メインコンテンツにスキップ

宇宙で酸素をつくる新技術、鍵は身近な「磁石」にあった

記事の本文にスキップ

7件のコメントを見る

(著)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
image credit:Pixabay
Advertisement

 人類が宇宙に長く滞在するために欠かせないもののひとつが「酸素」だ。呼吸はもちろん、燃料や生命維持システムにも必要になる。

 だが宇宙では酸素がほとんど存在していないため、自分たちでつくり出さなければならないが、しかし重力がほとんどない宇宙では、地球と同じやり方で酸素をつくることができない。

 アメリカ・ジョージア工科大学の研究チームは、意外な解決策を見つけた。それは特別な機械ではなく、身近にある「磁石」だ。

 この研究は『Nature Chemistry』誌(2025年8月18日付)に掲載された。

宇宙で酸素をつくるのはなぜ難しい?

 人間が呼吸するために必要な酸素は、水から取り出すことができる。

 「電気分解」という方法を使えば、水に電極を差し込み電流を流すことで、水分子が水素と酸素に分かれ、それぞれ気泡となって電極に現れる。

 地球では、この気泡が水より軽いため自然上昇し、簡単に集めることができる。

 ところが宇宙では話が違う。無重力の環境では「上」も「下」も存在しないため、気泡は水中にとどまったままで浮き上がってこない。

 そのため現在の宇宙船では、遠心分離機を使って人工的に重力を発生させ、気泡を分離する方法が取られている。

 だがこの方法には欠点がある。装置が大きく、エネルギー消費も多くなるのだ。

この画像を大きなサイズで見る
国際宇宙ステーションの宇宙飛行士は、水を水素と酸素に分解する電気分解によって酸素を得ている / Image credit:NASA

市販のネオジム磁石が酸素生成を効率化

 ジョージア工科大学の研究チームは、複雑な機械に頼る代わりに、市販のネオジム磁石を使った。ネオジム磁石は非常に強力な永久磁石で、手のひらサイズのものでも強い磁力を持つ。

 チームが注目したのは「反磁性」と呼ばれる現象だ。

 これは物質が外部の磁場を受けたとき、わずかに反発するように振る舞う性質である。

 水や酸素の気泡は反磁性を持っており、この特性を利用すれば、磁石で気泡を好きな方向に動かすことができるという。

 さらに電気分解中には水中に電流が流れるが、これと磁場の相互作用によって気泡が回転するように動くことがわかった。

 この動きは、機械的に発生させる回転運動と同じような効果を持ち、気泡を効率よく集めることが可能になる。

この画像を大きなサイズで見る
ネオジム磁石 public domain/wikimedia

実験で実証、酸素生成量は2.4倍に

 この新しいシステムは、ドイツ・ブレーメン大学の応用宇宙技術・微小重力センター(ZARM)にある146メートルの落下塔を使って実験された。

 この塔は物体を落下させることで約9.3秒間の微小重力状態を再現できる特別な施設である。

 実験では、ネオジム磁石を組み込んだ装置を使ったところ、従来の方法に比べて酸素の生成量がなんと240%も増加した。

 これは、遠心分離機を使わずに効率よく酸素を取り出す新しい方法として大きな前進である。

 研究を率いたアルバロ・ロメロ・カルボ助教授は、「宇宙で液体から気体を取り出すのは、地球で炭酸飲料の缶を開けるような簡単な話ではありません」と語る。

この画像を大きなサイズで見る
酸素と水素の泡が電極から磁石(左側と右側)に向かって流れ出ていく様子、磁石は微小重力下での酸素生成をはるかに効率的にする / Image credit:Ö. Akay et al. Nature Chemistry 2025 / Georgia Institute of Technology

 浮力のない環境では気泡が分離しにくく、それが酸素生成装置の設計において致命的な問題になっていたのだ。

火星ミッションへの応用も視野に

 この研究成果は、将来的な火星探査ミッションでも活用される可能性がある。

 ロメロ・カルボ氏は、今回の成果をもとに「磁気流体力学(マグネトハイドロダイナミクス)」を活用した新たな酸素生成システムの開発に取り組んでおり、すでに新たな研究資金も獲得している。

 人類が地球を飛び出し、宇宙空間や火星で生活する時代が現実に近づく中、生命維持に不可欠な酸素をどう供給するかという課題は避けて通れない。

 複雑な機械よりも、身近な磁石によって問題を解決するという発想は、宇宙開発の常識を覆す可能性を秘めている。

References: NASA / Nature / Gatech.edu

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 7件

コメントを書く

    1. オキシジェンはデストロイヤーしないですよ。

      • 評価
  1. モーターのように動く部分がないから故障の心配がなさそうなのがいいね
    ネオジム磁石は特に熱に弱いので50℃以下で使うことが勧められているそう
    銀色をしているのはニッケルメッキで中身は粉末を固めたもの
    サビやすくて衝撃にも弱いそうなので、そういったことにも配慮が必要です
    出来立ての磁石一般は磁力を持っておらず、後から強力な電磁石で磁化させます
    そのため、逆向きの磁力に弱いのは磁石共通のようです
    今回のような使い方ならモーターで使うときのような心配は必要なさそうです

    • +2
  2. なんかやたらと記事が崩れてるんだけどうちだけ?

    火星ミッションへの応用も視野に の節が二回でてくるし、『この動きは、機械的に発生させる回転運動と同じような効果を持ち、気泡を効率よく集めることが可能になる。ネオジム磁石』ていう謎の尻切れトンボな文章が割り込んでる。

    • -3
  3. 液体酸素が磁石に吸い寄せられてる映像は見たことあるけど、あれか。目の付け所が素晴らしいですね。

    • +4
  4. アイディア自体は誰が思いついてもおかしくないものってのが面白い
    一方鉛筆を使ったみたいな

    • +1

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

サイエンス&テクノロジー

サイエンス&テクノロジーについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

自然・廃墟・宇宙

自然・廃墟・宇宙についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。