
10. 「記憶喪失には1種類しかない」は過ち
今のことは普通に憶えていられても、過去のことは何もかも忘れてしまっている。そのような記憶喪失はポップカルチャーでもお馴染みだ。これは逆行性健忘と呼ばれる、現実に存在する症状だ。だが、前向性健忘という症状もある。これは逆行性健忘よりもはるかに質が悪いとされるもので、過去のことは憶えているが、新しい長期記憶を形成できないという症状だ。
9. 心理カウンセリングでは夢が重要? 実はそうでもない
夢の分析は人を理解する上で確立された手法であり、臨床の現場でも頻繁に利用されていると思われがちだ。だが、これは映画やテレビドラマなどによって広まった誤解だ。フロイトの理論によれば、夢は無意識と強く関連しており、その多くが小さな子供の夢を取り扱っている。しかし、最近の研究は、小さな子供の夢には細部もその背後に潜む意味もほとんどないことを明らかにしている。心理学の発展に大きく貢献したフロイトだが、性や夢に関する彼の理論は間違っていると現在では概ね考えられている。
8. 泣いている赤ちゃんをあやし過ぎてはいけない?
これには諸説ある。泣いている赤ちゃんは泣かせたままにしておくべきという説もある。だが、赤ちゃんをあやしたからといって害になると考える研究者はあまりいない。むしろ、泣く赤ちゃんを無視する方が有害であるとする研究もある。大切なことは、少なくとも生まれて最初の数ヶ月は泣き出した赤ちゃんをあやした方がいいという研究結果が得られていることだ。
7. マルチタスクは可能である?
一度に複数のことをこなせる能力に自信を持っている人もいるだろう。だが、こうしたマルチタスクは現実には存在しない。ある程度の集中力を必要とする作業を同時に2つ以上こなすことはできないのだ。確かに、複数の作業を目の前に脳を素早く切り替えることはできる。だが、脳が一度にこなせる認知作業は1つだけだ。唯一の例外は、左右の脳をつなぐ脳梁が損傷している両断脳症候群の人物である。
6. 心理学者は心を読める?そんなことはない。
心の専門家なのだから、他人の心を読めるか、あるいはちょっとした仕草から心理を詳細に分析することができると思われても仕方がない。この都市伝説に取り組んだある心理学者は、人間の心は非常に複雑で、専門家であっても自分の心の理解すらままならないことを指摘している。彼らは、人間の言動を理解する技術を備えているが、だからと言って心まで読めているわけではない。
5. 心理学者なら誰もが異常者を研究対象とする?
世間には、心理学者の研究対象のほとんどが異常者であるという印象があるようだ。だが、心理学には異常者について触れもしない様々な分野がある。そして、ほとんどの心理学者が勤しんでいるのはそうした分野だ。また、心理学の学位を取った者なら誰でもカウンセリングができるという誤解もある。実際には大学を卒業した程度では不十分で、大抵は大学院での学習が求められる。
4. 統合失調症の患者は多重人格?
これもまた映画の影響だろう。統合失調症と聞けば、その患者はありもしない声を聞いたり、光景を見たり、さらには人格まで複数あると想像しがちだ。だが、統合失調症にかかったからといって必ずしもありもしない声を聞いたりするわけではない。幻覚に至ってはかなり珍しい。
そして、より重要なことに多重人格などではない。解離性同一性障害という多重人格症は確かにある。だが、これに関しても賛否両論であり、実はかなりの心理学者が複数の人格が存在することすら認めていない(コメントによると解離性同一性障害は精神科医の間では病気認定されてるという)。
3. 男の子も女の子も出生時に特有の性同一性はない?
男の子や女の子の性同一性は、社会的環境によってのみ育まれるという説がある。その対極として、性差は完全に遺伝子に基づいているという説もある。ご想像の通り、どちらの説も間違いだ。男性と女性は性向と言動に影響する異なる身体的特徴と異なるホルモンバランスを有しており、違いが存在することは明らかだ。もちろん、環境もまた重要であり、社会的な期待が男性的あるいは女性的な振る舞いの形成に大きな役割を果たしている。
2. 赤ちゃんに刺激を与えるほど賢くなる?
幼い頃から大量の刺激を与えれば、賢く育つ…こうした見解に基づく製品はたくさんある。だが、残念なことに、過剰に刺激を与えても賢く育つどころか、その逆の結果になることが判明している。ある英才教育ビデオ教材の効果を調査した研究では、これを観て育った赤ちゃんは、そうでない赤ちゃんよりも語彙が少なかった。一部の小児心理学者によれば、赤ちゃんの知性を育む最も良い方法は、両親との一対一のコミュニケーションなのだそうだ。
1. カウンセラー、心理学者、精神科医は良く混同される
カウンセラー、心理学者、精神科医、それぞれの仕事についてもよく誤解される。具体的に説明するのはあまりにも話が長くなりすぎるのだが、掻い摘んで言うとこうだ。まず、カウンセラーは必ずしも心理学者ではない。多くの場合、ソーシャルワークに関連した修士号があればカウンセラーになれる。心理学者は心理学に関する博士号を持つ人たちだ。カウンセリングを行うことはできるが、大抵の場合は全く行っていない。精神科医は基本的に医学博士であり、心の健康問題を治療する薬の処方の専門家である。
via:listverse・translated hiroching
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コメント
1. 匿名処理班
今、心療内科にかかってるので、気になる内容です
精神疾患が治るのか治らないのかもわからない闇の中です、今
2. 匿名処理班
>>心理学の発展に大きく貢献したフロイトだが、
>>性や夢に関する彼の理論は間違っていると
涼宮ハルヒの憂鬱の「フロイト先生も爆笑だぜ」って台詞の元ネタですな
3. 匿名処理班
1.について
.ウンセラーに必要な資格はない。カウンセリングを行っている人間のことをカウンセラーと呼ぶ。民間資格である臨床心理士の資格取得には、指定大学院の修士号が必要となる。
学者という意味であれば博士号を持っている人間がほとんど。サイコロジスト・クリニカルサイコロジストの訳語であれば、必ずしも博士号を持っている人間を指さない。
精神科医は精神科医療を実施している医師であり、博士号は必須条件でない。
4. 匿名処理班
補足:△砲弔い董大学に勤務する心理学者であっても、臨床活動(カウンセリング)をお行っているケースは多い。
5. 匿名処理班
ちなみに「超心理学」も、心理学とは関係ない。
これ豆な。
6. 匿名処理班
心理学・精神医学・精神分析学が混同されてる、ってのは日本でもある話だよね。
7. 匿名処理班
カウンセリングなのに、ずっと分析を待ってたことがある。
俺「これで私の話は全部です(さあ分析してください)」
カウンセラー「まだでしょう(逃げようとしてるな?)」
そのまま物別れ。で、この齟齬に気づいたのが10年後w
お互い誤解したまま時間と金だけが無駄になった
8. 匿名処理班
>4. 統合失調症の患者は多重人格?
これは映画の影響というより分裂病という旧病名のせいでは?
それと昔は今と病気の分類法が全く違っていて、解離性障害も分裂病と診断されていたから、分裂病の古い文献読んで統合失調症の症例だと誤解してる人もいる。
それで解離の治療法を「統失が治る」と言い張って患者や家族に広めようとする患者もいてすごくややこしい。
9. 匿名処理班
植木先生は、カワイイ。
10. 匿名処理班
筒井康隆のエッセイでトイレに入りたくても用を足せない、よくある夢の話を出して
『フロイトはトイレの夢を性的な意味に結びつけていたがそれは違う、
トイレがあるからトイレの夢を見るんだ』という意味の事を書いていて
まったく筒井さんが正しいな、と思った事がある。純粋にトイレ&にょーいの見せる夢だ!
11. 匿名処理班
臨床心理士(文系)
心療内科医,精神科医(医系)
お互いに仲悪そう。
12. 匿名処理班
子供の頃の夢に意味が無いってのは嘘だと思う。自分の子供の頃の夢体験からそう思う。どの夢も全てに意味があるんだが、理解できないだけだと思う。
13. 匿名処理班
※2
治る
本当だ信じろ
14. 匿名処理班
マルチタスクは絶対にできない。
もし人類がそれをできてたなら、ながら運転やスマホ見ながら歩きによる事故は今よりずっと少ない。
15. 匿名処理班
泣いてる赤ちゃんが放置されたらどうなるか
どんだけ騒いでも誰にも相手にされなかったら泣くことすらしなくなったりしないのかな
想像でしかないけど、人を余り信じない諦めやすい人間になる気がする
16. 匿名処理班
※2
知り合いでケロっと治った人がいるぞ。
人生長いんだから、のんびり過ごす時間も重要よ。
17. 匿名処理班
>解離性同一性障害という多重人格症は確かにある。だが、これに関しても賛否両論であり、実はかなりの心理学者が複数の人格が存在することすら認めていない。
心理学者は精神科医じゃないだろ!!
医者でもないのに、勝手に医学的な診断を下すことはあってはならないことだ。
これは実際にあると認められている疾患で、現実に悩んだり治療に取り組んでいる患者が多くいる。ただでさえ精神病は偏見や誤解が多く非常にデリケートな問題なのに、素人の憶測で軽々しく患者を疑わしい目で見るような記述はすべきではない。
18. 匿名処理班
人の行動は、性格じゃなく価値観に影響を受ける
19. 匿名処理班
※2
骨折が治ると言うのは自力で歩けるようになることで元の筋力が戻ることではないと思うが、
心が治ると言うのはどうなることなのだろうね。
病気になった以降に新たな体験をしていることもあって、決して同じ状態に戻ることはないと思うのですよ。
20. 匿名処理班
知育に関しては、論理的思考が備わり始める6歳ぐらいより早くから勉強をさせ過ぎると、かえって大きくなってからの学力、応用力が低くなる傾向が多く報告されていたりと、論理の基礎になるデータを上手く収集する為の感覚部分が、どう構築されるかが重要なんだろうね。
21. 匿名処理班
心っていうとどうも曖昧なものに感じるけど、要は脳っていう生体部品製CPUが電気信号で形成したものなわけだし
心理学もそのうちオカルトっぽさが消えて分かりやすいものになる日が来るかもね
22. 匿名処理班
記事TOPの画像でなんだかAC部を思い出した。
23. 匿名処理班
>5. 心理学者なら誰もが異常者を研究対象とする?
社会心理学では逆だな。ミルグラムの服従実験やに代表されるような、どこにでもいるようなまったくスタンダードな人間が、置かれた状況によってトンデモナイ行動をやらかすことを解き明かすのがひとつの面白さだな。
24. 匿名処理班
研究所の中で研究対象としてしかクライアントと接しない臨床心理士は意味がない。
25. 匿名処理班
テレビとかで取り上げられる「なんちゃって多重人格」とかは確かに嘘も多いけど、解離性同一性障害はちゃんと精神科医の間では病気認定されてるよ。
もしかして心理学で言われてるのは「交わる事のないまるっきり別の人格が一個体に宿る事はないんじゃね?」って事じゃない?
記憶の共有、人格の統合は治療次第で出来る訳だし。
26. 匿名処理班
赤ちゃんを放置しすぎると高確率でサイコパスになるよ。
ブルース・D・ペリー著の「犬として育てられた少年」にそこらへん詳しく書いてあるよ
27. 匿名処理班
そもそもフロイトは「心理学の発展を50年は遅らせた」と評され、英米などではすでにほぼ駆逐されている。日本を含む一部だけが頑なにだまされ続けている。
乖離性同一障害を「心理学者は認めていないが、精神科医は認めている」も間違い。実際には、認める・認めないはその学者個人の立場によるもので、認める心理学者も多数いれば、認めない精神科医も多数いる。世の中にはDSMを無視する医者もいるからね。
28. 匿名処理班
※15
ものおよそ厳格ならぬちょっと昔は、飄々とその中間に自分の立ち位置を定めていた人もいるみたいです。
今は亡きドクトルまんぼうの北杜夫さんは、専業作家になる前、K大病院の精神科医をしてましたが、精神医療は人文科学であると堂々と標榜して歩き、医学部の変人扱いされたというようなことを書いてました。
29. 匿名処理班
こんな誤解してるかな感
30. 匿名処理班
※15
「サイレント・ベビー」ってやつね。
31. 匿名処理班
4に関しては、日本語での翻訳説明には
「精神分裂病」の旧称も註記しないと、そろそろ
「多重人格と混同している一般人が多い」の意味が
よく分からなくなってる若い人も多いんじゃないだろうか?