この画像を大きなサイズで見る科学の真面目な研究成果が、ネット上で思わぬお祭り騒ぎを生み出した。
Googleとハワード・ヒューズ医学研究所の研究チームが、オスのショウジョウバエの完全な脳内マップを一般公開した。
すると世界中の技術者たちが、このハエの脳の神経データを利用して、プロならではの斜め上いく実験を次々に開始したのだ。
ハエの脳に刺激を与え、「Doom」や「スーパーマリオ64」をプレイさせたのだ。
この研究成果は『Cell』誌(2026年9月3日付)に掲載された。
参考文献:
- A connectomics milestone: Mapping the complete male fruit fly brain
- google / neuroglancer
10年の歳月をかけハエの完全な脳内マップが完成
Googleとハワード・ヒューズ医学研究所(HHMI)の研究チームは、オスのショウジョウバエの脳と中枢神経系の完全なマップを公開した。
「コネクトーム」と呼ばれるこの脳の配線図は、10年の歳月をかけて作成された。約16万6000のニューロン(神経細胞)と1億2500万のシナプス(神経細胞同士のつなぎ目)のつながりを明らかにした。
ニューロンの数では過去最大の脳マップとなる。
研究チームは脳を極薄にスライスして電子顕微鏡で撮影し、AIを使って3Dデータとして再構成した。
研究の本来の目的は、生物がどのように世界を知覚し、刺激に反応するのか、そして傷ついた神経の通り道をいつか修復できるのかを解明することである。
この画像を大きなサイズで見る技術者たちがハエの脳データを使ってゲームをプレイ
偉大な科学の成果は、インターネット上で思わぬ方向に発展した。
神経科学のデータが誰でもダウンロードできる状態で一般公開されたため、技術者たちがこぞって独自の実験を始めたのである。
あるソフトウェアエンジニアは、公開されたデータを使ってハエの脳をシミュレートし、古典的なシューティングゲーム「Doom(ドゥーム)」をプレイさせるプロジェクトを立ち上げた。
ゲームの映像から受ける刺激を感覚ニューロンに入力し、神経活動の反応をゲームのコントローラー操作に変換している。
ゲーム内でダメージを受けると、ドーパミンを分泌する細胞に刺激を与える仕組みも組み込まれている。
ただし本人はGitHubに、現時点で生き残りを学習したとは示せていないと明記している。
現在、ハエの脳がプレイする「DOOMFLY」は、ライブ配信されている。
マリオやマイクラまで、技術者たちのカオスな実験
別の技術者は同じデータを利用して「スーパーマリオ64」を操作させ、マリオがジャンプして壁に何度もぶつかる動画を公開した。
ハエの全ニューロンを「マインクラフト」のゲーム内で動かし、仮想空間でハエの動きを再現した技術者もいる。
ゲーム以外でも、4つの異なる音色を聞かせて「Y-M-C-A」のポーズをとるように脳を微調整した技術者もいた。
他にも、ネットで流行したアニメーション「Bad Apple!! 」を見せて脳がどう反応するかを観察したりと、技術者たちによる珍実験が次々と行われている。
人類の脳の謎を解明するコネクトームの今後の展望
現在のところ、約860億個のニューロンを持つ人間の脳を完全にマッピングすることは不可能である。
研究者たちはショウジョウバエのような小さな生物から脳の配線図の解明を進めている。
ネット上ではハエの脳がゲームをプレイさせられるという状況になっているが、この現象もデータが広く公開され、誰もがアクセスできる環境だからこそ起きたことである。
Googleはすでにハエの先を見据えており、魚(エレファントノーズフィッシュ)の脳の一部のマップを『Nature』誌に発表し、マウスの脳マップづくりにも取りかかっている。
様々な生物の脳マップが一般公開されれば、技術者たちの好奇心に満ちた実験が、さらなる展開を遂げていくことだろう。生物対抗バトルゲームとか絶対出てきそうだ。
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References: DOI.S0092-8674(26)00942-6
















