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10. 水を集める素材――ナミブデザートビートル

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アフリカのナミブ砂漠は雨に恵まれなかった。そこは灼熱の地であるが、朝になれば砂丘を恵の霧が覆う場所だ。またナミブデザートビートルの住処でもある。ビートルの殻には親水性の小さなコブが並んでいる。そこに霧の湿気が徐々に溜まり水滴になると、今度は撥水性の溝を伝って口まで流れ、渇きを癒すことができる。
MITのエンジニアはこの仕組みを拝借し、空気中から水を集める素材を作り出した。ガラスとプラスチックで構成され、同じような突起が並んでいる。スポンジ状の素材で、疎水性のシートに親水性のドットを印刷するだけで安くかつ簡単に作成可能だ。
テントに使えば、毎朝1日分の水を確保することができるだろう。さらにナミブデザートビートルは熱に耐性があり、殻には赤外線を反射する機能があることも推測されている。こちらはロケットなど、耐熱性が必要な機器に応用されるかもしれない。
9. 生体マイクロロボット――ヤツメウナギ

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医者が体内に潜り込むことができれば、色々なことがずっと楽になる。撮像技術はしばしば非常に不鮮明であり、MRIなどの機器は高価で非常にかさばる。しかし近い将来、血管の中に入り込めるほど小さいマシンが発明されるだろう。サイバープラズム(Cyberplasm)はある意味生きているロボットだ。
そこに搭載されたセンサーは実際に哺乳類の細胞から得たもので、生物とまったく同じように化学物質や光に反応する。目や鼻となるセンサーを備え、グルコースを動力とする人工神経システムが刺激を記録。すると実際の脳と同じように電気信号に変換する。
サイバープラズムのモデルになったのはヤツメウナギだ。ヤツメウナギの神経系は非常に単純で、簡単に模倣して、ロボットの体内に組み込むことができる。そのうちヤツメウナギに似たロボットが、癌や血栓を探して患者の体内で泳ぐ日が来ることだろう。
8. ロボットアーム――ゾウ

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4万以上の筋肉で構成されるゾウの鼻は、人間の手に匹敵するほど器用で、枝からリンゴをもぎ取ったり、木自体を倒したりすることができる。その多目的なデザインがロボットアームのヒントになった。ドイツのフエスト社が開発したバイオニック・ハンドリング・アシスタント(Bionic Handling Assistant)はハンドリング技術をまったく変えてしまうかもしれない。先端に4本の金属製の爪が備わるそれは、人間の赤ちゃんのように試行錯誤を繰り返しながら学習する。手を伸ばしたり、物をつかんだりしつつ、人工筋肉を動かすチューブ内の圧力調整を計測し、その変化を記憶するのである。
ポリアミド製の素材は重量ある物体に耐えるだけの強度がある一方、卵をつかんだりといった繊細な動きを行う器用さも備える。工場、研究所、病院など、様々な場所で威力を発揮することだろう。
7. 新幹線――カワセミとフクロウ

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日本の新幹線がトンネルから脱出する際、俗に「トンネルドン」と呼ばれるトンネル微気圧波が発生する。高速で空気を押しやるために風の壁が作られ、砲音のような騒音が発生するうえ、車体が減速するのでエネルギーも無駄になる。その解決方法は鳥から得た。
カワセミの流線型のくちばしは魚を獲るうえで非常に実用的だ。先端が尖っているために水しぶきを上げずとも川の中にダイブできるのだ。水がくちばしに沿って後ろへ流れ、衝撃が減少するからだ。
エンジニアであり、日本野鳥の会会員でもある中津英治は、新幹線の丸みを帯びた先端をカワセミのくちばしに似せてみた。こうして現在の新幹線はエネルギーをロスすることなく時速300キロで疾走できるようになった。
稲妻のような騒音対策には、フクロウからもヒントをもらっている。警戒心の強いネズミでさえ気がつかないほど静かに飛行できる、フクロウの羽の形状が取り入れられているのだ。
6. 軟体ロボット――タコ

image credit:nature.com
ロボットがゴツゴツと硬いだなんて誰が言った? イタリアのチームは、タコの体を参考にしてぐにゃぐにゃとした軟体ロボットを作り上げた。これは泳いだり、つかんだり、這い回ったりすることが可能だが、それぞれの演算を大幅に抑えることに成功している。硬いボディを持つロボットのように数学的に予測された動作をする代わりに、タコ型ロボットは縮んだり、うねったり、巻いたりする。そこにガッチリとした手足や固定された関節は存在しない。
硬い骨格を使ったロボットは、細心の注意を払ってプログラムを組み上げ、衝突を避けねばならない。また人間や見知らぬ地形がある状況では、不安定になり、危険ですらある。
軟体ロボットならばずっと安全で、体をよじって形を変えて周囲の環境に適応できる。これを活かして、事前のプログラムがなくても、身動きを取れなくなった人間を救助したり、人と交流できるようになる可能性もある。
5. サイボーグフラワー――バラ

image credit:seeker.com
バラに導電性があることをご存知だろうか?スウェーデンの研究チームは、植物の内部に極細のワイヤーを通すことで、これを実現した。有機ポリマー溶液にバラを浸けてからその皮をむき、幹の中に張り巡らされた極細のポリマー”ワイヤー”を露出させる。ここには導電性があることが証明されている。
これによって、霜が降りる前に花を咲かせるなど、バラの生理を制御することが可能になる。こうした改変技術は果実やタネにまでは使用できない。
恒久的な改変は生態系に悪影響が出るおそれもあるが、この技術があればそのスイッチを簡単に切り替えることができる。
4. 抗菌カテーテル――ヘビ

image credit:medicaldesign.com
滑らかで耐久性が高いヘビ皮は、水着から靴まで様々な利用価値がある。だがカテーテルは予想外だろう。病院には無数の人間が出入りするため、細菌で汚染されやすいことは周知の事実だ。ここが感染源になるリスクは否定できない。
エンジニアのトニー・ブレナンはヘビ皮が非常に清潔であることを発見した。その表面は歯のような鱗で覆われており、ヘドロ、藻類、フジツボの類が体に付着することを防いでいる。ついでに大腸菌をはじめとする病原菌まで防ぐのだからありがたい。
これを応用しようと考えたのがシャークレット社だ。現在、感染症を防止してくれるヘビ皮でできたカテーテルを開発中である。
3. ワクチン、DNA、幹細胞の保存――テマリカタヒバ、クマムシなど

image credit:wikipedia
復活草と呼ばれるテマリカタヒバは、過酷な気候のために乾燥して”死ぬ”。そのまま数年、ときには数十年と待ち、雨が降ると復活して、緑を芽生えさせる。クマムシは地球上で最もタフな動物の1種である。宇宙、絶対零度という超低温、150度という高温、放射線、水がない環境――こうした環境に晒されるとしなびてしまう。そして周囲が安全になると何事もなかったかのように再び目を覚ます。ほかにもアルテミア、線虫、酵母菌も似たような仮死技術を身につけている。
こうした生き物は、体内の全水分を糖に変える。糖が硬化してガラスになると、仮死状態のまま長期間生き続けることができる。むろん人間が同じことをすれば命を落とす。だがワクチン、DNA、幹細胞なら長期間の保存が可能になる。
毎年、200万人の子供が簡単に予防できるはずの病で亡くなっている。暑い環境ではワクチンがすぐにダメになってしまう。しかし糖保存料は固まってミクロレベルのビーズとなり、利用可能な期間を数年にも引き伸ばしてくれる。
2. 水の上を跳ねるロボット――アメンボ

image credit: vocativ.com
アメンボが水面を滑るように移動できるのは、液体の”膜”のおかげだ。それは凝集性という力によって分子がくっつこうとする現象で、表面張力と呼ばれる。あるロボットは、水面を歩くと言うよりは跳ねることができる。柔らかいボディはわずか68ミリグラム。水面を歩くロボットは以前に開発されているが、ジャンプ能力は非常に独創的である。
開発に当たって参考にされたのはアメンボだ。アメンボは足を徐々に加速させ、ジャンプの瞬間まで水を離さない。巧みに力を調節することで、水面の張力を壊さないようにするのだ。
アメンボロボットもこれを真似して、水の”膜”の限界を超えないよう徐々に力を加える。この動作はノミの足の動きを真似たもので、なんと14センチも跳ねることができる。監視活動や救助活動で活躍してくれるだろう。
1. X線画像――ロブスター

image credit:en.richardvanhooijdonk.com
X線の扱いは難しい。空港のX線検査装置がやたらと大きいのはそのためだ。しかしロブスターの目を真似することで、それがぐっと改善された。ロブスターはレンズで光を屈折させるのではなく、反射によって物を見る。その目は平らな鏡のような四角いもので覆われており、これが正確な角度で光を反射するためにあらゆる方向から像を結ぶことができる。
こうした仕組みは宇宙を観測する望遠鏡にも有効である。通常の鏡ではX線が通過してしまうために、ロブスターの目の形状を応用しつつ、鉛ガラス製の四角い中空管の配列が開発された。X線を反射するその素材は目のような球形に曲げられて望遠鏡に組み込まれている。
ロブスターの目は他にも、マイクロチップやLEXID(Lobster Eye X-ray Imaging Device)という懐中電灯のようなX線撮像機器のヒントにもなった。後者は8センチの厚さの壁を透視できるものだ。
LEXIDが力を弱めたX線を壁に向かって照射すると、一部が壁の向こうにある物体から反射される。この信号を中空管に通過させ、まさにロブスターの目のように映像を作り出すのだ。
via:10 Incredible Inventions Inspired By Plants And Animals/ translated hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
ベロクロもぜひ
2. 匿名処理班
最近の高層建築ビルの外壁材の表面は、カタツムリの殻を参考に作られてるのがあるそうな
泥まみれの殻を持ったカタツムリが居ないって事に気づいた人が、清掃困難な高層建築の外壁に応用できないか?と考えて実現したらしい
疑問を持ち、原理を解明し、応用する…言葉にすると3ステップしかないけれど、一つのステップが高すぎて自分じゃムリと思ってしまいがちやねぇ…
3. 匿名処理班
生物や植物から学ぶことは良いね!!
4. 匿名処理班
人類のおおおおおおお科学力はああああああああ宇宙一いいいいいい!
5.
6. 匿名処理班
痛くない注射針
7. 匿名処理班
ヨーグルトの蓋の裏側(内側)も
8. 匿名処理班
特許や知的財産の話がてんこ盛りな記事だね
9. 匿名処理班
科学技術への応用という面では全ての進化とそれを受け継ぐそれぞれの生物に意味があるよね、人間としては害虫、危険な微生物、ウィルスであろうとも、その仕組みや働きなどを解明することはとてつもない知識の源。
10. 匿名処理班
確か人工衛星の太陽電池パネルの展開機構はバッタの羽根の折りたたみ方が元になってるってきいたことがあるな
コンパクトかつ瞬時に展開できる理想的なたたみ方だとか
11. 匿名処理班
今の生物の姿って、数十億年かけて途方も無い数のトライ&エラーを繰り返してきた結果だしね。合理性を追求すればするほど自然界のものに似ていくんだろうな。
12.
13. 匿名処理班
空を飛ぼうとして鳥の羽ばたきを真似しようとした人は 失敗してるみたいだけどね。
14. 匿名処理班
バイオミミクリーってやつか
15. 匿名処理班
超音波エコー
16. 匿名処理班
※13
鳥の飛翔メカニズムを再現するだけの技術が無かったからじゃない?
17. 匿名処理班
モルフォ蝶の鱗粉の構造から得た知識が
塗料とかディスプレイの光学分野に応用されたりもしてるね
18. 匿名処理班
くっつき虫→マジックテープは有名だね。
19. 匿名処理班
※13
材料などがそろった現代ならできるらしい。以下で検索するとみられるよ。
鳥のように飛行するロボット | TED Talk | TED.com
20. 匿名処理班
親水性のテント、一晩で一日分の水って凄いな
災害時対策に一戸に一張配ってもいいくらい
結露対策にもなりそう
21. 匿名処理班
ここまでフナクイムシ(貝の仲間)とトンネルのシールド工法の話なし
22. 匿名処理班
タコ型ロボットがあまり軟体してないように見える
全パーツが柔軟になる日は来るのかな
23.
24. 匿名処理班
人工知能の知能には負けるけど
やっぱり生体には敵わないと感じた
ターミネーターの世界は妄想かもしくは、ずーーっと先の話だね
25. 匿名処理班
ヨーグルトの蓋のアルミはくには 蓮の葉の表面にある撥水効果を応用してる 傘にも使われてる
26. 匿名処理班
アメンボの表面張力を利用した水上移動については、軍事利用できるので既に実用実験段階になってなかったかな
音もなく、低燃費で、素早く水上移動できるから隠密行動にはもってこい
27. 匿名処理班
クマムシはなんて機械的なんだ
28. 匿名処理班
※6
蚊の針がヒントだったらしいよね
29. 匿名処理班
タコロボット・・・閃いた
30. 匿名処理班
バラの花の話は、タイトルとは主旨が違わない?