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こ、これは!?奇妙な大気を持つ卵型の太陽系外惑星をジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が発見

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Illustration: NASA, ESA, CSA, Ralf Crawford (STScI)
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 1990年代半ばに天文学者が初めて太陽系外惑星を発見して以来、現在までに6000個以上が確認されている。今回ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が観測したのは、天文学の常識を根底から覆す、とびきり奇妙な惑星だ。

 「PSR J2322-2650b」と名付けられたその太陽系外惑星は、木星ほどの質量を持ちながら、「パルサー」と呼ばれる死んだ星の周りを回っているのだが、その猛烈な重力によって無理やり引き伸ばされ、レモンや卵のような楕円形に変形しているのだ。

 さらに異様なのは大気組成だ。そこは炭素に支配された世界で、上空を漂う黒い煤の雲からは、きらめくダイヤモンドの雨が降り注いでいる可能性が高いという。

 「これはいったい?」と第一線の研究者たちでさえ頭を抱えるほど、既存の理論では説明がつかない謎の天体について迫ってみよう。

 この研究成果は『The Astrophysical Journal Letters』誌(2025年12月15日付)に掲載された。

過去に例を見ない「卵型」の惑星

 太陽系外惑星「PSR J2322-2650b」は、木星ほどの質量を持ちながら、パルサーと呼ばれる天体の周りを回っている。

 パルサーの正体は、太陽の10倍以上の質量を持つ巨大な星が寿命を迎え、超新星爆発を起こした後に残る「死んだ星の芯」だ。

 これは「中性子星」とも呼ばれ、太陽ほどの質量を持ちながら、直径わずか20kmにまで押しつぶされている超高密度の天体である。

 パルサーは、もともとの星が持っていた回転の勢いを保ったまま極端に小さく縮んだため、コマのように猛烈な速さで「自転」している。

 さらに、磁極からビーム(電磁波)を噴き出しており、自転に合わせてそのビームが宇宙空間をなぎ払うため、地球からは規則正しく点滅するパルス信号として観測される。これがパルサーの名前の由来だ。

 中でも、今回観測されたパルサーは「ブラックウィドウ・パルサー」という恐ろしい分類に属している。ブラックウィドウとはクロゴケグモのことだ。

 通常、ブラックウィドウ・パルサーは、近くにあるパートナーの星(伴星)に対して強烈な放射線や粒子ビームを浴びせかけ、その表面を少しずつ蒸発させて物質を剥ぎ取ってしまう。

 パートナーの身を削りながら存在する様子が、交尾後にオスを捕食する毒グモ、クロゴケグモに似ていることから名付けられた。

 今回、その猛烈な放射線を受けているパートナーは恒星ではなく、惑星「PSR J2322-2650b」である。

 PSR J2322-2650bは、親星であるパルサーからわずか約160万km(地球と太陽の距離の約100分の1)という至近距離にあり、わずか7.8時間で軌道を一周する。

 最も奇妙なのはその形状だ。親星であるパルサーのあまりにも強力な重力が引き起こす「潮汐力」によって、PSR J2322-2650bは球体ではなく、まるで卵やレモンのような楕円体に引き伸ばされている。

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太陽系外惑星「PSR J2322-2650b」のアーティストによる想像図。周回するはるかに重いパルサーの重力によって、木星質量の惑星は奇妙な卵型(レモン型)に引き伸ばされている。Image credit:NASA、ESA、CSA、Ralf Crawford (STScI)

親星が見えないからこそ、惑星が輝く

 このパルサーは「ミリ秒パルサー」と呼ばれ、1秒間に数百回という猛烈なスピードで自転しながら、ガンマ線などの高エネルギー粒子を放出している。

 しかし、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が得意とする「赤外線」はほとんど出していない。

 スタンフォード大学の博士課程で惑星の形状モデルなどを担当したマヤ・ベレズネイ氏は、この観測の幸運についてこう語る。

この連星がユニークなのは、親星(パルサー)に照らされた惑星を見ることはできるのに、親星自体は全く見えないという点です。

邪魔な光がないため、私たちは非常に綺麗なスペクトルを得ることができ、通常の系外惑星よりも詳細に研究できるのです(ベレズネイ氏)

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回転するパルサー。中央の球体は中性子星、曲線は磁力線、突き出た円錐は放射領域を表している。

謎に包まれた大気組成、ダイヤモンドの雨も

 この詳細なデータが得られたことで、逆に謎は深まった。

 カーネギー地球惑星研究所のピーター・ガオ氏は当時の衝撃をこう振り返る。

 「データを見た後の私たちの共通の反応は『一体これは何だ?』というものでした。予想とはあまりにもかけ離れていたのです」

 シカゴ大学のチームリーダー、マイケル・チャン氏によると、そこには水やメタンといった通常予想される分子ではなく、分子状炭素である炭素2や炭素3が発見されたという。

 この惑星は常に同じ面を親星(パルサー)に向けており、昼側の最高気温は摂氏約2040度、夜側でも摂氏約650度ある。

 通常、この温度なら炭素は酸素などと結びつくはずだ。炭素が単独で存在するということは、酸素や窒素が極端に少ないことを意味する。

 大気中には炭素の煤でできた雲が浮かび、それが惑星の深部で凝縮してダイヤモンドの雨となって降り注いでいる可能性が高い。

 これまで調査された約150の惑星の中で、このような大気を持つものは一つもなかった。

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パルサーを周回する太陽系外惑星「PSR J2322-2650b」 Image credit:NASA、ESA、CSA、Ralf Crawford (STScI)

形成の謎と新たなパズル

 なぜこのような惑星が生まれたのか。

 普通の惑星のように形成されたなら組成が違うはずだし、ブラックウィドウのように星の外側が剥ぎ取られたとしても、純粋な炭素ができるはずがない、とチャン氏は困惑する。

 スタンフォード大学のロジャー・ロマニ氏は一つの仮説を提示する。

伴星が冷えるにつれて、内部で炭素の結晶が上部に浮き上がり、ヘリウムに混ざり込んだのが今の姿なのかもしれません。

しかし、そうなると今度は酸素と窒素を排除する何かが起きたはずで、そこに謎が残ります(ロマニ氏)

 既知の理論では説明がつかないこの惑星は、天文学者たちにとって最高の挑戦状となったようだ。

 ロマニ氏はこう締めくくっている。

すべてが解明されていないというのは良いことです。この大気の奇妙さについてもっと学ぶことを楽しみにしています。追いかけるべきパズルがあるのは素晴らしいことです(ロマニ氏)

References: Science.nasa.gov / Uchicago.edu / Academic.oup.com

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