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後ろや横にもトコトコ歩く!エビのような深海魚の姿が撮影される

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Image credit:NOAA Ocean Exploration, 2015 Hohonu Moana
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 深海は、不思議と謎を大冒険するにはもってこいの場所だ。

 南シナ海の深海で、エビのような体と、足のようなヒレを持つ魚類、キホウボウの仲間が、海底を後ろ向きや横向きに歩く姿が映像に収められた。

 魚類で後ろ歩きが確認されたのは初めてとなる。

 この魚は1872年に記載されて以来150年以上も研究されてきたが、こんな器用な歩き方ができるとは研究者も知らなかったという。

 この研究成果は 『Ocean-Land-Atmosphere Research』誌(2026年7月30日付)に掲載された。

深海で撮影されたエビのような姿の「歩く魚」

 光の届かない深海には、私たちの想像を超えるような奇妙な姿をした生物が数多く生息している。

中国の中山大学と南方海洋科学与工程広東省実験室の研究チームが、南シナ海北部の深海で奇妙な生物の姿をカメラに収めた。

 水深350mから500mの海底で撮影されたのは、硬い骨板におおわれたエビのような体と、足のような器官を持つ深海魚である。

この魚はキホウボウ科(Peristediidae)に分類される。

キホウボウの仲間は全身が硬い骨板でおおわれているため、英語では「武装したシーロビン(Armored searobins)」と呼ばれている。

 アメリカのメディアは「魚とエビのハイブリッド」というあだ名をつけたほど、一風変わった外見をしているのだ。

2019年にNOAAがフロリダ海峡のフロリダキーズ南部の水深600m地点で発見し、撮影したキホウボウの仲間。見れば見るほどユニークな姿をしている。

魚類で初めて確認された後ろ歩きと横歩き

 研究チームは、中国の有人潜水艇「深海勇士」と、遠隔操作型探査機「海琴」を使用し、キホウボウの仲間3種が海底で活動する様子を観察することに成功した。

 そのうちの1種が、ヒゲキホウボウ属(Scalicus)のトウホウソコキホウボウ(Scalicus engyceros)である。

 潜水艇のカメラは、トウホウソコキホウボウが海底を後ろ向きや横向きに歩いて移動する姿をはっきりと記録していた。

 キホウボウの仲間が足のような器官を使って歩くことは以前から知られていた。

 だが後ろや横に向かって歩く行動が確認されたのは、すべての魚類において今回が初めてとなる。

 トウホウソコキホウボウは、1872年にイギリスの動物学者アルベルト・ギュンターが記載した魚である。

 150年以上にわたって標本が研究されてきたにもかかわらず、こんな歩き方をするとは誰も予想していなかった。

 エビのような見た目でカニのように横歩きもするとは、まさにびっくりの魚である。もちろん普段は魚として泳いでいる。

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今回撮影に成功した後ろ歩き、横歩きをするトウホウソコキホウボウ Image credit: Kedong Yin

歩行に特化した胸ビレと、獲物を探す熊手のようなヒゲ

 トウホウソコキホウボウはなぜ海底を歩くことができるのか。

 魚の胸ビレのすじ(軟条)のうち、膜でつながっておらず、1本ずつ独立して離れている「遊離軟条(ゆうりなんじょう)」と呼ばれる器官が、進化の過程で足のように変化したためだ。

 トウホウソコキホウボウは足のように進化した特殊な軟条を1本ずつ別々に動かして、海底の砂の上を器用に歩き回る。

 胸ビレの残りの部分は平たい丸い板のような形に進化しており、歩くときと泳ぐときに体のバランスを保つ役目をはたしている。

 さらにトウホウソコキホウボウには、顔の周辺から農作業に使う熊手のように外側へ広がるヒゲが生えている。

 ヒゲは歩く際には邪魔になりそうに見えるが、海底の堆積物に埋もれた獲物を探り当て、掘り起こして狩りをするために役立っている。

 脅威を感じたときの逃げ方もエビに似ている。

 研究チームによると、トウホウソコキホウボウは足のような軟条と尾を使い、エビのようにぎくしゃくと跳ねながら、素早くその場を離れたという。

大きな目は光を感じることができる

 トウホウソコキホウボウは大きな目を持っている。

 潜水艇が近づいてもまったく反応を示さなかったが、潜水艇のライトが当たると目を動かし、その後泳ぎ去っていった。

 研究チームは、この魚の目には深海に生息していても、光を感じる力がまだ残っていると考えている。

 真っ暗な深海で暮らす生物は、長い年月をかけて視力を失っていくことが多い。

 光への反応が残っているとすれば、トウホウソコキホウボウがこの暗い環境で暮らすようになってから、視力が完全に衰えるほど長い時間は経っていないのかもしれない。

 研究チームは論文の中で、この魚が時おり光の届く浅い層まで上がってくる可能性にも触れている。

最新技術が生きた深海魚の姿を明らかにする

 これまで深海魚の調査は、網で海底を引きずる底引き網漁に頼ることが多かった。

 網を使う手法では、深海魚が持つ繊細で特殊な身体構造を傷つけてしまい、自然な環境でどのように行動しているのかを確認することができなかった。

 現代の深海潜水艇技術の進歩によって、深海生物の生きたままの自然な姿を直接観察することが可能になったのだ。

 中山大学のティエン・ハン氏は、生きている深海動物を自然の環境の中で観察することで、その種の適応と進化について新しい知見を得ることができると述べている。

 標本だけを見ていた時代には、この魚が後ろ向きに歩くことも、脅かされるとエビのように跳ねることも知りようがなかった。

 海底を歩く魚は世界にわずかしかいない。

 その中で、前にも横にも後ろにも進める魚は、今のところトウホウソコキホウボウだけである。

 だがそれはまだ我々がしらないだけで、深海にはもっと奇妙な歩き方をする魚が暮らしているのかもしれない。

References: DOI.10.34133/olar.0172 / Fish-prawn hybrid observed walking backward for the first time | EurekAlert!

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