メインコンテンツにスキップ

AI生成の「フェイク強盗映像」で警察が出動、作った従業員が起訴される

記事の本文にスキップ

11件のコメントを見る

(著)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
Advertisement

 レストランの店内を写した防犯カメラの映像には、黒い服にマスク、青い手袋をした3人組がカウンター越しに金を要求する姿が映っていた。

 その画面を見た店のオーナーはすぐに通報。だが現場に駆けつけた警官が目にしたのは、いつも通り営業中の静かな店内だった。

 強盗も人質もどこにも存在しない。実はその「防犯カメラの映像」自体が、生成AIによって作られたフェイクだったのだ。

強盗発生!の通報を受けた警察が現場に急行した結果

 2025年12月15日の朝9時過ぎ、アメリカ・オハイオ州エリリアの警察署は、強盗事件が発生したとの通報を受けた。

 現場は「Rubin’s Restaurant / Arabica」という飲食店。通報したのはこの店のオーナーで、覆面をした3人組の男が店に押し入り、強盗を働いているというのだ。

今、店が強盗に遭っています。私はいま防犯カメラを見ているところです。たった今、店の厨房スタッフから写真が送られてきました。店内に閉じ込められていて、こうしている間にも強盗が行われているというんです

この画像を大きなサイズで見る
Rubin’s Restaurant / Arabica image credit: GoogleMap

 エリリア警察は通報の重大性を考慮して、レストラン周辺を封鎖するとともに、対応可能な警官すべてを現場に急行させた。

 だが彼らが駆けつけたところ、店内にも駐車場にも異常は見られず、レストランは通常通り営業しており、テーブルには客が座って食事を楽しんでいた。

 不審に思った警官が従業員の女性に尋ねたところ、強盗など起こっていないと、逆に不思議そうだった。

 警官のボディカムの映像がこちら。平和そのものの店内の様子と、怪訝そうな従業員のセリフが入っている。

BODY CAM: Elyria police officers respond to a fake robbery two employees reported using AI

 エリリア警察署のビル・ランツ警部は、その時の状況を次のように説明する。

オーナーは当時現場の店にいたわけではなかったので、正確な状況を把握できていませんでした。

しかし、スタッフから送られてきたという画像は、彼が普段見慣れている防犯カメラのモニター画面と同じように見えたんです。

それでオーナーは本当に強盗が起きていると思い、通報してました。この判断自体は、正しかったと言えるでしょう

AI生成の防犯カメラ映像を信じたオーナーが通報

 オーナーのもとに送られて来たという写真には、防犯カメラからの映像を写した画面らしきものが写っていたという。

 画面上には複数の場所やアングルの映像が写っていて、一番大きな画面には、カウンターの後ろに従業員たちがいるのが見える。

 そしてカウンターの反対側には、マスクと青い手袋を着け、黒い服を着た3人の男が立っていて、従業員に向かって「金を出せ!」と脅しているようだった。

(映像では)3人から4人の複数の犯人が店内にいて、黒い服を着て、マスクと手袋を見につけており、店で強盗をしようとしているように見えました

この画像を大きなサイズで見る
image created by ChatGPT

 だが、実際には強盗など起こっていない。調べを進めるうちに、その防犯カメラの映像は、店の従業員がChatGPTで生成した映像だったことが判明した。

 この「いたずら」に関与したのは、従業員のトッド・ダースト容疑者(45)とルイス・アセベド・ジュニア容疑者(40)と特定された。

 まずダースト容疑者が、ChatGPTを使って画像を生成。出来上がった「防犯カメラの映像が写ったモニター画面の写真」をアセベド容疑者に送信した。

 さらにアセベド容疑者がその画僧をオーナーに送信。受け取ったオーナーは店が実際に強盗に遭っていると思い込み、警察に通報する事態になったのだ。

 2人のうち、ダースト容疑者は店内にいたところを逮捕され、ロレイン郡刑務所に拘留されている。

 彼はスワッティング(虚偽の通報で警官を派遣させること)と公務執行妨害、および混乱誘発の容疑で起訴され、現在裁判を待っているところだ。

 だがアセベド容疑者のほうは、警官らが到着して従業員と話している隙に、現場から逃走した。

 彼の車は店の駐車場に停められたままになっており、おそらく徒歩でその場から離れたと見られている。

この画像を大きなサイズで見る

生成AIを使った悪ふざけが処罰の対象に

 今や誰でも、パソコンどころかスマホさえあれば、簡単にこういった偽の写真や映像が作れるようになってしまった。

 生成AIの性能は日々進化し続けており、中にはぱっと見では本物か偽物かの判断がつかないレベルのものまで登場している。

 エリリア警察署は次のような声明を発表し、生成AIが引き起こす混乱への警鐘を鳴らしている。

AIで生成された虚偽の情報や、捏造された緊急事態に関するSNSでの悪ふざけの流行は、決して無害な遊びではありません。れっきとした犯罪行為であり、現実世界に深刻な影響を及ぼすものです。

こうした虚偽の報告は、本当に対応が必要な緊急事案への対応を妨害し、人命を危険にさらし、公共の安全を損なう可能性があります。

州法に違反するこの種の行為に関与した者は、誰であれ逮捕され、最大限の処罰を受けることになります

 アセベド容疑者は現在も逃走中であり、18日になってもまだ身柄が拘束されたとのニュースは届いていないようだ。

追記(2025/12/19) 本文中の誤字「警笛」を「警鐘」に変更して再送します。

References: Two Elyria employees charged after false AI-generated robbery report

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 11件

コメントを書く

  1. 若気の至りかと思ったら結構おっちゃんじゃねぇのよ⋯

    • +9
  2. 全く笑えない
    第一アメリカは事件の多いので信じてしまうほうが普通だ
    こういう冗談はオフラインの自分だけで楽しむのがいいし
    そういう場合でもフェイクとか冗談ですと記載するべきだ
    仮にウィルスで流れても見た人が勘違いはしないけど
    まあいい気持はしないな

    • +5
  3. 小学生ならともかくええ歳した大人がしかも二人そろって何しとんねん

    • +12
  4. バカがバカやれるツールをなんの規制も無しにばらまいた罪はまあまあ重いと思う

    • +6
  5. 作るのはまだしも、それをオーナーに送るという奇行!

    • +12
    1. ネットでよく居る一線超えておいて「ネタなのにガチになるとか馬鹿だろ」と言うタイプなんだろね
      本人は笑えるジョークだとでも思ってたんでしょ

      • +2
  6. こういうのは今後の注意喚起(見せしめ)の意味も込めて厳重にお願い
    今や個人レベルでそれなりのことができる傍らいろんなことが追いついてない(リテラシーとか法とか)
    YoutubeショートとかTikTok界隈には視聴率稼ぎのための決定的瞬間的な動画が溢れているかも
    案の定AI生成動画

    • 評価
  7. 面白いと思ったんかな
    面白いと思ったんだろうな・・・

    • +1
  8. 製作者→同僚→オーナー か

    これならオーナーに送るよう同僚に促したとかでなければ製作者は災難だな
    製作者が送った相手は店内にいたようだから騙そうとしてる訳じゃ無さそうだし

    もちろん初めから2人で共謀してオーナー騙そうとしてたって可能性もあるけど

    • 評価
  9. 生成AIにハマって理性を失う連中が多すぎる
    脳になんらかの変形が起きてるんじゃないか

    • +1
  10. こういう馬鹿のせいで助かる命が助からなかったりするんだわ。本当AI規制しろ。一般人がホイホイ触れるようにするから問題起きるんだよ

    • 評価

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

サイエンス&テクノロジー

サイエンス&テクノロジーについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

料理・健康・暮らし

料理・健康・暮らしについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。