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魚も道具を使える!岩を使って獲物の殻を割ることができるベラ科の魚

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(著) (編集)

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ベラ科のイエローヘッドベラ public domain/wikimedia
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 道具を使うことができるのは知能の証とされてきた。そして最近、南米ブラジル沖の海で、貝をくわえ、岩に打ち付けて中身を取り出していた魚の姿がダイバーによって撮影された。

 この行動は、「魚が道具を使用する」ことが科学的に初めて確認されたもので、魚の認知能力に関する常識をくつがえす可能性もある。

 だがもしかしたら、道具を使うことに、高度な知能など必要ないのかもしれない。人間中心に考えられてきた知能の定義が、今まさに揺らいでいる。

岩に貝を叩きつけて割るベラ科の魚

 道具を使うことが報告された魚は、インド・太平洋や大西洋西部などに生息するスズキ目ベラ科のホンベラ属だ。鮮やかな色彩を持つものが多く、観賞用の魚として人気がある種もいる。

 2025年、オーストラリアのマッコーリー大学のジュリエット・タリエル=アダム氏が率いる研究チームが、市民科学プロジェクト「Fish Tool Use」によって集められた映像を解析した。

 そこには、ベラが貝をくわえ、岩に何度も叩きつけて殻を割る様子が映っていた。この行動は、動物が自然の物体を目的に応じて使う「道具使用」の一例だ。

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Fish tool use

 この研究では、カリブ海や西大西洋に生息する5種のベラ属の魚が道具を使っている様子が映像で確認された。

 これらの魚たちはサンゴの破片や岩、捨てられた貝殻などを「金床」として利用し、ウニや貝、ヒトデやヤドカリなどの硬い殻を割って中身を食べていた。

 ブラジルやカリブ海など各地で撮影された映像では、ベラが周囲にある金床として使った事例が計16件確認されている。

 また力任せにただ叩きつけているだけではないようだ。

 その様子を撮影した映像の分析からは、叩きつける角度やポイントを調整していることがわかっており、ホンベラの空間認識能力の高さがうかがわれる。

先祖代々受け継がれた道具を使うという本能

 ベラが道具を使ったという報告は以前にもあり、2024年の研究ではインド洋に生息するホンベラ(Halichoeres hortulanus)やニシキベラ(Thalassoma jansenii)で同様の行動が報告されている。

 だが今回道具の使用が確認されたのは、いずれもホンベラ属の5種(H. brasiliensis、H. poeyi、H. radiatus、H. garnoti、H. bivittatus)である。

 600種以上が存在するベラの仲間だが、実はこれまでに金床を使うことが確認されたのは26種のみだという。

 今回新たに確認された5種は、おそよ2000万年前に分岐したと考えられる「新世界ホンベラ(New World Halichoeres)」という系統の仲間だ。

 マッコーリー大学をはじめとする研究チームは、これらの種が占める進化の系統樹の位置付けを分析し、道具を使う習性は最近になって芽生えたのではなく、祖先から脈々と受け継がれてきたと予測する。

 だとするならば、なぜほかの魚は道具を使わないのだろうか?

 1つ大きな要因として考えられるのは環境だ。

 チンパンジーがナッツを割るために石を使うように、陸上で道具の利用が進化するのは、道具がなければ食物が得られない環境であることが多い。

 そして今ことは水中にも当てはまるのかもしれない。実際、今回観察されたベラの多くは、簡単に食べられる獲物が少ない地域に生息していたという。

道具はもはや高度な知能を持つ動物だけの特徴ではない

 かつて人間だけが使うとされてきた道具だが、そうした古くからの固定観念は長年打ち崩されてきた。

 野生のチンパンジーが道具を使う姿がはじめて記録されたのは、1960年のこと。動物行動学者ジェーン・グドール博士は、タンザニアで暮らすチンパンジーが小枝でアリを釣り上げる姿を目撃。その報告は学会に衝撃を与えた。

 この発見は、動物の知性についての常識をくつがえす出来事となった。

 以来、カラス・ゾウ・ゾウ・イルカ・タコなど、さまざまな生き物たちが巧みに道具を使うことが明らかにされてきた。

 タコは落ちていた貝殻を防具にし、オウムはワイヤーを曲げてフックに加工してエサをとり、カラスにいたってはただ使うのではなく、道具を楽しむことが知られている。

 そして今回、ベラが道具を使う動物に仲間入りをした。

 その意味は、熱帯の海だけにとどまらない。かつて道具の利用は、高度な知能の証明であり、人間をほかの動物と区別する特徴とされていた。

 だがベラのような脳が小さく、手も足もない生物が道具を使えるという事実は、この行動が系統や脳の大きさに関係なく、しかるべき環境ならば進化する可能性をほのめかしている。

 もしも偏見をなくして自然を観察すれば、同じような驚きの発見はいたるところにあるのかもしれない。

 この研究は『Coral Reefs』(2025年4月5日付)に掲載された。

References: Springer.com / Underwater Tool Use: These Rainbow-Colored Fish Smash Shells With Rocks

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この記事へのコメント 7件

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  1. 捉えた獲物の抵抗を弱らせるため、咥えたまま頭を振ったり叩きつけるのは肉食生物あるあるだから、その延長線上にある気がするね。この場所でやると効果的、みたいな。

    • +5
  2. 食事に使わないと認定されないのかな?
    巣をかけるのは道具で、いいと思う
    魚も石を並べるじゃん

    • +5
    1. 餌を岩に叩きつけるのが道具扱いで良いとすると、
      体が痒い時に岩で掻いたりするのも道具でOKな気がする

      • +1
    2. マグロはサメの鱗を寄生虫取りに利用しているらしい。この行動も道具使用といえるのかもしれん
      ただ今回の魚の石たたきつけ行動はどういう原理でそうなったのか
      本能的に組み込まれた行動なのか、学習で習得した行動なのかで意味合いも大きく変わるだろう
      アリには農業している種もいるがヒトとは違って知能ではなく本能で行動しているわけだしな

      • +3
  3. 道具くらい使うよ。ティラピアは石並べて巣作るし、イトヨは水草をまきまきして巣作るよ
    記者も書いてる通り、「人間だけ道具を使う」という最初の話が単に思い込みだっだというだけだと思いました。
    まぁサイエンスの歩みとは、だいたいがそうなんだけど。(過去のナントカ仮説を覆して成長していく)

    • +4
  4. ベラ科といえばホンソメワケベラの鏡像実験…
    想像より魚には感情(色が変わるルリスズメダイなど分かりやすい)があるし知能もあってビックリします。

    • +2
  5. カワセミも魚咥えたら石とか木の枝に叩きつけて締めてから食べるし、
    モズなんか木の枝に早贄刺す訳だし、カラスなんか車に轢かせるしね。
    意外とこういう動物多いねぇ。

    • +2

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