メインコンテンツにスキップ

希少なモウコノウマの子馬、育児放棄されるも、子を失ったばかりの別種の馬が迎え入れる

記事の本文にスキップ

18件のコメントを見る

(著)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
モウコノウマの赤ちゃんと育ての親となったメス馬/ Image credit:Minnesota Zoo
Advertisement

 アメリカ・ミネソタ州の動物園の「アジア野生馬種保存プログラム(SSP)」により、希少なモウコノウマの赤ちゃん「マラット」が誕生した。

 だが、数日後に体調を崩し、検査と治療のため母馬と離れたことが原因で、育児放棄されてしまう。

 そこで迎えられたのが、自分の子を亡くしたばかりのアメリカ原産のメスの馬だった。

 種も性質も異なる2頭だったが、実の母と子のような強い絆で結ばれていった。

希少なモウコノウマが誕生するも、母親と放されたことで育児放棄

 2025年5月17日、ミネソタ州のミネソタ動物園で、モウコノウマのオスの子馬「マラット(Marat)」が誕生した。

 母馬は7歳の初産の「ナディ(Nady)」、父馬は「ゴビ(Gobi)」。この誕生は、アメリカ動物園水族館協会(AZA)の「アジア野生馬種保存プログラム(SSP)」の一環として実現したものだ。

 ところが、生後数日で子馬が体調を崩し、ミネソタ大学の獣医学センターに搬送されることになった。

 治療によって命は助かったが、しばらく母親と離れていたことで、母馬ナディは子を認識できなくなり、授乳も拒否するようになった。

 モウコノウマのように野生の性質を強く残す馬では、母子の関係が一度途切れると、再びつながるのが難しいことがあるという。

この画像を大きなサイズで見る
病気の治療で母親と離れていた後、育児放棄されてしまったモウコノウマのマラット / Minnesota Zoo

子を失ったばかりの別種の母馬がマラットを受け入れる

 このとき、代わりの母親役として動物園に迎えられたのが、ミネソタ州南東部にある「ブラッシュ・ポッピン牧場」で飼育されていた馬「アリス」だった。

 アリスは、ポニー・オブ・ジ・アメリカズ(Pony of the Americas)というポニー種で、性格はとてもおだやかだ。

 アリスは、数日前に出産したばかりの牝馬の赤ちゃんを、事故による怪我で亡くしたばかりだった。

 飼い主のジェフさんとシルビア・パソウ夫妻は、アリスの母乳と穏やかな性格が、母親を必要としている別の子馬の助けになるかもしれないと考え、動物園への協力を申し出た。

 動物園に到着したアリスは、初対面のモウコノウマの子馬にやさしく鼻を寄せ、すぐに授乳を始めた。

 その後2頭は、まるで本当の親子のように寄り添いながら、毎日を過ごしているという。

野生馬と飼育馬、種が違っても愛情は育める

 モウコノウマは、かつて中央アジアのモンゴル、中国、カザフスタンなどに広く生息していた野生馬で、家畜馬とは異なる進化の道を歩んできた。約4万年前に分岐し、染色体の数もモウコノウマは66本、家畜馬は64本と異なっている。

 かつては、1909年に絶滅したターパンに次ぐ「現存する唯一の野生馬」とされていたが、1960年代後半に野生での個体は絶滅していたとされている。

 現在見られるモウコノウマは、すべて動物園や研究機関で繁殖された個体を、自然環境に再導入したものである。

 こうした国際的な保護と繁殖の努力により、現在では世界で約2,000頭ほどが生存しており、多くはモンゴルやカザフスタンの保護区で野生復帰を果たしている。

 一方、アリスは完全な家畜馬である「ポニー・オブ・ジ・アメリカズ(Pony of the Americas)」という品種だ。

 1954年にアメリカ・アイオワ州で公式に登録が始まった飼育馬の品種で、アラビアン、アパルーサ、シェトランドポニーの3種をもとに交配されて誕生した。

 体高は117〜147cmほどで、ポニーと呼ばれながらも子どもや小柄な大人が乗れる大きさがある。

 斑点模様のある毛並みや、アラビアンに似たすらりとした顔立ち、人なつっこく穏やかな性格が特徴で、初心者向けの乗馬クラブなどでも広く親しまれている。

 モウコノウマとポニー・オブ・ジ・アメリカズは、種も起源もまったく異なる馬だが、母性行動や授乳の仕組みには共通点がある。

 そのため、今回のように母親として育児を引き継ぐことができたのだ。

 穏やかで世話好きな性格をもつアリスは、まさにその役目にぴったりの馬だったといえる。

この画像を大きなサイズで見る
実の親子のようなマラットとアリス / Minnesota Zoo

馬の母性本能が命を守った

 ミネソタ動物園の飼育・保全部門の責任者ランディ・コチェヴァー氏は、今回の出来事について「命をつなぐために大切なものは何かを思い出させてくれる出来事だった」と話している。

 育ての親となったアリスと、野生馬の子マラット。母馬としての本能が、新たな命を育てる力となった。種は違っても親の子に対する思いは一緒なのだ。

モウコノウマは日本でも見ることができる

 ちなみに日本でも、多摩動物公園とよこはま動物園ズーラシアでモウコノウマをみることができる。

 多摩動物公園では、群れで生活するモウコノウマの様子を見ることができる。ズーラシアでは、モウコノウマの展示に加え、野生復帰に向けた取り組みも行われているという。

 モウコノウマは、日本在来馬の祖先に該当する種であると見なされており、更新世には本種も日本列島に到達したものの、ウマ属が列島に長期的な自然定着をすることはなかったといわれている。

References: Mnzoo / Asian Wild Horse Foal Thriving at Minnesota Zoo

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 18件

コメントを書く

  1. 興味深い事例として紹介するのはいいけど、
    育児放棄する野生の気質が悪いわけではない。
    一方の性質だけを母性として美化するのはいかがなものかと思う。
    どちらの性質も環境に適応してきただけでしょ。

    • +27
  2. こんなちっこい体格で完全武装の兵士を乗せて1日100kmちかく走っていたってんだから底が知れない

    • +27
  3. 授乳の表情が穏やかで慈しみに溢れて素敵だね

    • +12
  4. 蒙古の馬、ってことかしら?
    モンゴルに沢山いるとかはもうないの?

    • +2
    1. 「蒙古の」「馬」ではなく「蒙古」「野馬」
      環境の変化だったり家畜系の馬との交雑で野生では一度絶滅判定されてる
      そうなる前に確保された個体群を増やして再度野に戻す活動で少しずつ数は増えてるところ

      • +31
    2. 亀だけど。
      今モンゴルにいるモウコノウマは完全な野生だと思われてたけど近年の研究で残念ながら完全な野生下で生まれたモウコノウマはすでに絶滅していて、現存しているモウコノウマは一旦家畜化されてそれが逃げたか捨てられたかして野生化した馬というのが判明してる。
      だからその家畜化されたモウコノウマ(おそらく血統的にあまり多様性がなく、そのままだと絶滅してしまう)を増やすためにいろんな取り組みが行われてる。

      • 評価
  5. 馬って義母になるの難しいって聞いた事あるけど優しいお母さん馬だったんだね。

    • +10
  6. 毎回動画再生されず見れないなぜ?残念

    • 評価
  7. 毎度こう、母性の美しさ尊さを見せてもらうたびに自分の中の醜いものが浄化さ(蒸発しちゃったおじさん

    • +2

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

絶滅・絶滅危惧種生物

絶滅・絶滅危惧種生物についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。