この画像を大きなサイズで見る南極の氷の中に、宇宙で起きた星の爆発で飛び散った残骸が閉じ込められていた。
ドイツの研究チームが南極の氷を溶かして調べたところ、超新星爆発でしか作られない希少な鉄の同位体を発見した。
地球上には存在しないはずの物質が宇宙空間から降り注いでいたとみられ、氷の層をさかのぼるとその痕跡は8万年前にまで及んでいた。
この研究成果は『Physical Review Letters』誌(2026年5月13日付)に掲載された。
南極の氷は宇宙を閉じ込めたタイムカプセル
南極の氷床は、約3500万年前から降り積もった雪が層を重ねて形成された、地球最大の記録装置だ。
雪が積もるたびに、そのときの大気中に漂っていた粒子が一緒に閉じ込められ、長い年月をかけて圧縮されることで氷の層になる。
科学者たちは、南極の氷を円柱状に掘り出した氷床コアを分析することで、数百万年前の地球環境を読み解いてきた。
ところがこの氷の中から、まったく予想外のものが見つかった。地球上では作ることのできない、宇宙由来の物質だ。
ドイツのヘルムホルツ研究センター・ドレスデン=ロッセンドルフの核天体物理学者、ドミニク・コル博士が率いる研究チームは、欧州南極氷床掘削プロジェクト(EPICA)で採取された氷床コアを使い、約295kgの氷を丁寧に溶かして残留物を抽出した。
そこに含まれる原子を一つひとつ数えていくという気の遠くなるような作業の末に、チームはある物質の存在を確認した。
この画像を大きなサイズで見る超新星爆発でしか作られない鉄を氷の中から発見
チームが見つけたのは、鉄60(Iron60)と呼ばれる鉄の同位体だ。
同位体とは、同じ元素でも原子核の中の中性子の数が異なるもので、性質が少し違うものを指す。
鉄60は放射性を持ち、約260万年という半減期で自然に崩壊していく。半減期とは、その物質の量が半分に減るまでにかかる時間のことだ。
鉄60が特別な理由は、その作られ方にある。寿命を迎えた巨大な恒星が起こす超新星爆発のような極限状態でしか生成されない物質で、地球上では自然に作ることができない。
地球が誕生した45億年前に宇宙から取り込まれた鉄60があったとしても、半減期が約260万年しかないため、とっくの昔にすべて崩壊して消えている。
今の地球で鉄60が検出されたなら、それは最近になって宇宙から降り注いだものだということになる。
コル博士のチームが今回分析した氷床コアからは、宇宙線が大気と反応して生じるごくわずかな量を大きく超える鉄60が検出された。
宇宙線とは、宇宙空間から地球に降り注ぐ高エネルギーの粒子のことだ。
しかも2019年には、採取したばかりの南極の新雪からも鉄60が見つかっており、今この瞬間も宇宙から鉄60が降り続けていることを示している。
この画像を大きなサイズで見る南極の氷が示す太陽系8万年の旅の記録
研究チームは、鉄60は、現在太陽系が通過中の直径約30光年の「局所恒星間雲」のものではないかとみている。
太陽系は、4.4万から15万年前に局所恒星間雲に突入し、あと1万から2万年は滞在すると推測されている。
この雲は、ガスや塵、プラズマでできており、過去に起きた超新星爆発によって作られたと考えられている。
今回の氷床コア分析で、数万年前の氷に含まれる鉄60の濃度が、近年の雪に含まれる濃度よりも低いことが明らかとなった。
濃度が時代によって異なるということは、太陽系が局所恒星間雲の中を移動するにつれて、通過する領域の密度が変わってきたことを意味する。
最初は鉄60が少ない希薄な領域を通り、その後より密度の高い領域へと移動してきた流れが、氷の記録からはっきりと読み取れる。
氷床コアの記録は、太陽系がこの雲の中を少なくとも8万年にわたって旅してきた証拠となっている。
この画像を大きなサイズで見る南極の氷が明かした局所恒星間雲の内部構造
今回の研究は、南極の氷が宇宙の構造を解き明かす手がかりになることを示した。
氷床コアに刻まれた鉄60の濃度変化は、局所恒星間雲の内部構造をそのまま反映している。
地球上に存在する実際の物質から、宇宙空間の構造を読み解けるという、これまでにない発見だ。
局所恒星間雲の起源についてはまだ確実なことはわかっていないが、今回の結果は超新星爆発によって作られたという説と矛盾しない。
研究チームは「局所恒星間雲は、超新星爆発で生成された鉄60の宇宙的な保管場所だ」と述べている。
まとめ
この研究でわかったこと
- 南極の氷の中に、超新星爆発でしか作られない鉄60が閉じ込められていた
- この鉄60は宇宙空間から地球に降り注いだもので、その痕跡は8万年前にまで遡れる
- 太陽系は8万年以上前から星の残骸でできた局所恒星間雲の中を通過していた
まだわかっていないこと
- 局所恒星間雲がどのような超新星爆発によって作られたのか、起源はまだ確実にはわかっていない
- 太陽系が雲のどの位置を通過しているのか、またいつ雲を抜け出るのかも明らかになっていない
References: DOI: https://doi.org/10.1103/nxjq-jwgp / Stardust Trapped in Antarctic Ice Reveals Earth's Journey Through The Cosmos
















超低温だと、有機物だけじゃなく鉄も状態をキープできるってこと?
よう分からんけどすご。
>雪が積もるたびに、そのときの大気中に漂っていた粒子が一緒に閉じ込められ、長い年月をかけて圧縮されることで氷の層になる。
8万年前に降った雪の上にさらに雪が積もって、およそ8万年前に相当する部分から鉄60が検出されたらしい
ただし、現在の雪より鉄60の密度は低いので、8万年前の地球は今より鉄60が薄い場所にあったみたいだね
低温だからではなくて、対流せずに滞留する氷(水)の中だから酸化しづらく、状態がキープされる
状態をキープというか、南極だと雪と一緒に氷の中に閉じ込められるということだね
ほかの場所だと雨や風で吹き飛ばされて今頃は海の底にでもたまっているだろう
南極だと雪に付着した鉄はそのまま凍って圧縮されて氷になるし、氷になったらそこから動かない
さらに、毎年どれだけ氷ができたかがおおよそ推定できるから、何万年くらい前に地球に降り注いだかが推定できるし、そこからさらに地球からどれだけ離れた位置の星が超新星爆発したかも逆算できる
こういう情報が集まっていけば、地球の周りで過去にどれだけ超新星爆発が起こっていたのかなんてことも将来明らかにできる。それは太陽系が銀河をどのように移動してきたかを知る手段になる。
南極を調べることから宇宙を知れる。それはコペルニクスが地動説を唱えて以来の人類の夢だった、宇宙のダイナミックな変化の歴史を知ることにもつながるかもしれない。
皆さん、分かりやすく解説してくれてありがとうございます。
自然(とそれを探究する科学者)はやはり素晴らしいですね。
本当に勉強になります。
8万年前って宇宙的に言うと大分近い気がする
なんだか1歩間違えると超新星爆発に巻き込まれていた可能性もあるし宇宙は何が起こるか予想できない怖さがあると思い知らされたよ
半減期が260万年ってことは、その期間内に飛来できる距離で超新星爆発があったってこと?近過ぎて太陽系が存続の危機だった?
鉄 60 は新星爆発が作り出した『現在太陽系が通過中の直径約30光年の「局所恒星間雲」』由来ではないかと考えられていると記事中にはあります。 最近できた局所恒星間雲かどうかは触れられていないので、もしかするとこの恒星間雲がすごく古い(たとえば 50 億年とか)かもしれませんから、太陽系が危なかったかどうかは不明ですね。 8 万年前からこの恒星間雲の中に突っ込んでいるようであとどれくらいでぬけられるかも書いてない感じ。 恒星間雲のど真ん中通過中なのか端っこをかすめているかも書いてないです。 こういうのは書いてあることと書いてないことから読み取れることも難しいですよね
まあ8万年あれば銀河内でも1000回以上の超新星爆発が起こってるわけだし、近くであっても不思議はない
地球はたった260万年以内に爆発した超新星の残骸の中を移動してるってこと?
すっごいご近所さんにそんなのがあったなんて
当時メチャクチャ空が明るかっただろうな
見られなかったのが残念だ
ロマンに押しつぶされそう
海外のアイドルの話ではおまへん。 悪しからず
この雲の中にいるから人類は見つかってないのかもしれない