害な変異が取り除かれる前に生じた可能性もある。

 仮にそうなら、有害な変異はスナネズミを現在の砂漠環境の外では生きられないようにしていることも考えられる。

 この奇妙な現象の発見は、遺伝子の変化の仕方や、これまでのDNAシーケンシングプロジェクトで見落とされた遺伝子がある可能性のではないかといった疑問を浮かび上がらせる。また前に戻り、より綿密に調査するしかないだろう。

via:genomebiology / sciencealert/ written by hiroching / edited by parumo

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この記事へのコメント 50件

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  1. どうしてこう「暗黒」と名付けると厨二病レベルが跳ね上がるのか。

    いろんな意味でワクワクしちゃったよ!

    • +14
    1. ※2
      適当に暗黒つけたもので暗黒上司、暗黒夫婦・暗黒大鍋・暗黒餃子・・・
      人はともかく食い物だとさらに恐怖度アップするな。
      ちゅーか食いたくない

      • +1
      1. ※3
        闇鍋はわりとポピュラーだが、闇鍋を食いたくない理由は闇鍋に罪があるのではなく暗黒な根性を持つ参加者のせいである

        • +15
        1. ※9
          しかし闇鍋に履き物は付き物なのであります。
          (いそいそと芋茎でわらじを編みながら)

          • 評価
    2. ※2
      ダークマター(暗黒物質)に倣って、という面からすれば
      確かに暗黒DNAの方がいいのかも知れないけど、
      単にダークDNAという単語だけ見れば、「陰DNA」とか
      意訳して「潜伏DNA」や「埋没DNA」程度のほうが
      無駄な誤解を招く語感でなくて良さそうな気もする。

      • 評価
  2. でも結局自然淘汰っぽいな。
    変異しやすいホットスポットが特定部位にしかないと言うよりは、遺伝子のいろんな部位にホットスポットが出るけど、結局、生存に有利になる部位にホットスポットが上手くはまった種が生き残っているって事になりそうだ。

    • +9
  3. 俺の暗黒DNAが疼くぜ・・・
    (抜け毛を数えながら)

    • +13
    1. ※5
      一部の動物の頭皮には生存に不可欠なはずの特定の頭髪が欠けているようなのだ。

      だがそれは欠けているわけではなく、隠されていたのだ。

      • +20
  4. 暗黒DNAは世界に6人しか居ない特殊な能力を俺に与えてくれた。
    byDFM

    • +1
  5. 遺伝子にない遺伝情報?
    ゼーレのシナリオか!

    • +1
  6. ってことはなにか?
    DNAは我々が考えてる以上に
    情報の圧縮ができると言う事か?
    結局のところ必要だけど無いDNAの機能を
    肩代わりしてるDNAがあるわけでしょ

    • 評価
    1. ※11
      圧縮というより断片化のようだね

      • 評価
  7. それって「二重螺旋の悪魔」の元になったネタ?

    • 評価
  8. darkってつけるのは暗闇とか暗黒ではなくて、「なんだか良くわからない」って言う意味でつけてるんだよ
    それを厨二っぽいと受け取ってしまうのは日本人の側の問題

    • -6
    1. ※14
      そんなの皆わかってるんだよなぁ・・・

      • +1
  9. 中二病全開と言われそうだが、どうも人間の肉体は、本来使えるべき能力が意図的に封印されているような気がしてならない

    ハリウッド映画の「マトリックス」が大ヒットしたのは、見たことがない映像に魅せられたからという他にも、「何か騙されて日常生活を送っているような気がする」と、漠然と感じている人が結構いたからでは?

    • +2
  10. 暗黒DNAとな・・・
    厨二っぽくてわろす

    • +2
  11. 今回のは要はDNA解析装置の欠点の話ではあるけど、それでも何だかんだ人類はDNAを把握しつつある雰囲気もある。でもDNAそのものも調べるほどに絶望的に奥が深くなる代物なんだよね。

    DNAって鎖状で主に二次元的に転写されてるけど、細胞内ではもつれた毛糸のようになっていて立体的に制御されてるから実際には三次元的だと言えるし、時には時系列をもって制御もされてるから四次元的だとも言える。その本当の姿を認識するのは大脳のネットワークと同程度の難易度があると思う。

    中二的に言えば紛れもない神の鎖なんだよね。

    • +4
    1. ※17
      別物じゃなくて隠されてんだろ?
      ※19
      そりゃ凄い発見だよ!自然選択の規則なんて、森羅万象を悟る、仏陀レベルでしょ!
      ※18
      うん幸せそう

      • -2
  12. 一通り読んで、遺伝子関連はまだよく分かってないってことが分かったわ。
    同じ機能を持ってても設計図だけ見ると別物に見えるってことかね。

    • +1
  13. 俺よく知らないけど、突然変異が完全なランダムではなく、何らかの規則に従って起こっているのだとしたら、ひょっとしてこれはすごい発見じゃない?
    それとも既に明らかになってる?

    • 評価
  14. わかんないけど、DNAが高次構造を取った時に読めるような配列があるのかなぁ

    • 評価
  15. ダークソウル?人間性ささげなきゃ…

    • 評価
  16. これ、遺伝子配列のある領域が、GやCが多くて、従来の方法では配列がうまく読めない。読めないから存在してないとしよう、暗黒だ、てのと、変異が多くて配列が判明した後も、これまで遺伝子として機能が分かっている配列と比べて機能を探ることができない、機能がわからないから暗黒だ、進化かもwって言う2つの不明要因を意図的にごっちゃにして理解しにくくしてるね。
    そしてどちらにしても変異と進化であって従来の進化の理論と同じだ

    • +7
  17. つまり生物進化46億年の進化の果てに確立した生命の設計図以外にも
    アイデア倒れに終わったキメラ達のカオスな遺伝データはまだ放棄されてないと?マジか

    • 評価
  18. 単純に技術が追い付いてないせいだ検出できてないだけで、あとは他と変わらないんじゃねーかなとも思うが。

    • +4
  19. 結局シーケンスの技術の問題でしょ。長い断片を読めるシーケンサーが出来れば解決。

    • +3
  20. 染色体のクロマチン構造が関係しているのではなかろうか。

    塩基配列は一次元的に表記できるけど、実際にはDNAは核内で(真核生物の場合)タンパク質と結合して立体的に折りたたまれている。その立体的な構造が、外部からの何らかの変異原物質に対しての耐性の度合いや、複製されるときのコピーミスの頻度に関わっている可能性もある。

    つまり、突然変異は基本的にはランダムに起こるけど、DNAや周囲の分子の状況によって、実際に変異するかどうかは左右されるってわけだ。

    クロマチン構造など、DNAの塩基配列とは別の何らかの変化が遺伝子の発現にどう関わってくるのか、ってのは、近年はやりのエピジェネティクスという分野で研究が進んでいるから、新発見がもっと出てくるかもしれぬ。ワクワクだね。

    • +4
  21. 技術的にうまく読み取れないからよくわからない=くらやみ遺伝子ぐらいの意味でしょ。大したこと言ってない。

    • +1
  22. タンパク質の研究やってた人間からすればゲノム、ゲノムと言ってて何でプロテオームの事は気にしないんだろうと思うね。

    • 評価
  23. GCリッチが読みにくいのは昔からな話。
    どの生物にもある。
    ゲノムの構造から変異が起きやすい場所があるのも知られてた気がする。
    変異が起きやすい生物種の話も有名

    論文のディスカションのところは、可能性がある程度の話で本気に受け取るところではない。
    高い可能性があるならデータで示せるだろう、といつも思う。
    書く以上は、既に次の論文を用意している以外はアイデアの公開にしかならないからなぁ。

    • +3
  24. 難しくてよくわかんなかったけど
    X-MEN的な人が出てくるのか?

    • +1
  25. *19
    それが素数に関連してたらたまらないね

    • +1
  26. 今のシーケンス技術は短く断片化して、その断片の重なりを元に配列を組み立てていくから繰り返し配列が長いとそこは組み立てれないんだよなぁ。パズルでいうと同じ色で同じ形のピースが沢山あるとどこに置いたら良いのか分からないよね

    • +2
  27. どこの教科書に淘汰と自然選択だけが進化の要因だなんて書いてあるんですかね。

    ボトルネック効果とか遺伝的浮動とか、淘汰と選択に関係なく遺伝子頻度が変化することがあるってのは前世紀からある理論ですよ。

    • 評価
  28. 機能する遺伝子がいわゆるジャンクDNA領域に紛れ込んでいたということなのかな。パソコンで何度消してもまた出てくるデータが別の場所の隠しファイル内にあったのを思い出した。

    • +1
  29. 時々、無性に餡子食いたくなるのは、暗黒DNAのせいなのだ。

    • 評価
  30. デブスナネズミっていう名前がインパクトあり過ぎて、
    難しい話がまったく頭に入ってこないよ

    • +3
  31. 分割したZIPファイルのバイナリを読んでる様なものなのかね。結合して解凍しないと意味のあるデータにならない的な。

    • 評価
    1. ※44
      その解釈で合ってると思う
      これは圧縮してあるのだろうと思う
      一行跳び配列とか大胆なやりかたで混ぜて縮めたりするんだと思うな

      • 評価
  32. ゴクウのラストが現実になるのか…

    • 評価
  33. ジグソーパズルのピースが8個あったとして、円を描くようにつなげたら真ん中があくわけだけどそこになにもないのにそのピースの形はわかる…のでそういうのを応用すれば全部揃ってる必要はないのかもしれない

    • 評価
  34. 暗黒DNAと言う言葉の厨二感がはんぱないwwww

    • 評価
  35. 無理やり厨二記事になってるが、GCリッチな領域はイルミナ苦手なんだよね。かなりバイアスかかる。あとエラーも入るから、翻訳してもハウスキーピングほどホモロジーでないから結局ミッシング遺伝子になってしまう。真核の遺伝子をab initioで探すのは難しいよ。発現情報ないとね

    • 評価
  36. 現在の技術では、小説に例えると一行単位でしか読めていない。
    段落、ページ単位、小説単位で読むとその一行の意味が変わったりする可能性がある。
    隠されているのではなく、人間が意味を読み取れていない、という方が正しいはず。

    • 評価
  37. デブスナネズミってすごい名前だな…
    画面表示でスナとネズミの間に改行が入ったせいで三度見した。

    • 評価

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