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土星の南極上空に出現した「十角形の波」。北極の六角形に続く新たな謎

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(著)

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土星南半球の極投影図。十角形が浮かび上がっている。Image credit:NASA, ESA, A. Sánchez-Lavega (Basque Country University, EHU)
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 土星といえば、大きな輪と北極の周りを渦巻く巨大な「六角形」の雲の波が有名だが、他にも新たな特徴が見つかった。

 スペインのバスク大学などの研究チームは、土星の南極上空にも巨大な「十角形」の波が出現しているのを発見した。

 アマチュア天文学者の観測画像をきっかけに、ハッブル宇宙望遠鏡などのデータからその存在が確認された。

 土星の南半球に夏が近づき、姿を現した新たな多角形構造は、巨大ガス惑星の複雑な気象メカニズムを解明する重要な手がかりとなるかもしれない。

 この研究成果は 『Science Advances』誌(2026年9月2日)に掲載された。

アマチュア天文学者の発見から見えた南極の異変

 土星といえば、美しい氷の環の次に有名なのが北極を取り巻く「六角形(ヘキサゴン)」と呼ばれる巨大な雲の波だ。

 1980年代にボイジャー探査機が発見して以来、少なくとも44年間は安定して存在している。

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土星の六角形。NASAの探査機カッシーニが撮影した自然色画像は、2013年6月と2017年4月の土星の北極域の様子を比較したもの。Image credit:NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute/Hampton University

 科学者たちは長年、南極にも同じような現象があるのではないかと探してきた。

 2004年から2017年まで土星を周回していたカッシーニ探査機は、2004年に南極付近で多角形のような乱れを一度だけとらえたが、それは数日で消えてしまい、二度と現れなかった。

 進展があったのは2024年、オーストラリアやフランスのアマチュア天文学者たちが、自前の望遠鏡で撮影した画像に、土星の南極の周りでうねる暗い帯を発見した。

 アマチュアが撮影した惑星の画像は、スペインのバスク大学が運営するサイトに世界中から寄せられており、南極の異変はそこに届いた画像から見つかった。

 土星の南半球が長い冬を抜け出し、地球から観察しやすくなったタイミングでの発見が、未知の気象現象を解明する第一歩となった。

ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた十角形の全貌

 アマチュア天文学者たちの発見を受け、スペインのバスク大学のアグスティン・サンチェス=ラベガ氏が率いる研究チームは詳しい分析を行った。

 地球の軌道上から宇宙を鮮明に観測できるハッブル宇宙望遠鏡の高画質画像などを用いた結果、2025年にこの暗い帯が紛れもない「十角形(デカゴン)」であることが確認された。

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NASAのハッブル宇宙望遠鏡がとらえた単一フィルター画像には、土星の南極を取り囲む10角形の波がはっきりと写っており、「decagon(デカゴン)」とラベル付けされている。「X」はデータが取得されなかった箇所。Image credit:NASA, ESA, STScI, Agustin Sánchez-Lavega (UPV), Amy Simon (NASA-GSFC), Michael Wong (UC Berkeley); Image Processing: Alyssa Pagan

 さらに過去のデータをさかのぼることで、2023年にはすでにその痕跡があったことが判明している。

 南緯約63度を中心とする十角形は、土星の強力な東向きのジェット気流に乗った巨大な大気の波だ。

 ジェット気流自体は時速約400kmという猛烈なスピードで吹いている。

 一方で十角形全体としては時速約9kmという比較的ゆっくりとしたペースで移動している。

 目に見える表面の模様だけでなく、さまざまな高度にわたって垂直に重なる巨大な立体構造であることもわかっている。

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NASAのハッブル宇宙望遠鏡が撮影した土星の2つの画像には、惑星の南極を取り囲む巨大で変化し続ける10角形の大気の波が写っている。Image credit:NASA, ESA, STScI, Agustin Sánchez-Lavega (UPV), Amy Simon (NASA-GSFC), Michael Wong (UC Berkeley); Image Processing: Alyssa Pagan

北極の六角形とは違う南極の十角形の謎

 北極の六角形と南極の十角形は、どちらも巨大ガス惑星の大気にできる雲の波という点では同じ現象だが、まったく同じではない。

 十角形は六角形よりも極から少し離れた緯度にあり、最近になって形成されつつある様子が確認された。

 そのため、数十年間安定している六角形ほど構造が強固ではないと考えられている。

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土星の南極に十角形が2023年から2025年の間に出現する様子をハッブル宇宙望遠鏡による観測データが明らかにした。Image credit:Sánchez-Lavega et al., Sci. Adv. , 2026

 なぜこのような違いが生まれるのか。

 研究チームは、風の構造の違いや、十角形のすぐ北にある「赤い斑点(Red Spot)」と呼ばれる幅約4000kmの巨大な高気圧の渦が影響を与えている可能性を指摘している。

 木星の大赤斑を小さく、短命にしたような渦である。

 実際、十角形はこの渦の近くで最もはっきりと現れる。

 しかし、シミュレーションを行っても十角形の形を完全には再現できず、はっきりとした原因はまだわかっていない。

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十角形形成の3つのシミュレーション Image credit:Sánchez-Lavega et al., Sci. Adv. , 2026

太陽の光を浴びてどう変化するのか?

 土星は太陽の周りを約29.5年かけて一周する。地軸が傾いているため、地球と同じように季節の変化があり、ひとつの季節が約7.5年も続く。

 現在、土星の南半球は長い冬の暗闇を抜け出し、春から夏へと向かっている。

 今後、南極に降り注ぐ太陽の光が増えるにつれて、この十角形がどう変化していくのかが大きな注目を集めている。

 サンチェス=ラベガ氏は、太陽の放射エネルギーが増えることで十角形が不安定になって崩れるのか、それとも安定して強固になるのかを見極める必要があると語っている。

 北極の六角形がどのようにできたのか、人類はその形成の瞬間を見逃してしまった。

 今回の十角形の発達は、現在進行形で観察することができる。巨大なガス惑星の謎にまた1つ、迫ることができるかもしれない。

References: NASA's Hubble Tracks New Decagon Encircling Saturn’s South Pole - NASA Science / Decagon wave emerges near Saturn’s south pole - UC Berkeley Space Sciences Lab

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この記事へのコメント 2件

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  1. デカゴンっていうんだw

    • 評価
  2. 本当に自然は美しいよね

    宇宙生命探査で、生物がいるのかいないのか文明は?というのは当然問われるけれど、生物がいなくても、まして文明がなくても、自然は完璧に美しくて価値がある

    • 評価

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