
何をもって芸術とするのか、その価値や評価は人それぞれであって良いわけなのだが、相も変わらず巨匠の有名作品ばかりが高値で取引されているという現状がある。だが、だからといってアーティストの創造性が失われたわけではない。ここでは2014年に生み出された優秀な10作品をご紹介しよう。どれも野心的で、革新的で、おかしくて、社会的な傑作ばかりだ。
ジャン=リュック・ゴダール―『さらば、愛の言葉よ』

Goodbye to Language 3D Official Trailer 1 (2014) - Jean-Luc Godard Drama HD
2. マシュー・バーニー―『リバー・オブ・ファンダメント』

リバー・オブ・ファンダメントでは、”偉大な作家”であることに憑かれたアメリカの作家ノーマン・メイラーの翻案が試みられた。ここでは『エンシェント・イブニングズ』が取り上げられ、メイラーの経歴をオペラ風に仕立てつつ、古代エジプト支配階級のSM的な堕落とデトロイトの凋落に見る大衆主義者の劣化を描いた。
River of Fundament trailer
3. クリックホール

その“別の何か”がマルチメディア・アートのプロジェクトで、”リンカーン記念館が思わず「Orz」と言ってしまう画像10選 ” や” 90年代の少年たちが大喜び! ビーニー・ベビーに詰め込んだクモの卵がついに孵化 ” などシュルレアリズム的ダダイズムに特化している。
何より素晴らしいのは、こうした皮肉に明確な対象がないことである。ただ単にふざけたアイデアをごちゃ混ぜにしただけのクリックホールの作品だが、理屈を無視すればすれるほど、”いいね!”の回数が増えて行くのだ。
4. ヒト・スタヤル ― 『見られない方法:どうでもいい説教じみた教育的展示(How not to be seen: A fucking didactic educational installation)』(アンドリュー・クレップス・ギャラリー)

Hito Teyerl Extracto de "How Not to Be Seen: A Fucking Didactic Educational .MOV File"
. クリストフ・シュリンゲンズィーフ(MoMa PS1)

鑑賞者はプロジェクションとモニターに備え付けられたヘッドホンによって、総統地下壕を模した回転する台座が設えられた部屋に身を置くことになる。台座の上には双眼鏡が置かれている。これを使って部屋の壁のスクリーンに映される、ナチスがテーマの映像を垣間見ることができる。中でもヒトラー風の人物がナチスの1人に平手打ちを喰らわせる映像は印象的で、”不気味なびっくりハウス指人形”効果とでも呼びたくなる。
Christoph Schlingensief Retrospective at MoMA PS
6. GCC―『アチーブメンツ・イン・レトロスペクティブ』(MoMa PS1)

彼らが制作した写真やオブジェクトは、本物のGCCメンバーが会合した際に見せびらかしあった高価だが見かけ倒しの装飾品をモチーフとしている。金の浪費、無駄な対話、劇場政治に焦点を当てたコンセプトシリーズであり、現状打破など頭にない指導者たちの姿を効果的かつ辛辣に表現した。
7. エドワード・マーシャル・シェンク&ブラッド・トロエメル―『キーズ1&2』

8. ハリド・ジャラール―『ノー・エグジット』

まず目に入るのは映像が映し出される小さなモニターだ。そして、大きな暗い部屋の中へ足を踏み入れると、巨大なプロジェクション画面にパレスチナ人犠牲者の名前が映し出される。スピーカーからはその名前を読み上げる機械的な音声が流れてくる。この作品によって、ジャラールは自身が最も精力的な活動家アーティストの1人であることを認めたのだ。
Khaled Jarrar's "No Exist" (2014)
9. ジェン&ポール―『ワンストップ・ショッピング・スーベニア・シティ&チェルシー・バス・ツアー』


アメリカの小売店スペンサーズ・ギフト的なショップには、精巧なコピー商品やリチャード・プリンスやダミアン・ハーストのような大物アーティストたちのフェイクが溢れている。これらのオリジナルのアート作品は、わずか1000円程度という超破格の値段で持ち帰ることができてしまう。またバスツアーに申し込めば、ジェンとポール自らがバスガイドを務めるギャラリー地区ツアーにも参加できる。なお、2人はまた実施することを約束しているので、見逃した方その動向を常にチェックしておこう。
Inside Jen And Paul's Crazy DIY Double-Decker Chelsea Art Tour Bus And Unauthorized Souvenir Shop
10. 『バーニング・フレッシュティバル』(レッドライト地区)

今年のニューヨークの音楽シーンは、アートの全ジャンルの中でも最も目立たなかったと言えるだろう。手作り感は薄れ、同じような音楽ばかりが流行している。このイベントに参加したアーティストたちには、この状況を立て直そうという思いがあるのだ。

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コメント
1. 匿名処理班
結局のところ、芸術を芸術たらしめるのは権威とコネだよ
どんな作品だろうが、名が知られていない人間が町内会の展覧会に出したって歴史には残らないし
ネット隆盛の現代ですら、作品をアップしたところで美術館に収蔵されることはない
せいぜいスマホゲーの挿絵で糊口をつなぐのが関の山
一方、バンクシーがおっさん使って作者名を伏せて、安値で路上販売したらほとんど誰も買おうとしなかったし、
ニューヨークフィルの首席ヴァイオリン奏者が路上演奏しても誰も足を止めなかった
2. 匿名処理班
わけわかんね
3. 匿名処理班
相互作用するには感受性と
その作品、作者が求める知識が時に必要だよね。
商業的に優れている芸術は多くの人に理解されるための努力がいる。
誰に伝えたいかが重要。
普通に娯楽の延長で鑑賞するならば
有名な作者の作品をまず求めるのは必然でしょ。
4. 匿名処理班
素晴らしい作品だから権威ある人も認めるし世に見てもらおうと紹介もしてくれるのに
そこに至る過程を無視して極論ぶつのはどうかね
5. 匿名処理班
アートは哲学でしょ
わかる人にはわかる
6. 匿名処理班
ゴッホやゴーギャンの作品は、彼らが生きている間にはまったく評価されなかった。
それが今では高い評価を得て、高額で取引される。
上の記事の作品が、どうなるのかと考えると面白い。
7. 匿名処理班
賛否はともかく、一つだけはっきりしたことがある。
芸術は他人有りきで一人だけでは何もできないということ。
優秀なアーティストだけじゃなく、原石を見つけて
支えて来た人たちも素晴らしいと思うよ。
8. 匿名処理班
美術業界だけで通じる言葉で何かを語ってるつもりになっているからだめなんだな。
9. 匿名処理班
8
それはゴッホやゴーギャンに金運が無かったからだよ
だから今でも巷の金運の無い芸術家の作品が埋もれて
いるんだろうな
10. 匿名処理班
沢山の人にリーチするためには「有名である」というのは一番重要な要素だと思う
では、どうやって有名になったのか
コネとか、確かに大事だが、じゃあどうやってそのコネを作ったのか
まあ、最終的には「運」なんだと思うけど、その運を掴むために、積み重ねたものはあると思う
自分の作品を多くの人に見てもらいとか、言いたいことがあるとか、いろんなモチベーションでいろいろやってきたからここまで来たわけで
ただし、見た人が理解できるかはまた別問題
11. 匿名処理班8888
権力者なんかあ,オカルトが好きだから
自分でこういう企画をして、芸術家に裏で
自分に都合のいいアンカーを(サインやシンボル)を入れ込んでもらって
そのとうりに時代が遂行するように,無意識や潜在意識から
人を支配しようと試みる
12. 匿名処理班
ピンとくる物が無かったな
残念
13. 炎蹄
芸術とは自然や生理現象をどこまで模倣できるか、だ。
14. 匿名処理班
※7
「分かる人には分かる」のか、「分かろうとする人には分かる」のかどっちなんだろうか。
15. 匿名処理班
んだ、 あんたなんかお金の話ばっかりさ!せっかくだから金とコネにまみれた作品を縁だと思って立ち止まって観て考え議論したらいい!
16. 匿名処理班
つくる人がいて、それに心を動かされる人がいる。
この繋がりが尊いものだと思うんだ。
17. 匿名処理班
好きなら好き、それで良いんじゃないですか別に。
価値を感じるなら好きなだけお金も出せば良いし。
語るだけ馬鹿よ。
18. 匿名処理班
個人的には、アートを芸術と訳すことに違和感を覚える。
アートは思想の発露であって、芸術とは別物の気がする。
19. 匿名処理班
美大生の時に、有名なアーティストに作品代行してもらって講評会に出してみたかったけど実現しなかったな。先生達の先入観や芸術の価値はなんだろうと、先生の裏をかいてやろうとした作品を作った友達もいたけど、先生達はその意図を理解できなかったみたいだしものすごくもやもやした。
20. 匿名処理班
アートは自分の言いたいことを言う場、みたいな認識で大半の作者は作ってるのかなぁ、と美大を目指してる身として思ってる
ただ好きなものを作っても名前が売れないんじゃ、政治的にでも社会的にでもメッセージを発信しないと注目されないのがアート今のなのかね
21. 匿名処理班
芸術は「何を作ったか」も大切だが、「誰が作ったか」かも重要。
でもそれは別に悪いことじゃない。
子供が描いた絵は誰がどう見ても落書きだが、親にとっては宝物じゃん?
22. 匿名処理班
現代アートは批判されがちだけど俺は全然詳しくないけど好きだよ なんか不思議な気分になってきて面白い
23. 匿名処理班
映像作品に偏ってるせいとゴダール、マシュー・バーニーで始まってるせいか選者のセンスが古臭く感じるな。90年後半から00年代前半の美術手帖を見てるみたい。ビル・ヴィオラとか好きそうだし。
24. 匿名処理班
ガラパゴスすなぁ
買ってまでして欲しいかというと微妙
とことんまで自己表現のみに没頭してる。エンタメしてない
25. 匿名処理班
>ニューヨークフィルの首席ヴァイオリン奏者が路上演奏しても誰も足を止めなかった
これは違うと思うよ。その人の実力がどうだかわからないけど、本物が演奏すると、チューニングの音色だけでもホレボレする。
26. 匿名処理班
現代アートの根幹に「既存の価値を捨てて目新しさを追求すること」がある気がしてならない
写真や映画が登場して以降、写実に価値が薄れていってコンセプトが偏重されているんだろうけど
たぶん、その感覚が既存の価値としてのアートを求める人々とズレを生んでいるのではないかな
27. 匿名処理班
現代アートと言われるもののほとんどに食指がピクリとも動かない。
古い人間で結構。川瀬巴水の版画集と共に一生生きていくよ。