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5万年前の樹脂製の高度な技術の遺物。古代人類の太平洋拡散の歴史を書き換える可能性

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 考古学者のディラン・ガフニー博士を中心とした国際研究チームが、古代人類が高度な技術を使って加工した5万年前の樹脂製遺物から、ホモ・サピエンスが5万5000年前にはすでに太平洋に到達し拡散していた可能性が高かったことを突き止めた。

 これまでの研究では、現生人類の先祖がオーストラリア北部のマジェッドベベ岩窟に住みついたのは数千年前と言われていたが、このタイムラインがくつがえされる可能性が出てきた。

人類の先祖は、考えられていた以上早く太平洋の島々に進出

 今回、インドネシア、ワイゲオ島のモロロ洞窟から回収された樹脂製の遺物は、古代人類がこれまで確認されていたよりも遥かに早く太平洋の島々に進出しており、しかもその過程で高度な技術を駆使していた決定的な証拠である可能性が高いという。

 この見解は人類が太平洋の島々に住み始めた年代を数千年もさかのぼることになる。

 「ハワイのモロカイ島で見つかった樹脂製遺物は、熱帯雨林環境に移り住んだ人々が開発した高度な技術プロセスが存在したことを示しています」ディラン・ガフニー博士は語る。

 これは、更新世に生きていた初期の人類の適応能力と柔軟性についての私たちの理解をさらに深めてくれるものです(ディラン・ガフニー博士)

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Photo by:iStock

5万年前の樹脂製遺物に初期人類の高度な技術プロセス

 アフリカを出た人類の祖先が、太平洋に到達しさらに広まっていった正確な年代については相変わらずさまざまな議論があるが、おおむねおよそ4万4000年前とされていた。

 ガフニー博士らの今回の研究によると、5万年前の樹脂を手作業で採取、加工していたという新たな証拠は、高度な技術を持った初期人類が5万年~5万5000年前にはワイゲオ島に到達していたことを示している。

 ワイゲオ島は人類が西からオーストラリアへ渡るのにもっとも適した北ルートだ。この新たな発見は、これまでの到達推定時期を数千年も早めることになる。

 樹脂で作られた遺物は、人類が世界各地へ分散していったときに獲得した複雑な植物加工技術の証拠だ。

 人間が手を加えた樹脂遺物は直線的なのに対して、自然にできた樹脂は球状でまったく異なる。

 つまり人間が木から樹脂を直接採取して利用したことを示しているのだ。

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Photo by:iStock

 5万年前のこの樹脂遺物を走査型電子顕微鏡を使って分析すると、樹脂が複数の段階を経て加工されていることが明らかになった。

 これは、樹脂遺物の異なる表面につけられたさまざまな切り込みや引っ掻き跡によって裏付けられる。

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5万5000年~4万9620年前の樹脂製遺物(WAI-1-1024) A)側面はざらざらしている。B)背面は平らで切り込みや小さな削り跡がある。C)腹側に削った跡と思われる平行線がある。D)側面はそこで割れたかのように表面がざらざらしている。E)樹脂製遺物の制作手順についての暫定的な仮説の図解 image credit:https://doi.org/10.15184/aqy.2024.83

現生人類の祖先が太平洋に進出していたことを裏付ける証拠

現生人類の祖先人が高度な技術を使っていたという証拠は、太平洋を渡った一番始めの人類の移動を調べる上で非常に重要だ。

 太平洋移動のシミュレーションは、初期人類の船の漕ぎ手が、オーストラリアやニューギニアなど現在のオセアニアを形成していた古代のサフル大陸に到達していたという考えを裏付けているという。

私たちは、更新世時代の海流をコンピューターでシミュレーションし、島々の間を移動するのにどれくらい時間がかかったのかをモデル化してみました

その結果、熟練した船の漕ぎ手なら、多少条件が悪い天候でもこの海峡を渡る成功率は比較的高かっただろうことがわかりました(ディラン・ガフニー博士)

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図:アジアとオーストラリアの大陸棚を除くインドネシアの島々の一群、ワラセアの南北ルート A)近隣の陸地からワイタンタ島への上陸が可能になる航海シミュレーション B)5万年前と最終氷期極大期(2万年前)のワイタンタ島の海岸線とモロロ洞窟 image credit:https://doi.org/10.15184/aqy.2024.83

別の古代人集団がいた可能性も

 5万年前の樹脂製遺物の正確な用途は判明していない。研究チームは、燃料や船の建造あるいは木製の柄に石器を取り付けるために使われた可能性があるとしている。

 樹脂の用途がなんであれ、太平洋の孤島で5万年前の樹脂加工技術が発見されたことは、これまで考えられていたよりもずっと早く古代人が太平洋に移動していたことを裏付ける重要な証拠といえる。

モロロ洞窟の樹脂遺物は、5万年以前に人類がサフル大陸の北の赤道ルート沿いに進出してきたこと示す、重要ですがざっくりした証拠といえます

おそらくホモサピエンスは湿潤な熱帯地方をいかだやボートで移動しながら、樹脂加工という考古学記録を残したのでしょう(ディラン・ガフニー博士)

 ホモ・サピエンスではなく、別の古代人類の祖先がこうした樹脂遺物を遺した可能性も排除できないため、さらなる研究が必要だという。

現代の集団遺伝学的証拠に基づくと、デニソワ人またはホモサピエンスとデニソワ人両方の祖先をもつ人たちが、ワラセア諸島あるいはユーラシア大陸で混血し、このルートに沿って移動した可能性も現時点では排除できないことに留意すべきです(ディラン・ガフニー博士)

 この研究は『Antiquity』誌(2024年8月13日付)に発表された。

※追記(2024/09/03)タイトル・本文を一部訂正して再送します。

References: 50,000-Year-Old Tree Resin Revealing ‘Sophisticated Technological Processes’ Could Rewrite History of Ancient Human Expansion - The Debrief

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この記事へのコメント 11件

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  1. 図の中の E のところで採取したあと硬化工程があるのだけど、乾かす以外になんかあるのかなと調べたけどよくわからず。 でもそのあと加工して火付けに使った?みたいな予想は面白いです。 高温になると融けて温度が下がると固まる性質は石斧とか槍とかの接着剤に使えそうとか思うと天才がいたのかもなんて……今後の調査にも期待しちゃいます

    • -1
  2. Wikipedia「もしかして. 太平洋. ではありませんか? 」

    • 評価
  3. 東南アジアからオーストラリアにはだいたい島伝いに行けるからまだわかる。現に進出してるがどうやって到達したのかものすごく不思議なのはポリネシアやミクロネシア、あとイースター島。絶海の孤島で何をどう頑張っても他の島から見えないのに移住の用意をして海に乗り出したその決断はどこから来たのか。相当な人数が海の藻屑になっただろう。

    • +2
    1. フロート付きカヌーが発明されてポリネシア人の海洋探検は格段に進歩した。彼らは季節ごとの風と海流を記録した地図を作る技術があり、数日間の航海ならばちょっとした遠足気分でやってのける人たち。絶海の孤島を見つけるのは無論難しいけれど、島の周囲数十キロくらいを鳥が飛んでいるのでそれを見つけられれば陸地へは辿り着ける(コロンブスも同じ方法を使っていた)

      人類社会というのはうまく出来ていて、基本的には一夫一婦制を原則としているのに裕福な年長者が複数の妻を持ちたがるため、結婚できない若者はその不満をしばしば村の外へ向ける傾向にある。近隣村落との戦争や略奪以外に、未知の世界への冒険というのも含まれており、アフリカを出た現生人類が瞬く間に世界中へ拡散していく強い原動力になった。その過程で不運にも命を落とすものは少なくなかっただろうが、彼らだって自分の人生は惜しいわけで、いうほど無謀な航海ばかりだったわけではない

      • +1
    2. それを考えると彼の説が正しいかは置いといてヘイエルダールは行けると知っていてもすごい勇気があったなと。ほんとヒト種の未知の地への進出意欲ってスゴいよね。

      • +3
  4. 5万年前までには人類は文明を構築する能力を秘めていたという事か
    ギョベクリ・テペ遺跡は1万2000年前だけど
    下手したら5万年前の遺跡とかもそのうち出て来るかもね

    • +3
  5. 松脂だとテレビン油という揮発成分がある
    漆だと化学反応で固まるんだよね

    • +2
  6. ベア・グリルスが穴のあいたボートを手作りクロスとその辺の樹脂で穴塞いでたけど、あんな感じなんだろうか。
    なんか樹脂煮込んでた気する。ああいう加工とか確かにできそう。なんせ火使ってるわけだし。

    • +2
  7. ほんと人類の痕跡って思ったより残ってないもんなんだな
    何回か文明滅びててもおかしくないわな

    • +4
    1. 「文明」のレベルは知らんけど、
      日本の三内丸山とかもわりと大規模な集落とか形成していたとかもあるし
      そういった意味で現在把握していない先史古代文明は何個かあったんじゃない?
      まぁ。なんというか。自然の作用にはそう簡単には勝てないしね

      • +5
  8. 5万年前には防水だか撥水加工しようぜって発想に至った人がいたんだな

    • +3

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