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2体の翼竜の幼体の化石を発見。1億5000万年前の嵐で命を落としたことが明らかに

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(著)

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嵐の中でもがく小さなプテロダクティルスの幼体の想像図  / Image credit:Artwork by Rudolf Hima.
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 ドイツ・バイエルン州にあるゾルンホーフェン石灰岩は、ジュラ紀後期の動植物化石が大量に発見されていることで知られている。

 ここで新たに発見された、約1億5000万年前の2体の翼竜の幼体の化石から、彼らが激しい嵐に巻き込まれて命を落としたことが化石の分析により明らかになった。

 骨の損傷の痕跡がその死因を物語っており、今回の研究は、なぜこの地層から幼体ばかりが多く化石として見つかるのかという長年の疑問にも新たな手がかりを与えている。

この研究成果は『Current Biology』誌(2025年8月6日付け)に発表された。

新たに発見された翼竜、プテロダクティルスの幼体2体

 イギリス・レスター大学の古生物学者ラブ・スミス氏らの研究チームは、ゾルンホーフェン石灰岩の採石場で、2体の翼竜の幼体の化石を相次いで発見した。

 いずれの化石も関節が連結したままで、死んだ当時の姿に近い完全な状態で保存されていた。

 研究者たちは、この2体に「ラッキー(Lucky)」と「ラッキーII(Lucky II)」と“幸運”を意味する名前を付けた。若くして命を落としてしまったものの、化石として現生まで残されたからだ。

 この2体は、プテロダクティルス属に分類される翼竜の幼体で、生後数日から数週間ほどの個体とみられる。

 プテロダクティルス属は、後期ジュラ紀に生息していた翼指竜亜目の翼竜で、18世紀に世界で初めて学名が与えられた種のひとつでもある。

 翼開長は20cm以下と非常に小さく、知られている中でも最も小型の翼竜の一つだ。

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飛行姿勢で再構成された2体のプテロダクティルス幼体の骨格図。骨折部位は赤で示されている。UV画像では上腕骨に明瞭な骨折が確認できる。下は大きさ比較用のハツカネズミのシルエット/ Image credit:University of Leicester

嵐による突風で翼を骨折し落下

 骨格は完全かつ関節が連結した状態で、死んだ当時からほとんど変化していないが、一点だけ異常があった。2体とも上腕骨に骨折が見られたのだ。

 ラッキーは左の翼、ラッキーIIは右の翼に斜めの骨折痕が確認された。

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「ラッキー」と名付けられたプテロダクティルスの幼体。UVライトで照らされた化石の主部と対部の両方に、繊細な骨格が残されており、骨折した翼の様子が詳細に確認できる。 / Image credit:University of Leicester

 この損傷は、岩などに衝突してできたものではなく、空中で嵐による突風を受けて翼がねじられるような力がかかった結果だと考えられている。

 特にラッキーIIの化石は、UVライト(紫外線)を当てたことで、保存されていた骨格が主部と対部の両面にくっきりと浮かび上がった。

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ラッキーIIは、UVライトを当てることで主部と部分的な対部が確認できた。もう1体と同様に翼に骨折があり、幼い翼竜たちがどのように怪我をしていたのかを知る貴重な手がかりとなった。 / Image credit:University of Leicester

ゾルンホーフェンで幼体の化石ばかりが発掘される理由

 ゾルンホーフェンでは、多くの翼竜の化石が発見されているが、そのほとんどは体の小さな個体、つまり幼体である。

 一方で、成体の完全な化石は非常に少なく、見つかったとしても頭骨や四肢などの断片に限られている。

 本来であれば、体が大きくて頑丈な成体の方が化石として残りやすいはずだ。

 ではなぜ、ゾルンホーフェンでは幼体ばかりが見つかるのか。この長年の疑問に対し、今回の研究は新たな答えを示している。

 研究チームによれば、嵐が襲った際、飛行能力の未熟な幼体は突風にあおられて墜落しやすく、命を落としやすかった。

 さらに、軽く小さい体はすぐに泥に沈み、保存されやすかった。

 一方、成体は嵐を飛び越える力があったうえ、死亡後も水面に浮いたまま長時間漂い、分解されてしまうため、化石として残ることは難しかったと考えられている。

 なお、「なぜ軽く小さい体が沈みやすいのか?」と疑問を持つかもしれない。

 翼竜の幼体は骨の構造がまだ未発達で、成体のような中空構造が備わっていないため、実際には体の密度が高く、浮かびにくかった可能性が高いという。

 また、体積も小さいため、腐敗ガスがたまる余地が少なく、死後すぐに沈みやすかったと考えられている。こうした特徴が、結果として化石としての保存率を高める要因になった。

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(A)通常の環境では、翼竜が化石として残ることはほとんどない。特に幼体は痕跡すら残らず、大型個体も骨の一部がラグーンの底に沈むだけだった。
(B)嵐が発生すると、強風と波によって小型幼体の翼竜の死骸が深い水域へと流され、酸素の乏しい水と混ざることで、海洋生物の大量死が起きる。この環境が死骸の保存に適した状態をつくった。
(C)その後、嵐によって運ばれた石灰質の泥が遺体を素早く覆い、軟組織の分解を防いだ。これらの特異な条件が重なったことで、化石が非常に良好な状態で保存されている。/ Image credit:University of Leicester

嵐が“化石になる命”を選別していた

 ゾルンホーフェンの翼竜たちは、必ずしもこのラグーンに生息していたわけではない。多くの個体は周囲の島々で暮らしており、嵐によって空高く吹き上げられ、海上に流されて墜落したと見られている。

 研究チームのラブ・スミス氏はこう語る。

長年、ゾルンホーフェンには小型の翼竜しかいなかったと考えられてきましたが、それは保存の偏りによる見かけの事実にすぎません。

実際には、未熟な幼体が嵐で命を落とし、偶然にも化石として残ったのです

 共著者のデイヴィッド・アンウィン博士もこう語る。

最初に1体目を見つけたときは偶然かと思いましたが、2体目を発見したことで、これは繰り返された現象だと確信しました

UVライトで化石を照らしたとき、まるで岩から浮かび上がってきたかのように見え、心が震えました

追記(2025/09/08)

幼体の化石が成体よりも保存されやすい理由について、本文中に補足説明を追記しました。

References: CELL / Eurekalert

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この記事へのコメント 10件

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  1. >軽く小さい体はすぐに泥に沈み、保存されやすかった
    >成体は嵐を飛び越える力があったうえ、
    >死亡後も水面に浮いたまま長時間漂い、分解されてしまう

    このあたりは何か釈然としない
    軽くて小さい方が浮きやすそうだけどな

    • 評価
    1. 実験してみないと断定はできないけどね。 翼竜だと翼を構成する皮膜があるから、大きな皮膜がウキの役割を果たすのかも(生物だから雨水をはじくよう毛が生えてると、その細かい毛が水面で水を反発して大きなフロートになるかもしれない、かと)

      • 評価
    2. 幼体の化石が沢山残っていることからの推理なんだよね

      • -1
  2. ケツアルクアトルの様な巨大翼竜が飛ぶ姿が見てみたいなぁ。
    アズダルコ科の巨大翼竜は数種類見つかっているしね。
    プテロダクティルスやランフォリンクスの様な小型翼竜は
    いかにも飛びそうだけど、大型種は翼長12mだものねぇ。
    本当に飛べたのか、翼竜ってワクワクするね。

    • +8
  3. 貴重な化石として発見できた人類からしたら確かに”ラッキー”ではあるけれど
    そんな死に方をした可能性のある翼竜ちゃんたちは全然”ラッキー”ではない件
    命名ってむつかしい!

    • +3
  4. ハンググライダーで、垂直離陸した人の映像見てるので(今もある)飛び立つのは不可能ではないし、羽ばたけない生き物が飛べないってこともないと思います。

    • 評価
  5. 翼竜は小さい幼体も飛んでいたというのがこれでわかるね。

    • +1
    1. 嵐で吹き飛ばされた可能性もあるかも?
      どちらにせよ子どものうちに親と離れて死んでいく気持ちを想像して涙出てくる。

      • +3
  6. 1億5000万年前の、ある嵐の日の出来事が推測できてしまうなんて凄いなー

    • +2

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