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ホモ・サピエンスが生き延びた理由は日焼け止めにあるかもしれない

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(著) (編集)

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 かつて私たちホモ・サピエンスの祖先とネアンデルタール人は地上で共存していた。だが最終的に私たちは生き残り、ネアンデルタール人は絶滅した。いったい何が両者の明暗を分けたのだろうか?

 新たな研究によると、運命の分かれ道は「日焼け止め」だったという。

 ネアンデルタール人が絶滅した当時、地球の地磁気は弱くなっており、地上には大量の紫外線が降り注いでいた。

 日焼け止めの手段を知らなかったネアンデルタール人は、それによる皮膚がんや免疫の低下を防ぐ手立てがなく、そのせいで姿を消すことになったというのだ。

この研究は『Science Advances』(2025年4月16日付)に掲載されたものだ。

地球磁場の変動と強まる太陽放射

 今私たちが地上で健康的に暮らせるのは、地球を包む地磁気やオゾン層のおかげだ。これらはまるでバリアのように作用し、宇宙から降り注ぐ放射線や紫外線を防いでくれる。

 だが、このバリアは常に一定しているわけではない。地球の歴史の中で、地磁気の逆転が繰り返し起きていたことはすでに明らかになっている。

 逆転まで行かずとも、地磁気の極が地球の自転軸の極から大きくズレることもある。これを「地磁気エクスカーション」という。

 こうした大きな変化が起きたとき、地磁気は非常に弱くなり、大気中のオゾンも減少することが知られている。

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Photo by:iStock

地磁気エクスカーションとネアンデルタール人の絶滅の時期

 直近で起きた地磁気エクスカーションは、4万1000年前の「ラシャンプ地磁気エクスカーション」だ。

 偶然か、それとも必然か、じつはこの時期はちょうどネアンデルタール人が絶滅した時期でもある。

 この地磁気エクスカーションは300年ほどで終わったが、その間地磁気のバリアはほとんど失われていたようだ。

 ミシガン大学をはじめとする研究チームがモデルで検証したところ、この時期の地磁気は90%も弱まっていたことが判明している。

 その結果、紫外線を防いでいるオゾン層には強烈な宇宙線が降り注ぐことになった。それによるオゾン層の破壊は、20世紀後半に問題となったフロンガスを強化したようなもので、地上に降り注ぐ紫外線は大幅に増えたと考えられる。

 こうした紫外線は皮膚がんを引き起こすのみならず、免疫を低下させ、葉酸不足による先天性欠損のリスクをも高める。

 研究チームの仮説によるなら、この紫外線への対応の仕方の違いが、ホモ・サピエンスとネアンデルタール人の明暗を分けた可能性があるという。

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Photo by:iStock

ホモ・サピエンスの生存を支えた日焼け止めの技術

 注目すべきは、ネアンデルタール人が絶滅した頃、ホモ・サピエンスでは衣服に変化があったことだ。

 体にぴたりとフィットする仕立てられた服が広まり、彼らの遺跡からは、毛皮の加工に使われたスクレーパーだけでなく、針や千枚通しが見つかっている。

 また同時期ホモ・サピエンスたちの間では、洞窟の壁画を描くためのオーカー(黄土)も広まった。これは身体を装飾するためにも使われたかもしれない。

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オーカーで描かれた洞窟壁画は、紫外線が増大した時期に登場している。Photo by:iStock

 これらには紫外線から身を守る効果がある。衣服を着た部分が日焼けしにくいのはご存知の通りだし、一部の地域では今もオーカーが日焼け止めとして使用されている。

 一方のネアンデルタール人も衣服を着ていたことが知られている。

 だが彼らの遺跡で、きちんと仕立てられた衣服が作られた形跡は見つかっていない。北の寒い地域に適応していたために、ホモ・サピエンスほどには衣服を着る必要性がなかったのかもしれない。

 その結果として、ネアンデルタール人はホモ・サピエンスよりも大量の紫外線を浴びることになったはずだ。そしてその悪影響に脅かされることになった。

ネアンデルタール人は紫外線に負けた説

 なぜネアンデルタール人だけが滅び、ホモ・サピエンスが生き残ったのか? これは長年議論される人類学の大きなテーマだ。

 その理由については、これまでホモ・サピエンスがやってきた地域でさまざまな動植物が絶滅しているように、ネアンデルタール人もまた初期ホモ・サピエンスとの紛争や食料獲得競争に負けて駆逐されたのだとされることが多い。

 だがこれまでの研究で、ホモ・サピエンスがヨーロッパに到達したのは5万6000年前で、そこからネアンデルタール人の絶滅までにはさらに100世代相当の時間があったことがわかっている。

 ならば、絶滅原因は単純に生存競争に負けたからというわけではないのかもしれない。

 今回の研究チームは、これまで説明した理由から、ネアンデルタール人は紫外線から身を守れなかったために絶滅したとの仮説を提唱している。

 実際、地磁気ラインがつながっておらず宇宙線や高エネルギー粒子が地表にまで達していたと思われる地域を調べたところ、4万1000年前の初期ホモ・サピエンスの活動範囲とよく一致していたという。

 とりわけ洞窟利用が増え、大昔の日焼け止めが使われていた地域では、このことが当てはまっていたそうだ。

 この仮説は点と点を結びつけて導かれたもので、それを裏付ける直接的な証拠はない。ゆえに日焼け止めの有無が私たちを生き残らせたのか、確かなことは不明だ。

 さしあたって私たち現代人は、たかが日焼けと油断することなく、まもなく到来する夏に向けて紫外線対策を万全にしておこう。 

References: Wandering of the auroral oval 41,000 years ago / Our Ancestors Knew To Wear Sunscreen – It May Be How They Survived / Ancient Sunscreen: How Early Humans Survived a Solar Storm Apocalypse 41,000 Years Ago

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この記事へのコメント 13件

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  1. 論拠が弱いよな
    紫外線が増えたのが絶滅の原因なら、ネアンデルタール人だけではなくネアンデルタール人の居住地域にいたそれ以外の生物も紫外線の影響を受けて当然である。それらの生物も絶滅かそれに近い状態になったという事を示さないと、なぜネアンデルタール人だけが紫外線で絶滅したのか?というまた別の疑問が出るだけである。

    • -4
    1. 原猿類より高等なサルは抗酸化物質であるビタミンCを体内で作れない。ゆえに紫外線を浴びることで生成される過酸化水素などの酸化物質を処理する能力が低いので、森の外で暮らす人類は紫外線の影響を強く受ける。高緯度に適応していたネアンデルタール人は皮膚の色素が薄く、アフリカを出て間もなかった現生人類より抵抗力が低かった可能性がある。

      • +9
    2. 人間は皮膚と体毛が極薄だから
      他の動物でも毛の薄い所に腫瘍が出来たりするが
      人間ほど紫外線に脆弱なまま地上を歩き回る動物はそういない

      • +4
  2. 「ネアンデルタールが滅んだのは紫外線による影響」ならまだわかる

    • +5
  3. 紫外線放射の増大が生態環境にエゲツナイ影響を与えたのは想像に難くないし、体毛の少ない人類や現人類が毛皮動物より大きなダメージを被るのもわかる。
    でも体を覆う毛皮と体にフィットさせた毛皮で遮蔽効果がそこまで変わるかと言われると疑問なんだよな
    寒冷地帯に適応したネアンデルタール人は紫外線除けの衣服のせいで熱中症で死にまくったと言われた方がいっそ腑に落ちる
    ……ネアンデルタール人は気温の高い日中の行動に最適化されてて、紫外線量の少ない薄明時間に上手に活動できなかった、夜目がまるで効かなかったとかじゃねえのか

    • -3
  4. 他の動物だとマンモスがいなくなったのは紫外線だったことに

    • -3
    1. マンモスの絶滅は気候変動による生息地の減少と、人間の狩猟対象になったからが有力説ですね

      • +4
  5. 5月の太陽とかでも12時間くらい外で太陽光浴びると肌真っ赤になって数日後火傷で爛れるもんねぇ。日焼け止めとか衣類で完全に覆うとか大事だよホント。

    去年うっかりグローブとハンドカバーの間、手首のところ隙間できてるのほっといて160キロほどサイクリングしちゃった結果えらい目にあった。

    • +6
    1. 私は以前、5月に堤防沿いの草刈りのバイトでえらい目に遭いました
      全身真っ赤に日焼けして、風呂にも入れませんでした
      後で調べたら、夏はもちろんですが、5月も相当に紫外線が強いそうです

      • +3
  6. 日焼け止めとかではなくて、単純に肌の色が違っただけという可能性は?
    ネアンデルタール人は金髪や赤毛で色白だったと言われてるじゃん
    サピエンスはヨーロッパ等に移り住んでもかなり最近まで色黒だったという研究もあったし、単に色黒だから紫外線に強かっただけではないのかな

    • +4
  7. 集団で生きるホモサピエンスの方が繁殖しやすい事や情報交換が生存力に繋がったっていうのが一番の理由だと思うけど、、

    • +4
  8. 太陽光を過度に浴び続けるとまずい、なんて経験則で簡単に認知されて対応策が取られると思うんだけど、この仮説はネアンデルタール人がそれができない程度の知能しか持ってなかったと言っている

    元来、ネアンデルタール人は現生人類に知能の面でそこまで劣っていないとされていて、だからこそなぜ現生人類が勝ち残ったのかが問題にされているわけだけど、この仮説を唱える学者はそこから大きく後退してネアンデルタール人を単なる野生動物と見なしているわけで、とうてい賛同できないね

    • +4

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