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1万4400年前のオオカミの胃からケブカサイの組織を発見。ゲノム解析で絶滅の原因を探る

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Image by Istock aleks1949
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 ケブカサイの組織が、シベリアの永久凍土から発見された1万4400年前のオオカミの胃の中から見つかった。

 この組織から全ゲノムを解読した結果、ケブカサイは絶滅の直前まで安定した個体数を維持していたことがわかった。

 絶滅の主な要因は、氷河期末期の急激な温暖化による環境の変化である可能性が極めて高いという。

 別の動物の胃の中から回収されたサンプルによって、絶滅した種の全ゲノムが解読されたのは世界で初めての例である。

オオカミの子の胃の中からケブカサイの組織を発見

 シベリア北東部のトゥマト村近郊では、2011年と2015年に、それぞれ1匹ずつ最終氷期のオオカミの子が発見されている。

 これらは姉妹(あるいは同じ群れの子)と考えられており、それぞれ「Tumat-1」、「Tumat-2」と名付けられた。

 永久凍土の中で保存されていた、これらの個体を詳しく調べたところ、2011年に発見された「Tumat-1」の胃の中から小さな肉の断片が見つかった。

 放射性炭素年代測定によると、見つかった組織は約1万4400年前のもので、オオカミの子が死ぬ直前に食べた最後の食事はケブカサイだったことが判明した。

 ケブカサイは約8700年前に絶滅したと考えられており、この標本は絶滅の数千年前という、種としては末期に近い時代の状態を伝える極めて貴重なサンプルとなった。

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ケブカサイの DNA が採取されたオオカミの子「Tumat-1」 Image credit:Mietje Germonpré

最終氷期を生きたケブカサイ

 ケブカサイは最終氷期(7万年前から1万年前まで)にユーラシア大陸に広く生息していた大型の哺乳類である。

 その名の通り、全身が厚い毛で覆われており、鼻の上には2本の大きな角を持っていた。

 体長は3mから4m、体重は2tにも達し、現在のシロサイに近い大きさだったと考えられている。

 寒冷な気候に適応したその姿は、フランスのショーヴェ洞窟(約3万2000年~3万7000年前)の壁画にも描かれており、当時の人間にとっても身近な存在であったことがうかがえる。

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世界文化遺産のショーヴェ洞窟に遺されたケブカサイを描いた洞窟壁画 public domain / Wikimedia

世界初となる胃の内容物からのゲノム解読

 ストックホルム大学とスウェーデン自然史博物館の共同研究施設である古ゲノミクスセンターの研究チームは、胃の中から回収された肉の組織サンプルから、遺伝情報を抽出することに成功した。

 古代のDNAは時間の経過とともに劣化しやすく、捕食者であるオオカミ自身のDNAも混ざっているため、解析は困難を極めたが、研究チームはこれを精密に読み取った。

 古ゲノミクスセンターのカミロ・チャコン=デュケ氏や、当時大学院生であったソルベイグ・グジョンスドッティル氏らは、ついにこの珍しい素材から、全ゲノム(その生物が持つすべての遺伝情報)の解読に成功した。

 別の動物の胃から回収した組織を用いた全ゲノムの解読は、過去に例がない。

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オオカミはシベリアの永久凍土によって驚くほど良好な状態で保存されていた。Image credit:Mietje Germonpré

ゲノムが示す絶滅寸前まで安定した個体数

 研究チームは、今回の標本のゲノムを、さらに古い時代の2つの個体(約1万8000年前と約4万9000年前のもの)と比較した。

 目的は、絶滅に向かう過程で遺伝的な多様性の低下や近親交配の影響が見られるかどうかを確認することであった。

 解析の結果、ケブカサイは絶滅直前まで遺伝的に健康であり、近親交配の兆候もほとんど見られなかった。

 また、数万年間にわたって遺伝的なパターンは安定しており、消滅の直前まで比較的大きな個体数を維持していたことがわかった。

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オオカミの子「Tumat-1」の胃から採取したケブカサイの組織。小さな切り傷はDNAサンプル採取によるものである Image credit:Love Dalén/Stockholm University

絶滅の要因はヒトの活動ではなかった

 今回の発見は、ケブカサイの絶滅に関する従来の考え方を修正するものである。

 これまでの定説では、ケブカサイやマンモスなどの大型哺乳類は、生息域に侵入してきた人間(ホモ・サピエンス)による過剰な狩猟によって絶滅したと考えられてきたのだ。

 しかし、研究チームが今回の標本を解析したところ、ケブカサイは人間と接触した直後から衰退したのではなく、人類がシベリアに到達してから約1万5000年もの間、個体数を減らすことなく安定して共存していたことが示された。

 この研究を率いた古ゲノミクスセンターのラヴ・ダレン教授は、絶滅の直接的な原因は人間による狩猟ではなく、最終氷期の終わりとともに訪れた急激な地球温暖化であった可能性が高いと結論づけている。

 気温上昇に伴う植生の変化などの環境悪化が、ケブカサイを短期間で追い詰めたと考えられる。

 この研究成果は、現代の絶滅危惧種の保護活動にも重要な知見を与えるものである。 

 この研究成果は『Genome Biology and Evolution』誌(2026年1月14日付)に掲載された。

References: Academic.oup.com / Eurekalert

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この記事へのコメント 11件

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  1. となると当時の人類側の状況の再考が必要ですね。人類の人口が圧迫するほど多くなかった、狩猟にそこまで依存してなかった、そもそもケブカサイを頻繁に狩猟できる能力がまだ無かった、とか。

    • +8
  2. それまで豊富に狩猟出来てた大型動物が居なくなり
    農耕採取に以降して行く人類とのつながりも分かりそうですね

    • +7
  3. 暑くて死んじゃったのか、食べるものがなくなって死んじゃったのか

    • 評価
  4. 胃の中の肉を消化し切ることなく死んだオオカミの子の死因は何だったんだろう

    • +5
    1. ねー
      クレバスみたいのに落ちてしまったとか?

      • +5
    2. 以前ここで紹介されてた個体と同じなら、雪崩れか土砂崩れに巣穴ごと巻き込まれてしまったらしい。南無

      • +4
  5. どうしても人間を原因にしたい人がいるから、今度は人間が増えすぎて縄張り追われたとか言い出す人が出てくると思う。

    • -1
    1. 人間による狩猟は絶滅の主因ではないとしても
      一因になった可能性は否定できないとは思う
      氷期・間氷期の気候変動だけならこれ以前にもあったはずだし

      • +1
  6. 動物壁画の”ケブカサイ”さん。
    「実際にはこんなに角が長くないだろけど、結構長かったんだろうな」
    と思って調べたら本当に長かった。格好良すぎるぜ!

    • +5
  7. 毛の生えたサイが居たんだね
    イノシシと近い感じになってる

    • +1

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