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カカオのDNAを解読 微生物がチョコレートの風味を作り出していた

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(著)

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Photo by:iStock
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 これまで、チョコレートやココアパウダーの味は、使用されるカカオが育った産地によって決まると考えられてきた。

 その仮説を確かめるため、国際研究チームはコロンビアの三つの農園で発酵中のカカオ豆を採取し、DNA解析を行った。

 すると、チョコレートの風味には、土壌に存在する微生物群が大きく関わっていることが明らかになった。

 カカオ豆は収穫後、自然発酵によって独特の風味を得るが、その発酵の過程で働く微生物の種類が、味に決定的な違いをもたらしていたのである。

 研究チームはさらに、この微生物群を実験室で人工的に再現し、風味豊かなチョコレートの味をつくり出すことにも成功したという。

 この研究成果は『Nature Microbiology』誌(2025年8月18日付)に掲載された。

カカオ豆のDNAを解析、隠れた主役は微生物

 今回の研究が行われたのは、コロンビア(南米)にあるサンタンデール県、アンティオキア県、ウイラ県という三つのカカオ生産地だ。

 この地域は小規模農園によるカカオ栽培が盛んで、それぞれ風味の異なるチョコレートが作られている。

 従来、こうした風味の違いは、気候や土壌、栽培方法など地理的な要因によると考えられてきた。

 それが本当なのかを確かめるため、研究チームは別の視点からアプローチした。

 カカオ豆が発酵する過程に注目し、そこに関与する微生物、具体的には細菌やカビ類がどのように風味に影響を与えるのかを調べたのである。

 彼らは、発酵中のカカオ豆からDNAを抽出・解析し、どの農園にどんな微生物が存在しているのかを明らかにした。

 そして、味覚の専門家たちによるブラインドテストの結果、アンティオキア県の豆が最も風味豊かであると判定された。

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微生物を再構成して美味しいチョコレートを実験室で再現

 研究チームは、アンティオキア県で確認された微生物群を実験室内で人工的に再構築した。

 その微生物ミックスを使ってカカオ豆を発酵させたところ、プロのテイスターたちが「高品質なチョコレートの風味が再現されている」と評価する味わいが得られたという。

 この研究を主導した、イギリスのノッティンガム大学に所属する国際研究員デイビッド・ゴパルチャン氏は「微生物を入れ替えるだけで、地域ごとの味の違いを再現できた」と語り、「これは、何世紀も続いてきたカカオ発酵のプロセスをハッキングするようなものだ」と表現している。

 今回の研究は、カカオ豆そのものを人工的に作ったわけではなく、発酵に必要な微生物だけを再現し、その働きをコントロールすることで、チョコレートの風味を自在に調整できる点が特徴だ。

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image credit:unsplash

実験室でのチョコレートづくりは以前から模索されていた

 実験室でチョコレートを作る試みは、実はこれが初めてではない。

 2021年には、スイスのチューリッヒ応用科学大学の研究チームが、カカオ細胞をバイオリアクター(生体反応装置)で培養し、カカオ豆を使わずにチョコレートを生産する実験に成功している。

 この方法も味の面では一定の評価を得たが、コスト面などの課題があった。

 さらに近年では、細胞農業(cellular agriculture)と呼ばれる分野で、植物や動物の細胞を培養して食品を生産する技術が注目されており、一部のスタートアップ企業がカカオ成分を実験室で育てるプロジェクトにも取り組んでいる。

 一方で今回の研究は、既存の農業や発酵の工程を活かしながら、科学の力でチョコレートの品質を高めようとするものであり、これまでとは異なるアプローチと言える。

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image credit:Pixabay

微生物とDNA解析で変わるチョコレートの未来

 チョコレートづくりには、農業や発酵、微生物の働き、さらには遺伝子解析まで、さまざまな分野の知識と技術が関わっている。

 私たちが何気なく食べているチョコレートには、そんな複雑で奥深い世界が詰まっているのだ。

 チョコレートやココアパウダーの風味づくりは、これまで産地や職人の感覚と経験に頼る部分が大きかった。

 しかし、風味を生み出す微生物群を科学的に再現できるようになれば、産地に依存せず、安定した品質のチョコレートを作る道が開けるかもしれない。

References: Nature / Scimex

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この記事へのコメント 16件

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  1.  発酵であの風味ができているってのは研究者と同じように思っていました。 たぶんコーヒーも発酵工程があって同じような感じではないかと。 ここで応用を考えるとカカオの不作対応というかたとえば大豆とか他のマメや種子でチョコレートのような、あわよくば今のチョコレートよりもおいしいものが作れないかというところ。 まぁ大豆を発酵させると納豆臭がしそうなので別のマメや穀類がいいんじゃないかとは思いますけど……。 
     肉も熟成の過程で風味ができるので牛肉の菌をつけると豚肉が牛肉っぽくなるという記事を読んだことがあります。 意外と熟成や発酵過程を経るものって菌や酵素などが風味を作ってそうで料理の未来に期待してます←私は食いしん坊w

    • +14
    1. ピーナッツやピスタチオ、カシューナッツなどなど、、、他のナッツでチョコが作れるとなると夢が広がるな

      • +9
      1. 発酵でアレルギー無しのカシューナッツとか、アーモンドとか出来ないかな?

        • 評価
  2. カカオ豆が高騰してるから早く市場に出て欲しい

    • +11
  3. 大豆レシチンとココナッツオイルで完璧なチョコレートが出来るって事?
    風味の点で完全に劣る代替え品でしかなかったorカサマシの材料が取って代わるね
    世界的な品薄による高騰が無くなる可能性だね

    • +5
  4. 確か地面に埋めて発酵させるんだっけ?
    通常はカカオ産地で埋めてるだろうからこれから別の国や地域まで運んで埋めて今までにない風味のチョコができるようになったりするのかしら。

    • +6
  5. むしろ、発酵の過程がある食品なのに、今まで微生物の影響が大きいこと分かってなかったってこと?

    日本が逆に変なのか?どうなんだ?発酵食品とか使う微生物の中身メーカーごとで違ったりするやん。それが普通だと思ってた。

    • +5
  6. 発酵処理してるからね
    風味の違いは細菌由来

    • +6
  7. 素のカカオニブの状態(まだただの発酵豆)の状態では腐った納豆みたいな臭いなんだよね
    その後焙煎したり砕いて擂って擂って擂りまくって練って練って練って熱して冷やしてまた熱して練って練ってとやるうちに臭みが抜けてなめらかなペーストになるんだって
    海外チョコとかだと若干ムッとくるよく言えば官能的な香り悪く言えば腐臭があるけどその辺の処理の仕方や程度が日本と違うからみたい

    • +7
  8. ヒマワリチョコレートの話をGrokとしてたんだけど、風味もともかく、カカオマスの脂分プラス、発酵できるワタ?の部分がある果物となるとカカオになるんだって
    南米にも脂が取れてかつ子房部分が当分のある果物があるけど、それは生産量とかチョコレートにする工程の投資で市販品になるには相当の投資がいるみたい。
    早く国産ひまわりで大量のチョコレートができる未来が来てほしい

    • +2
  9. カカオの実がカラスウリとかのウリの実に似てるので誰か実験してみて欲しい
    成功したら雑草がチョコになるよ~

    • +2
  10. 【チョコレートに含まれるカフェインは、その原料であるカカオマスに由来します。カカオマスが多いほど、カフェインの量も多くなります。】
    他の豆からチョコレートを作るとしたら、上手い事量を調整してカフェインも加えないと同じ味わい(?)にはならないと予想する。
    たとえば、デカフェと普通のコーヒーが同じ味わいにならないように。

    • 評価
    1. コーヒーのカフェインレスやデカフェは、カフェインを抜く工程が追加されているから風味も抜けてしまうんだよ
      遺伝子組み換えや育種というのもあるが、実用化されていない
      育種によるものは、カフェインレスという面では成功しているが、カフェインになる前工程のテオブロミンが多くなるので毒性が気になる所

      • +1
  11. そりゃ発酵なんだから当たり前じゃ・・・

    • 評価
  12. 非常に興味深い記事でした。お酒の風味が酵母の種類に依存していることは知っていましたが,チョコの風味も地域や品種ではなく,酵母等の発酵によるものとは驚きでした。
    最近,天候不順による病害の発生でカカオの生産量が激減しているので,「高品質」なチョコではなく,安価な普通のチョコを沢山食べたいと願っています。
    対応策として,以下の3通りが考えられます。
    ①安全な農薬を使ってカカオ病害の徹底防除を行なう。
    ②コストと時間を度外視すれば,記事にあるようなカカオ細胞の培養や「細胞農業」等も考えられますが,かなり困難。
    ③カカオの代替品を安価な大豆や種子等から作り,各種の有用成分を加え,人工香料で風味をつけ,舌触りを限りなく高級チョコレートに近づける。驚くほど本物に近い「かにかま」を作った日本の食品技術を持ってすれば,来年にでも実用可能なことは間違いなしです。

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