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月はわずか5時間で形成された可能性。地球と原始惑星テイアの衝突シミュレーション

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Image credit:NASA/JPL-CalTech/T. Pyle
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 約45億年前、火星ほどの大きさの仮想の古代惑星「テイア」が原始地球に衝突し、飛び散った破片が集まって月になったとする「ジャイアント・インパクト説」は、月の形成に関する最も有力な説とされている。

 これまで、月になる破片が集まりきるまでには100年ほどかかったと見積もられてきた。

 ところがアメリカの研究チームが、天体の「物質の硬さ」を計算に入れてシミュレーションをやり直したところ、地球とテイアが高温でやわらかい岩石のままぶつかった場合には、わずか5時間で今の姿に近い月が形成された可能性があるという。

 この研究成果は『The Astrophysical Journal Letters』誌(2026年9月1日付)に掲載された。

参考文献:

月の形成を説明するジャイアント・インパクト説

 太陽系のなかで、地球はその大きさに対して非常に大きな月を持っている。月がどのように誕生したのかは、正確にはまだわかっていない。

 現在もっとも有力なのは、約45億年前の原始地球に、火星ほどの大きさの仮想の原始惑星「テイア」が衝突して月ができたとするジャイアント・インパクト説である。

 2001年に米サウスウエスト研究所のロビン・カナップ氏とエリック・アスフォーグ氏が発表した研究では、衝突で粉々になったテイアの破片が地球のまわりに円盤状の輪をつくり、輪の中で破片が集まって月ができたと考えられた。

 2012年の別の研究は、輪の内側にある物質がゆっくりとしか外へ広がらないため、月ができあがるまでに100年ほどかかったと見積もっている。

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Image credit:NASA/GSFC

物質の硬さを考慮して再シミュレーション

 過去の計算では、衝突のエネルギーがあまりにも大きいため、地球とテイアは溶けてドロドロの流体になると想定されていた。

 流体として扱う限り、岩がどれくらい変形しにくいかという「物質の硬さ」は結果に影響しないため、計算に入れる必要はないとされてきた。

 だが、小惑星や準惑星のような小さな天体どうしの衝突では、物質の硬さが結果を大きく左右することがすでに分かっている。

 サウスウエスト研究所のアディーン・デントン氏は、冥王星と衛星カロンの成り立ちを調べていたときに、同じ考え方を月にも当てはめられるのではないかと思いついた。

 デントン氏らはアリゾナ大学と共同で、天体を無数の粒子の集まりとして表し、粒子ひとつひとつの動きを追う平滑化粒子法(SPH)という手法を使った。

 岩石や金属の硬さを温度に応じて変化させながら、月をつくった衝突をもう一度再現したのである。

天体の温度と硬さが月の運命を分ける

 岩は熱いほどやわらかくなり、冷たいほど硬くなる。シミュレーションをやり直すと、衝突したときの温度によって、月のでき方が2つに分かれた。

 地球とテイアが冷えて硬い状態でぶつかった場合、テイアは変形しにくいために衝突の勢いを受け流せず、砕けて地球のまわりに破片の円盤をつくった。

 円盤から長い時間をかけて月が組み上がる、従来の説と同じ結末である。

 ところが、地球とテイアが完全に溶ける一歩手前まで熱せられ、やわらかくなった状態でぶつかった場合はまったく違った。

 テイアは大きく変形しながら地球に勢いを受け渡し、砕けきらずに残ったのである。

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物質の硬さを計算に入れない従来のシミュレーション(左)では、衝突で飛び散った破片が地球のまわりに円盤をつくり、時間をかけて月ができる。硬さを計算に入れたシミュレーション(右)では、衝突の直後に砕けないままの月が現れる。Image credit:Denton et al., The Astrophysical Journal Letters, 2026

たった5時間で月が形成された可能性

 天体が流体ではなく岩石としてふるまい、なおかつ十分に熱かった場合、テイアの一部が地球に取り込まれ、残った部分が砕けないまま月として地球のまわりに残るという結末が確認された。

 研究チームが2001年の研究とまったく同じ条件を使い、地球とテイアの内部の温度の分布まで同じにして計算したところ、衝突から約5時間で月が現れた。

 月は1日ほどかけて少しずつ質量を減らすものの、わずか5時間で今の完成状態に近い形になった可能性がある。

 ただし、月が5時間で丸ごとできたのか、破片の円盤から時間をかけてできたのかは、まだよくわかっていない。

 2001年の研究を発表したカナップ氏は今回の研究に参加していないが、地球とテイアの熱さで結末が分かれるのであれば、今の月の性質を調べることで、逆に衝突がいつ起きたのかを絞り込めるかもしれないと述べている。

 生まれたばかりの惑星ほど高温で、時間がたつほど冷えていくからである。

 宇宙の歴史を変えるような出来事が、必ずしも途方もない時間を必要とするわけではないようだ。

References: DOI 10.3847/2041-8213/ae91e9

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