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太陽系外惑星の姿を直接撮影することに成功:ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡

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(著) (編集)

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Photo by:iStock
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 ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が、複数の太陽系外惑星の姿を直接撮影することに成功したそうだ。

 それら4つの巨大惑星は、地球からペガスス座の方角へ129光年離れた「HR 8799」と呼ばれる若い恒星を巡っている。

 その大気には二酸化炭素のほか、炭素・酸素・鉄が含まれており、これまでに判明していることも踏まえて考えれば、太陽系の土星や木星と同じプロセスで形成された可能性が高いという。

太陽系外惑星を初観測、木星や土星と同じプロセスで誕生

 4つの太陽系外惑星を宿す「HR 8799」は、とても若い恒星だ。私たちが暮らしている太陽系は誕生から46億年が経過しているが、HR 8799はまだ3000万年しかなっていない。

 この惑星系はまだ形成過程にあり、激しい熱を帯びているために大量の赤外線を放射している。それゆえに、私たちの太陽や惑星がどのように形成されたのかを知るヒントになる。

 今回ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、光の特徴から太陽系外惑星の大気成分を推測するだけでなく、その姿を直接捉えることに成功している。

 そこから明らかになったのは、HR 8799の巨大惑星にははっきりとした二酸化炭素の特徴があるということだ。

 このことから、その大気には炭素・酸素・鉄などの重元素もかなりの割合で含まれていると言うことができる。

 また、これまでの知見とあわせて考えるのなら、その巨大惑星は太陽系の木星や土星と同じようにして形成された可能性が高いという。

 巨大惑星が形成されるプロセスは主に二つある。

 一つは、ゆっくりと固体のコアが成長することで、周囲のガスを取り込んでいくというもの。もう一つは、若い恒星の降温円盤が急速に崩壊することで誕生するというもの。

 木星や土星は前者のプロセスで誕生したが、それは今回の巨大惑星も同様である。

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赤外線で観測されたHR 8799の巨大惑星の姿。色は光の波長に応じて割り当てられたもので、青は4.1ミクロン、緑は4.3ミクロン、赤は4.6ミクロンの光を表す。恒星は星マークの位置にあるが、その光はコロナグラフによって遮られている/ASA, ESA, CSA, STScI, W. Balmer (JHU), L. Pueyo (STScI), M. Perrin (STScI)

51 Eridaniの観測も実施

 研究チームは、HR 8799だけでなく、地球から約96光年離れた「51 Eridani」も観測対象とした。

 この惑星系には「51 Eridani b」と呼ばれる巨大ガス惑星が存在し、今回の観測では、この惑星の大気中にも二酸化炭素が含まれていることが明らかになった。

 これは、ジェイムズ・ウェッブ望遠鏡が複数の惑星で詳細な大気分析を行えることを示す重要な成果だ。

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ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、若い太陽系外惑星「51 Eridani b 」の画像も撮影した。この画像には、4.1 ミクロンの光を赤で表すフィルターが含まれている。NASA、ESA、CSA、STScI、W. Balmer (JHU)、L. Pueyo (STScI)、M. Perrin (STScI)

私たちの太陽系はこの宇宙でどのような存在なのか?

 こうした研究は私たち自身を知ることにもつながる。太陽系は生命を宿す惑星系としてきわめてユニークだが、宇宙全体から見た場合、その成り立ちはどれほど特殊、あるいはありふれたものなのだろうか?

 米国ジョンズ・ホプキンス大学の天体物理学者ウィリアム・バルマー氏は、今回の研究の目的について、「他の太陽系と比較して、私たちの太陽系や、私たち自身のような生命を理解し、私たちの存在を位置づけること」と、ニュースリリースで語っている。

私たちは他の太陽系の画像を撮り、それが私たちの太陽系とどれほど似ているか、あるいは似ていないのか調べたい。そこから私たちの太陽系がどれほど特殊なのか、あるいはどれほど一般的なのかを明らかにするのです(ウィリアム・バルマー氏)

 バルマー氏によると、こうした巨大惑星は惑星系の形成にきわめて大きな影響を与えるという。それは他の惑星の形成や居住可能性を守ることもあれば、破壊することもある。

 だからこそ、巨大惑星の「形成過程を理解することは、地球型惑星の居住可能性を探るうえで重要」なのだ。

 とは言え、太陽系の外にある惑星は恒星より何千倍も暗く、直接観測することは難しい。

 今回それが可能になったのは、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡のコロナグラフのおかげだ。

 この観測機器は、恒星の部分を遮光してその周囲のコロナだけを観測することができる。

 研究チームは、今後もコロナグラフを利用して巨大惑星を解析し、その組成を検証していく予定であるとのことだ。

 この研究は『The Astrophysical Journal』(2025年3月17日付)に掲載された。

References: Iopscience.iop.org / Webb telescope captures its first direct imag | EurekAlert!

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この記事へのコメント 14件

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  1. 誕生後3000万年と言うとスバル(M45)の星々の半分ぐらいなのかな?
    若い星なんだな。
    そして主星のHR8799の大きさがどの位なんだろう 結構大きいように思えるけど

    • +6
    1. 1.44R(太陽半径)だそうな。ざっくり1.5倍

      ちなみにBまでの軌道半径が71.6±0.2au(天文単位)なので直径214.2億キロ位
      外側にあるダストディスクの外周半径が360auで直径1077.2億キロ

      海王星までが最長30.047auで直径89.9億キロ
      (遠日・近日等の差は考えないモノとする。数値はウィキペデアによった)

      • +2
      1. なるほど ありがとう
        Bまでの距離が海王星までの距離の約2倍強あるんだな

        • +3
  2. 観測できたところで光の速さで96年の場所には到達不能
    太陽系外に到達したボイジャー1号の速度は、秒速約17km
    96万光年先に辿り着くには約168万年かかる

    最近の宇宙探査のお知らせは虚しさが募るばかり
    ブラッドピットの「アドアストラ」のような映画はその虚しさを示唆している
    と同時に身近な繋がりに目を向けようというメッセージも

    • -20
    1. ごめんなさい、96万光年先じゃなくて96光年の間違いでしたね…
      それでも辿り着くまでの時間は余りにも膨大で、人間のスケールではあり得ない時間を要しますよね

      そんな挑戦を成功させる前に、人類はせめてネコと和解し、彼らとの共存をモノにしないとってと思ったのです

      薄ぼんやりとした遠くの星に想いを馳せるよりもってね

      • -9
  3. 46億年後に向こうの知性体がこっちを見つけてくれると楽しいね 
    「あれ あの星なんか遺跡がある?」って

    • +13
  4. 恒星が放つ光を反射しているのだから半球状に見えるのかと思ったら、違うのだな

    • +2
    1. 目に見えない波長で二酸化炭素を検出した画像だから丸く写ってるんじゃないかな。

      • +1
  5. 子供の頃から星好きだけと、自分が生きてるうちに系外惑星を画像で見れるのは感慨深い···。
    画像を見てると何か、初めて人の家の中を見たような、気恥ずかしいというか、ドキドキ感がある···。

    • +7
    1. 子供の頃からというより、ほんの数年前まで、まさかこんな画像が見られるとは思ってなかった!
       
      それと一枚目の画像は、こんな狭い画角に惑星を4つも写し込めるのか??と驚いた。端から端までどれくらいの距離なんだろう?
      元記事を読んでも分からなかった・・・

      • +1
  6. 太陽系と似た恒星系がたくさんあるなら知的生命体の存在する確率も高いかもしれない。結果にかかわらずこれはワクワクするな!

    • +5
  7. 直ぐではないかもしれないが今回直接撮影できた近隣の惑星も近い未来に直接撮影されるかもな

    • +3
  8. 太陽系外惑星を捉えても人類が認識してる頃には消失してると思ってた
    科学ってすげえ

    • +1

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