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鳥類の「性転換」は意外と多い。オーストラリアの野鳥調査で判明

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(著) (編集)

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コセイガイインコ Photo by:iStock
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 オーストラリアで行われた約500羽の野鳥調査で、思った以上に多くの個体が「性転換」をしていたことが明らかになった。

 ここで言う性転換とは、遺伝子上の性別とは異なる外見的特徴や生殖器を持つ状態を指す。調査対象となった鳥のうち、全体の約6%にそのような例が確認されたという。

 サンシャイン・コースト大学を中心とする研究チームの今回の発見は、野生の鳥における性のあり方が、これまで考えられていたよりもはるかに柔軟であることを示している。

 それだけでなく、絶滅危惧種の保全や鳥類研究の手法にまで大きな影響を与える可能性がある。

 この研究は『Biology Letters』(2025年8月13日付)に掲載された。

「見た目」だけでは判断できない鳥の性別

 今回の研究では、オーストラリア、サンシャイン・コースト大学をはじめとする鳥類学者チームが、クイーンズランド州の野生動物病院に運ばれ、病気や怪我で自然死、または安楽死した鳥、500羽を対象に性転換の発生率を調査した。

 対象となった種は同地域でよく見られる5種、カササギフエガラス(Australian magpie)、ワライカワセミ(Laughing kookaburra)、レンジャクバト(Crested pigeon)、ゴシキセイガイインコ(Rainbow lorikeet)、コセイガイインコ(Scaly-breasted lorikeet)である。

 研究チームは、各鳥の生殖器を解剖で確認すると同時に、DNAを調べて遺伝的な性別を特定した。

 その結果、最大6%の個体が「性転換」していたことがわかった。つまり、性染色体はメスなのにオスの生殖器を持っていたり、その逆であったりしたのだ。

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ゴシキセイガイインコ Photo by:iStock

性転換の大半はメスからオスへ

 ただし、性転換した鳥の多くは、「遺伝的にはメス」なのに、「オスの生殖器」を持っていた。

 研究チームのドミニク・ポトヴィン准教授は、「性転換が見られた鳥の92%が、遺伝的にはメスであるにもかかわらず、オスの生殖器を持っていた」と述べている。

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レンジャクバト Photo by:iStock

メス化したワライカワセミ、卵を産んでいた

 また、遺伝的にはオスであるワライカワセミの個体に、発達した卵胞と拡張した卵管が確認されたことに驚いたという。これは、実際に卵を産んだばかりであることを示している。

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ワライカワセミ image credit:Pixabay

性転換は魚や爬虫類だけではない

 自然界では、性別が変化する現象は決して珍しくない

 魚類や両生類、爬虫類、さらには一部の軟体動物などでは、環境の影響によって性別が決まる例が多く知られている。たとえば、卵が育つ温度によってオスかメスかが決まる種もある。

 一方で、鳥類や哺乳類は、性別が厳密に遺伝的に決定されていると考えられてきた。人間ではXとYの性染色体が性を決めるが、鳥類ではZとWという異なる染色体が用いられ、オスはZZ、メスはZWである。

 本来、こうした遺伝的な性別は胚の発生後に変わることはないとされてきた。

 ところが今回の研究では、そうした遺伝的設計図に基づく性の発現が、何らかの理由で途中から別の方向へ進んでしまうことがあると示唆された。

 遺伝子経路の異常や、逆の性を抑制する働きがうまく機能しないことで、本来の性別とは異なる特徴が現れる場合があるという。

 たとえば、遺伝的にはメスでありながら、オスの生殖器を持つ個体が確認されている。また、精巣と卵巣の両方の性質を併せ持つ「卵精巣(ovotestes)」が形成されることもある。

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カササギフエガラス Photo by:iStock

今後の鳥の保全活動や研究への影響

 この研究の共著者であるサンシャイン・コースト大学のドミニク・ポトヴィン准教授は、「性転換がなぜ起こるかを理解することは、保全活動や鳥類研究の精度向上に不可欠」と語る。

 これまで鳥の性別は、遺伝子マーカー・羽の色・行動といったもので判定されてきた。だが今回、性転換が普通に起きていることが判明したことで、従来の判定法では正確さに問題があることが明らかになった。

 論文の筆頭著者であるサンシャイン・コースト大学のクランシー・ホール博士は、「血液や羽のDNAだけで性別を判定すると、最大6%は間違える恐れがあります」と指摘する。

 そうした性転換個体は、野生における繁殖率に影響する可能性もある。

 「これにより性比の偏り・個体数の減少・配偶者選好の変化、さらには個体群の衰退につながる可能性もあります」とホール博士。

 鳥の性別の見誤りは、他のストレス要因と組み合わさることで保全活動を脅かす可能性すらあるという。

 ただし、どのような時に性転換が起きるのか原因はまだわかっておらず、さらなる研究が必要であるとのことだ。

References: Royalsocietypublishing / ‘Sex reversal’ might be more common in birds than we thought

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この記事へのコメント 21件

コメントを書く

  1. 鳥の生物の見誤り→鳥の性別の…ですね

    脊椎動物でも、魚、両生類、爬虫類ときて、鳥類も性転換があるのか

    こうなると、哺乳類はなぜ性転換が無いのか、まだ見つかってないのか気になる
    案外、遺伝的に気ままっていても、お腹の中で性転換してたりする場合もあるのかな

    • +2
  2. 鳥類もなのかー
    研究が進めば哺乳類でも見つかるのだろうか
    (あるいはそのせいで絶滅した種もいる、とか)

    • +3
  3. 攪乱物質による汚染?
    あるいは恐竜の子孫は性転換しやすい(外性器の形状 総排泄穴などから容易などで)
    つまり単純に鳥類は性差の壁が低いのかも
    まあ魚のようにボスがメスになるわけでは無さそう

    • +5
  4. 6%は多いな…。
    人間だと、性分化異常は2,000人とか5,000人に1人ぐらいの発生率と言われているけど。

    XX・XY型かつY顕性(Y染色体が1つでもあればオス・無ければメス)のヒトと違って、
    鳥の性染色体はZZ・ZW型(ホ.モがオ雄・ヘテロが雌)で
    W顕性かZ量依存か(あるいは双方の要素が関与か)は未詳だっけ?

    動物の分類は、伝統的には「爬虫類」「鳥類」がまず大きな区分だけど、
    進化的には「鱗竜類(ヘビ・トカゲなど)」「主竜類(ワニ・恐竜・鳥など)」が分け目らしいね。
    そこらへんの、爬虫類的な遺伝子型・表現型の性分化流動性も持っているんだろうか??

    • +9
  5. 体内で一定期間を育てる機能が必要だから哺乳類では難しいんだろうね
    変異混在はあってもエラーにしかならないんだろう

    • +7
  6. 「性」に対する性差(♂♀)とは
    動物にとって実はそれほど重要なものでは無いのでは?
    (割と普通にヤッてるらしい ♂x♂ ♀x♀ カエルや虫でさえも)
    求愛行動や生殖行為が本能に因るものでは無く
    「好き」という刹那的な感情のみで行動しているように見える

    • +3
    1. ovotestes…アルファオメガバースの造語だとばかり思っていたが実在したんか

      • 評価
  7. 意味がわからん?

    生まれたあとに男性器や女性器が生えてきたということか?
    それとももともと両方もっていたということか?

    • -1
    1. 鳥類は、たいていの種は「生えて」ないよ。
      総排泄口を擦り合わせて交尾する。
      だから、ヒヨコの雌雄鑑別が資格になるくらい難しいんだよ。
      (よく見ると一応、肛門の中に痕跡器官な小突起がありはする。)
      例外的に、水鳥などは水中に散らばらないように、挿入タイプの交尾方式をとる。

      内性器は、オスは左右に精巣が発達するが、
      メスでは、多くの種は左側のみ卵巣が発達し、右側は退化する。
      (体内スペースの問題・飛ぶための軽量化・エネルギー集約等で一本化されたと思われる。)
      メスがオス化する主なパターンでは、何らかの原因(損傷、ホルモン異常等)で左側の卵巣が本来の機能を発揮せず退縮し、本来は使われないはずの右側が精巣化してくるそうだ。

      • +22
  8. うちのインコも元メスだったりするのかな!?

    • +5
  9. ニワトリを長年飼ってる人から聞いたんだけど
    「卵を産まなくなってトサカが生えてくる雌鶏は何度か見かけたが、
    逆に卵を産むようになった雄鶏は残念ながら見たことがない」との事だった

    • +15
    1. 記事本文でも、メス⇒オス のパターンが圧倒的多数のようだけど、
      ただ、ここでいう「性転換」は
      「生まれた時の性徴とは逆の性徴が途中から現れる」のは稀なパターンで、
      「最初から、DNAの遺伝型と、実際の性器形成の表現型とが異なって出生」を主に指している。

      普通に雌ヒヨコで生まれて卵を産んでいるように見える“雌鶏”でも、
      DNAを調べたらオス型だった、という個体が混じっているかも知れない。

      • +4
  10. 性別変えても同族から変だと思われないなら
    幸せだね

    • +2
  11. 同性愛者のペンギンが時々話しに上がるけどそのうちメス化するんだろうか?

    • +4
  12. 完全にメスになる自然界の性転換と見てくれを誤魔化すだけの人間のインチキ性転換では次元が違うので比べること自体愚の骨頂

    • -4
    1. ヒトでは、どちらかというと「性分化疾患」の部類だね。

      女子スポーツの出場資格や、原発性無月経・シャセイ不全・結婚後の不妊検査で発覚して問題になったりする。
      思春期の第二次性徴期になって、出生時の第一次性徴とは逆の性徴が徐々に出現してくる“性転換”パターンも、中にはある。

      • +6
    2. 「ふたなり」という言葉が、既に平安時代の書物にあるよね
      新聞記事でも、「体が変わり、いきなり月経が始まった」本人の苦しみを読んだ
      精神面でも、何か公的な救済があるといいんだけど

      • 評価
  13. メス化したオスが遺伝上はオスのままなのに
    卵を産む、というのは凄いねぇ、、、
    人間もいずれY染色体は劣化コピーで消滅する、
    と言われているが、トゲネズミ種の中には
    すでにY染色体を失っている種も有るそうだね。
    世の中分からん事ばかりだね。

    • +5
  14. 主の保存としては実に合理的でかつ驚くべきメカニズム。
    野生化における環境ではむしろ珍しい事ではないと捉えるべきなのか。
    やはり絶滅の危険性の低い個体数の多い生物ほどその機能保持率は低くなっていくのかな?
    或いは複雑性を持つ生物ほどその機能を有す事が難しくなるのか。

    • +1

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