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6600万年前の大量絶滅の危機を乗り越えるため、アリたちは菌類を栽培する農業を学んだ

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(著)

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葉っぱを運んでいる2匹の蟻この画像を大きなサイズで見る
Photo by:iStock
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 小さなアリの中には農業を営む仲間がいる。彼らはキノコ畑で菌類を育てて、それを食べて生きているのだ。

 人間よりもはるかに古いアリの農業は、どのようにして始まったのか? その謎を解明するべく膨大なDNAを集めた最新の研究では、驚くべき事実が明らかになっている。

 なんとその始まりは、約6600万年前に恐竜を絶滅させた小惑星の衝突がきっかけだった可能性が高いという。

 大量絶滅の危機を乗り越えるため、彼らは菌類を栽培することを学んだのだ。

アリは人間よりも古くから農業を行い、菌類を栽培していた

 農業は人類の発明品と思うかもしれない。だがじつのところ、昆虫たちはそのずっと前から農業を始めていた。

 たとえば、アリの中にはキノコ(正確には「菌類」)を育て、それを食べて生きる種がいる。とりわけ高度なのはハキリアリだ。

 北アメリカ東南部から、中南米の熱帯雨林帯を中心とした地域に広く生息する彼らは、葉を切り取って巣に持ち帰り、それで菌類を育ててエサとして収穫する。

 そうしたアリたちは適当に菌類を選んでいるわけではない。

 と言うのも、遺伝子の研究から、特定の農業アリは決まった菌類しか育てないことがわかっているからだ。

 つまり農業を営むアリは、それぞれの菌類に合わせて進化したようなのだ。

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葉を切り落として次々と運んでいくハキリアリ Photo by:iStock

いつどのようにしてアリと菌類は強制関係を持ち始めたのか?

 だが、こうしたアリと菌類の共生関係がどのようにして始まったのか、詳しいことはわかっていない。

 1つの問題は、アリに栽培される菌類の”野生種”があまり理解されていないことだ。

 今回の研究では、アブラジルのサンパウロ州立大学生物科学研究所やアメリカ国立自然史博物館をはじめとする国際的なチームが、アリと菌類の膨大な量のDNAを調べ、このアリの農業の進化の歴史を描き出している。

 そこから浮かび上がってきたのは、アリの農業は、恐竜を絶滅させた約6600万年前の小惑星衝突による大量絶滅がきっかけだったらしいという意外な事実だ。

アリ農家の血縁関係、キノコの血縁関係をDNA分析

 この研究では、菌類475種とアリ276種のDNAを採取して行われた。

 ここには農業をする種もしない種も含まれており、2000以上の遺伝子を比較することで、種のつながりが洗い出された。

 この分析では、アリが行う農業の種類によってグループ分けされた。

 たとえば、酵母を栽培するグループ、ホウキタケを栽培するグループ、あるいは農業に適応した菌類を栽培するもっと洗練された農業を行うグループ(先述したハキリアリはこのグループだ)などだ。

 こうしたグループを分析した結果、酵母で農業するアリとホウキタケで農業するアリは、非常に近い関係にあり、単一の祖先種から枝分かれしたことがわかった。

 高度な農業を行うアリたちもまた、お互いに近縁にある。

 同じことが菌類側でも言える。栽培される酵母はどれも近い種で、ホウキタケも基本的に同様だ。

 農業に適応した菌類たちも親戚同士だ。ただし、これらは酵母と非常に近い関係にあることがわかっている。

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ハキリアリの巣の中にいる女王アリ Photo by:iStock

アリの農業は6600万年前の大量絶滅がきっかけで始まった可能性

 こうした農業アリたちの共通祖先を探ってみると、どうもその祖先は白亜紀の終わりに起きた大量絶滅を経験しているらしいことがわかった。

 つまり小惑星の衝突で恐竜が絶滅した時代を生きのびていたのだ。

 小惑星に関する研究では、それが衝突した後、大気中に大量のチリやホコリが舞い、太陽の光が遮られたせいで、植物は2年もの間、光合成ができなかったらしいことが明らかになっている。

 そのため植物はほとんど成長できなかったはずだ。その一方、死んだ動物の死体が大量にあったため、菌類は繁殖しやすかった。

 この過酷な時代を生き抜くために、アリが栽培する作物として菌類を選んだとしても驚くべきことではないかもしれない。

 こうしたことは、菌類で農業を営むアリがどれも近い関係にある理由を説明してくれるだろう。

組織化されたアリの農業は3300万年前から

 ただし組織化された農業を行うアリのほとんどが現れたのは、大量絶滅から3500万年後となる始新世の終わり(およそ3300万年前)のことだ。

 その理由は、漸新世への過渡期に起きた気候変動によって、農業アリが進化したアメリカの熱帯地域で乾燥が進んだことと関係しているかもしれない。

 この環境に変化によって、食べられる野生の菌類が減り、それを自力で栽培できるアリたちが有利になったのだ。

 同じことは、酵母で農業を行うアリについても言える。

 ただしホウキダケを利用するアリが登場したのは、そのさらに1000万年後のことらしいので、このグループについてはまた別の事情があったようだ。

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Photo by:iStock

宇宙規模の出来事が地球の生物の暮らしに影響を与えている

 この研究は、アリによる農業がなぜ始まり、どのように進化したのか、より明確なストーリーを描き出している。

 それは意外にも、小惑星によって環境が激変し、エサが乏しくなった地球を生きるためにアリが考案したサバイバル術だったのかもしれない。

 じつは、このことは人間の農業についても言えるかもしれない。

 ある研究によると、1万2000年ほど前、地球に落下した彗星が農業の始まりにつながった可能性があるのだという。

 まったく関係ないように思えて、宇宙は地上の生物たちの暮らしを大きく左右している。それはアリの農業と同じくらい意外な事実だろう。

 この研究は 『Science』(2024年10月3日付)に掲載された。

追記:(2024/10/011)タイトル本文を一部訂正しました。

References: Ants learned to farm fungi during a mass extinction - Ars Technica / Ants discovered agriculture 66 million years ago

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この記事へのコメント 12件

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  1. ハチ目(アリを含む分類)って不思議ですね。単独行動をとるものはほかの昆虫と同じですが社会性を持つものが多くて協業するし、さらにアリに至っては農業もってほんとすごい。
    昆虫は小さな装置、ロボットみたいなものが多くて単機能の集合で社会性を持つアリやハチは集合して多機能を得ているってのがとっても不思議。多分数にもの言わせてちょっと違う行動をするものが生き残ったらそれが増えてという、淘汰の極みっていう感想で自分で小並感。
    アリのその菌をちょっと失敬して、人間の食糧事情の研究に役立てるって方向も考えてみたり・・・

    • +13
  2. こういった昆虫の事例を聞いていると、人間の言う【知性】と【言葉】による進化なんてものは人間が勝手に定義した幻想に過ぎないのかもしれない。

    宇宙には多くの生命体がいるけれど、自身のコミュニティを維持するだけで満足してるのかもな

    • +15
    1. 「過ぎないのかも」ではなくて「過ぎない」ですね

      ちょっと離れるけど地球外での生命体で水の有無を基準で考えるのもそれと同じ
      理解できる範囲から探しているに過ぎない

      • +7
  3. アリと人間は全く違う生物なのに生活パターンはよく似ている
    宇宙にはアリのような生き物から知的生命に発展した宇宙人もいるかもしれない

    • +11
  4. 人間にはキノコって低カロリーで食物繊維ぐらいしかなくて
    健康食品、ダイエット用みたいなイメージだけど
    昆虫にはしっかりエネルギーになるのかな。

    • +4
    1. 消化できさえすれば、立派な炭水化物ですしね。

      • +8
    2. 草食動物「わし達はいわゆる食物繊維からカロリーを得ているんやで」
      なお実際には腸内の微生物に頼っている模様

      • +7
    3. シロアリなんかキノコどころか木材そのものを食べるし。
      それに比べればキノコの方がよっぽど消化しやすい。

      • +6
  5. 先日、NHKで「ハキリアリは特に高度で音声による会話している」とやってた
    音は腹部の前節でぎこぎこ鳴らしてるとか
    大爆発で鼓膜が破れたからこういう振動で会話するらしい(嘘)

    • +1
  6. そういえばその辺のアリがアブラムシと共生してるのも牧畜に例えられるよね、ちなみにアブラムシの別名アリマキは漢字だと蟻牧になる。

    • +4
    1. アリノタカラカイガラムシとかもいるし共生関係の幅も広いよね

      • +1

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