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気象観測気球が海洋生物に及ぼす深刻な影響

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(著)

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Photo by:iStock
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 世界中で毎年何十万もの気象観測気球がに打ち上げられているが、実はそれが海鳥や海洋生物に深刻な影響を与えている。

 気象観測気球の多くはゴム製の風船のようなものでできているのだが、爆発して落ちてくる。だが大部分は回収されず、その残骸は海に落ちたままの状態だ。

 気象観測気球の廃棄物(ゴムやパーツ、プラスチックの混合物)はずっと海に残る。その廃棄物に絡まり、多くの海洋生物たちが命を落としているという。

気象観測気球の残骸がからまり、命を落としたアホウドリ

 2023年秋、ブラジル南東部サントス湾で、一羽のニシキバナアホウドリの幼鳥がビーチの砂の上にぐったりと横たわっていた。

 気象観測気球の残骸がからまって骨折していて、無線送信機がつながったままの気球の紐が肉に食い込み、組織が破壊されて足の血流を遮断していたのだ。

 あまりにひどくがんじがらめになっていて、羽繕いすることすらできない。鳥は尾脂腺から分泌した皮脂を羽繕いによって体に塗りつけて濡れないようにしているが、海鳥に不可欠なそんな大切な行為すらできずにびしょ濡れだった。

 獣医に診せると、生命線である足を切断しなくてはならず、結局、安楽死という苦渋の選択をする以外、道はないという結果になった。

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水面のニシキバナアホウドリ Photo by:iStock

気象観測気球の残骸が海鳥や海洋生物に及ぼす影響

 獣医のダフネ・ゴールドバーグ氏は、気象観測気球の残骸が海鳥や海洋生物に及ぼす影響を研究している。

 毎年、世界中で何十万もの気象観測気球が打ち上げられているが、その大部分は未回収のままだ。

 気球の材料であるラテックスや綿、プラスチックなどはそのままゴミになり、ずっと海洋生態系の中に残る。これら廃棄物のせいで死んだ生き物が海岸に打ち上げられるのはほんの一部だ。

 実際にはその影響はもっと深刻である可能性が極めて高いという。「おそらく、気球にからまって死んだ生き物の例はもっとたくさんあるはずです」ゴールドバーグ氏は言う。

気象観測気球打ち上げの映像

気象観測気球の仕組み

 気象観測気球を打ち上げるのは、多くの場合、高高度の気温、気圧、湿度のデータを収集するためだ。

 1930年代に最初の気象観測気球が発明される以前は、凧に温度計を取りつけて観測を行っていた。

 現在、世界中におよそ1300の観測所があり、ビーチボールの3倍以上の大きさのゴム製の気球を飛ばして、天気予報やハリケーンなどの暴風雨の警報を伝えている。

 気球の糸は綿製で、ラジオゾンデ(気球に取り付けて飛ばし、高層大気の気温・湿度・気圧などを測定し、測定値を無線で地上に送信する装置)が取りつけられている。

 これは、ポリスチレンまたは硬質プラスチックでできた箱で、センサーと電池式の無線送信機が内臓されていて、毎秒、気象データを地上の受信機に送信している。

 米国は年間およそ7万6000個、カナダはおよそ2万2000個の気球を打ち上げる。

 気球は上昇するにつれて膨張し、ある高度に達すると体積が100倍になって爆発し、ゴムを四方八方に飛び散らせる。

 ラジオゾンデには小さなパラシュートがついていて、無事に地上に戻って来られるようになっている。

気象観測気球が上空で爆発する様子の映像

気球ゴミ問題に警鐘

 オーストラリアのタンガロア・ブルー財団が、使い捨て気象観測気球のゴミ問題に警鐘を鳴らしたのは10年前のこと。

 21ヶ月間にグレートバリアリーフ周辺だけで2460個の気球ゴミが回収されたという。オーストラリアが打ち上げた気球の行きつく先の70%が海洋だと推定されている。

 気球ゴミの被害は海鳥だけではない。バージニア州ではひれ部分に紐が巻きついて身動きがとれなくなったヒメウミガメなどが見つかっている。

 気球の材料であるラテックスや綿は生分解性があると考えられているとはいえ、分解には時間がかかる。

 米国が飛ばす気球の糸の全長はエベレストの高さの185倍にもなるとされている。

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Photo by:iStock

徐々に対策がはじまっている

 フィンランドの気象観測機器大手ヴァイサラ社は、こうした事態を重く見て、生物の福祉や環境のために、気球に使われている材料をもっと自然に近いものに変える対策をとろうとしている。

 例えば、従来の綿よりもずっと早く分解するセルロースベースの繊維糸を使ったり、天然素材やデンプンで作られたラジオゾンデも開発されているが、こうした自然に優しい新たなモデルは20~30%割高だという。

 コストがかかるとはいえ、オーストラリア気象局側もより生態系に優しい持続可能な試作品を試して乗り換える方向に動き、海洋生物がエサと間違えないように色をつけた気球を使用したりしている。

 英国や米国も改善に乗り出している。気球のほうがより高度でのデータがとれるため、重要なツールであることは変わりはないが、観測にドローンを使う試みも始まっている。

 生態系になるべく影響を与えないこうした試みは、少なくとも海洋生物にとって多少は改善となるだろう。

References: Here's How Weather Balloons Can Harm Marine Animals | Smithsonian

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この記事へのコメント 13件

コメントを書く

  1. 戦争による環境汚染と気象観測による環境汚染はどちらが環境負荷が高いんだろう?

    • +2
    1. 戦争とだけ比較しても大して意味は無いと思うが

      • +11
  2. 国際的なルールで飛ばしてる国がすべて撤去費用と処分費用を出すようにするべき

    • +4
  3. 慥かに問題では有るだろうけど数で言ったら他に優先すべき物が大量にありそう
    企業が利益優先で大量に作って一般消費者が大量に出すゴミとかねー

    • +8
  4. 五十年近く前、拾ってきた奴がいて
    小学校で展示してたけど…
    公害だなって(まあ大事な観測だけど)
    当時は海亀がクラゲ食べるとは知らないから、落ちて来たらゴミという感じだった
    むしろ鉛やPCBの心配していた

    • +5
  5. 海洋プラスチックごみの時も言われてたけど、
    一番多い海洋ごみは漁網とかでしょ?
    それ言えよ。まあ言ったら反撃されるんだろうが、、
    殴り返してこないやつだけ殴るって
    日本では卑怯者というんだぜ。

    • 評価
  6. 関係各国の政府は、危急の要件なので宜しく

    • 評価
  7. 某アザラシ保護センターにも、お願い事風船が絡んで瀕死になって保護された仔もいたわね
    濡れたら即溶ける素材とかで、雨の日以外の短時間だけ作用できるようにしたりとか無理かなー

    • +8
  8. 日本軍みたいにコンニャクで作れば分解されるのでは

    • +1
  9. 小学生の頃学校の近所に気象観測所?みたいな施設があって、よく校庭で朝礼がある時に飛んでいくのをずっと見てたな~っての思い出した。校長の話長いし。
    当時はアレが環境汚染に繋がってるなんて考えもしなかった。

    • +3
  10. イベントで打ち上げるゴム風船も、実は同じなんだけどね。

    • +1
  11. そこで日本の技術ですよ。
    私も最近知りましたが、日本の岩谷技研というところが回収関連の技術も磨いてそうです。

    • 評価
  12. なお小ネタとしては、日本で打上げてる”大気球”で使われてる巨大な
    ポリエチレン製の気球部分は、可能な限り回収はしてるって事だ。

    • 評価

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