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大気圏落下が迫るスウィフト衛星を救うべく、52年前のロッキード元旅客機が出発!

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ロッキード社の旅客機最後の生き残り スターゲイザー Image credit:NASA/Ron Beard
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 NASAの観測衛星スウィフトが、2026年内に大気圏へ突入する危機に瀕している。

 軌道を押し上げることができれば観測ミッションをさらに数年延長できるとして、NASAはロボット宇宙機LINKをロケットで打ち上げ、宇宙空間でスウィフトに接近させて軌道を押し上げる史上初の救出作戦に踏み切った。

 そのLINKを積んだロケットを最適な位置まで運んで切り離す運び屋として抜擢されたのが、1981年に生産を終了したロッキード社の元旅客機だ。

 250機製造されたうちの1機が退役後にロケット発射母機へと改造され、スターゲイザーと名付けられた。

 製造から52年、250機のうち今も空を飛べるのはこの1機だけだ。2026年6月18日、スターゲイザーはロケットを抱えてバージニア州の基地を出発した。

参考文献:

大気圏へ落下する可能性の高いスウィフト衛星

 スウィフト衛星は2004年11月にアメリカ・イギリス・イタリアが共同開発し、ガンマ線バーストを観測するために打ち上げられた宇宙望遠鏡だ。

 ガンマ線バーストとは大質量の星が崩壊するときや中性子星同士が衝突するときに放たれる、宇宙で最も強力なエネルギー爆発現象で、スウィフトは21年間観測を続けてきた。

 太陽は約11年周期で活動が増減し、活動が極大になる時期には太陽風が強まって地球の上層大気が膨張する。

 膨張した大気はより高い高度まで広がるため、低軌道を周回するスウィフトにかかる空気抵抗が増大する。

 2024年に太陽活動がピークを迎えたことで軌道高度が予想以上の速さで低下し、打ち上げ時の約600kmから約400kmまで落ちた。

 スウィフトには自力で軌道を修正する推進システムが搭載されていないため、このまま放置すれば2026年内に大気圏へ突入する可能性が高い。

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大気圏突入の危機に瀕している観測衛星スウィフト Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center Conceptual Image Lab

ロボット宇宙機で衛星を押し上げる救出作戦

 NASAは2025年9月、米アリゾナ州のカタリスト・スペース・テクノロジーズ社に約47億円でスウィフトの救出を発注した。

 契約から9か月後、ロボット宇宙機「LINK」が完成した。

 3本のロボットアームでスウィフトを把持し、キセノンイオンエンジンを使って軌道を元の約600kmまで押し上げる計画だ。

 スウィフトが観測を再開できれば、2030年代まで運用を続けることができる。

 整備ができない衛星に対して後から軌道ブーストを行うのは史上初の試みで、成功すれば老朽化した他の衛星も救える可能性が高まる。

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カタリスト・スペース・テクノロジーズ社が開発したLINKロボット宇宙機は、2026年4月15日、メリーランド州にあるNASAゴダード宇宙飛行センターの振動試験室に搬入された Credit: NASA/Scott Wiessinger

LINKを載せたロケットを高高度に運ぶ機体が必要

  LINKはノースロップ・グラマン社が開発したペガサスXLロケットに搭載されて宇宙へ向かう

 だが、ペガサスXLは空中発射専用に設計されたロケットで、高度約1万2000mまで運び、空中で切り離されてからエンジンを点火する仕組みだ。

 この方式をとることで、地球のどの地上発射場からも直接到達できないスウィフトの特殊な軌道へ正確に投入できる。

 そのためにはペガサスXLを高高度に別の機体が運ぶ必要が出てくる。

ロッキード最後の生き残り旅客機が運び屋の役目を担う

 その役目を託されたのが、ロッキード社が製造したロッキードL-1011トライスターだ。

 このジェット旅客機は、1972年より運用が開始され、日本ではANAが21機を導入したことで知られており、ロッキード事件(田中角栄元首相が逮捕された航空機売り込みをめぐる贈収賄スキャンダル)の舞台となった機体としても知られる。

 1981年に製造が終了し、全250機が生産された。

 ANAは1995年に全機を退役させ、世界各国の航空会社でも順次引退が進んだ。

 最後まで空中給油機として使い続けたイギリス空軍も2014年に退役させ、ロッキード社はこれを最後に民間航空機市場から撤退した。 

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ロッキード L-1011 トライスター  Image by Istock / Bjoern Wylezich

 250機のうちの1機をアメリカの民間宇宙企業が1992年に購入し、ロケット運搬機として改造して1994年から運用を開始した。

 SFドラマ「スタートレック」に登場する宇宙船にちなんで「スターゲイザー」と名付けられ、現在はLINKを開発したノースロップ・グラマン社が所有・運用している。

 2021年に最後の打ち上げ任務を終えたあとも飛行可能な状態を維持していたため、今回のミッションに抜擢されたのだ。

 とはいえ、部品はすでに絶版状態で、整備できる技術者もほぼ存在しない。製造から52年、250機の中で今も空を飛べるのはこの1機だけだ。

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NASA’s Wallops Flight Facility

LINKを載せたロッキード社の最後の1機、宇宙へと旅立つ

 2026年6月18日、スターゲイザーはLINKを搭載したペガサスXLロケットを機体下部に抱えてバージニア州のNASAウォロップス飛行施設を出発した。

 その後、カリフォルニア州とハワイを経由して南太平洋のマーシャル諸島クワジャリン環礁へ向かった。

 6月27日、スターゲイザーは高度約1万2000mでペガサスXLロケットを切り離す。

 ペガサスXLロケットは5秒間自由落下したのちエンジンを点火し、約10分でLINKを軌道へ投入する。

 ロッキード社の旅客機の最後の生き残り、スターゲイザーがペガサスXLロケットを高高度に届け、ペガサスXLロケットはLINKを載せ、スウィフト衛星の軌道へ届ける。

 最年長のスターゲイザーが空の仲間を助けるために飛び立つとか、ロマンあふれる展開だ。

 ぜひ成功してほしい。その行方は情報が入り次第お伝えしていく。

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