この画像を大きなサイズで見る海の奥深くに潜む魚たちは、過酷な環境を生き抜くために、別々の進化を遂げながらも、それぞれが独自にまったく同じ答えに辿り着いたようだ。
中国の研究チームによる「超深海帯」を含む深海の調査によると、3000m以下に暮らす魚のほとんどは同じ遺伝子の突然変異を遂げていたという。
これは生身の人間には到達できない地球の異世界で起きた「収斂進化(しゅうれんしんか)」の驚くべき事例である。
闇と超水圧に閉ざされた深海で生きる魚たち
中国科学院深海科学工程研究所をはじめとする研究チームが調べたのは、太平洋とインド洋の海底の最深部である。
水深6000~11000mの「超深海帯」と呼ばれるこの領域は、人間ではひとたまりもない超水圧にさらされた地球上の異世界だ。
そこは太陽の光がまったく届かない完全な暗闇で、水温も氷点下に近い、あまりにも過酷な環境だ。それゆえに英語圏では、ギリシャ神話の冥界の神ハデスにちなみ、「ヘイダルゾーン」と呼ばれている。
だがそんな領域にも生物は存在する。たとえば、有人潜水艇やロボット探査機などが利用された今回の調査では、最大深度7700mの深海から11種(クサウオ、ソコボウズなど)が採取されている。
そしてそのDNAからは驚くべき事実が明らかになったのだ。
ほとんどの魚に共通した遺伝子の突然変異
驚くべき事実とは、3000m以下に生息する深海魚のほとんどに、「Rtf1」と呼ばれる遺伝子における共通の突然変異が生じていたことだ。
こうした生物たちが深海に進出した時期はバラバラである。彼らは白亜紀(1億4550万年~6600万年前)から比較的最近の数百万年前にかけて、それぞれ違う時期に海の底へと潜っていた。
にもかかわらず、まったく同じ突然変異を獲得していたのだ。
各々独自の進化を遂げた生物たちであっても、似たようなニーズに対応するために、同じ進化を遂げることがある。これを「収斂進化(しゅうれんしんか)」という。
水深3000mに以下に生息する魚たちでは、同じ突然変異が独立して9回も起きていたというのだから、収斂進化の飛び抜けた事例といえよう。
なお「Rtf1」は、DNAの読み取りや発現の調節に関係しており、そこに起きた突然変異は、深海という過酷な環境において転写(DNAの情報をRNAに写しとるプロセス)の効率をアップさせる効果があるだろうことがわかっている。
深海底で明らかになった秘密
ちなみに今回の調査では、深度3000m以下に生息する硬骨魚は8系統が確認されている。
だがその内訳は非常に偏っており、じつに7系統までが「新真骨類(Neoteleostei)」という系統群で、このグループには驚くべき深海適応能力があることが示された(残り1系統は「ウナギ目」)。
それとは対照的に「オトモルファ(Otomorpha)」という系統群は、全体としては1万種以上の種を含む大きなグループであるというのに、超深海帯ではまったく確認されていない。
このことは、このグループには進化上の制約があるか、異なる適応戦略を採用している可能性を告げているという。
深海ですら人間の影響が
もう1つ重要な、だが懸念すべき発見は、深海という異世界ですら人間の影響から逃れられないということだ。
世界でもっとも深いマリアナ海溝に生息する深海生物の体内から、20年前に使用が規制されたはずの「ポリ塩化ビフェニル(PCB)」が検出されたのだ。
これは電気機器の絶縁油・熱媒体・塗料など広く使用されていた化学物質で、生体に有毒で、かつ蓄積しやすいことから、現在では国際条約によって世界的に製造・使用が禁止されている。
この研究は、深海の闇の中で生物たちがたどった驚くべき進化の事例を示すとともに、そうした生命の驚異とて我々人間が壊してしまいかねないことを伝えている。
この研究は『Cell』(2025年3月6日付)に掲載された。
編集長パルモのコメント

深海はまだまだ未開拓ゾーンが多いから、技術が進み、調査できる範囲が広がると続々と新たな発見が見つかりそうだ。生命誕生の起源にまで迫れそうだし、過酷な環境を生き延びる深海魚たちが、地球外生命体の秘密を握ってそう。
References: CELL / Evolution just keeps creating the same deep-ocean mutation
















自然と一体だって再確認させられました
生物の進化に感じても興味深いのだが、記事を読んで思ったのが『最近の電化製品がなぜ壊れやすいのか』についての一種の答えだった。
昔の電化製品は人体に有害だが電子機器を作る上では高性能な素材や薬品を使えたから長持ちしていたのかと思うと皮肉よなぁ。
愛知県の知多半島で最近
深海生物の化石が沢山見つかって
ます。発光器の残る物もありました。
PCBは世界中で使われてたからね、南極海のペンギンやアザラシの脂肪からも見つかってる
可塑剤(プラッチックなどを柔らかくする)としては最高だとか
アメリカでは唯一ペンタゴンのコンピューターの冷却に今も使われてるとか
あの飛行機墜落で漏れないか心配してた私
電気の変圧器の絶縁油にPCBが使われていたが、使用禁止後はPCBの処理方法がかなり厄介かつ面倒で、処理出来ない場合の保管方法もかなりコストのかかる方法だった記憶がある。 この処理方法の面倒さとコスト面から、川や海にこっそり流す悪徳業者もいたんじゃないかと邪推。 今はアスベストや蛍光灯の水銀なんかも規制がかかってるけど、これまた処理にコストがかかる。処理にコストがかかるとその分工事費がかさむ。官公庁や大企業なら惜しみなく払うだろうけど、零細企業には馬鹿にならない金額。 蛍光灯なんかは割れてしまったらただの不燃ゴミになるから、故意に割る業者も100%いる。
本当に環境に配慮するなら国が主体で無償の回収場所を全国に多数設置しないと無理だと思う。 近い将来は水銀も今以上に海から検出されるだろうね。
遠回りしても近道しても、遺伝子の変異が共通するって本当に本当に不思議だね。
彼らは何で深海のような過酷な環境で生きることになったのだろうと不思議に思う
過酷でも現代まで種として存続してるんだから勝ち組である、というのはその通りだけども