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ハイギョのゲノム解読を解読したところ動物最大、人間の30倍もゲノムを持っていることが判明

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(著) (編集)

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 最新の遺伝子解析技術でハイギョを調べたところ、なんと人間の30倍以上、これまで調べられた動物で最大のゲノムを持っていることが明らかになったそうだ。

 ハイギョとは4億年前のデボン紀に登場した「生きている化石」と呼ばれる古代魚で、肺を使って空気呼吸する。あのシーラカンスの親戚(同じ肉鰭類に分類される)といえば分かりやすいだろう。

 魚ではあるが、4本の手足を持つ四肢動物(もちろん私たちもこのグループだ)の祖先は、この肉鰭類から進化したとされており、その遺伝子を知ることは、私たちが陸に進出できた遺伝的な背景を知ることにもつながる。

最新の遺伝子解析技術でハイギョのゲノムを解読

 この研究は「ロングリード・シーケンシング」という技術の賜物だ。

 これまでのゲノム解析のほとんどは、100~200塩基ほどの長さの「ショートリード」で解読されてきた。

 この方法で遺伝子配列を解析するとき、ゲノム内のすべての塩基が複数回決定される。巧妙に設計されたコンピュータプログラムはこれを踏まえて、2つの配列が重複する場所を特定し、それを1つの長い配列として記録するというプロセスを繰り返す。

 問題は、微生物をのぞくほとんどの生物のDNAには、数百塩基よりも長い繰り返し配列が含まれていることだ。

 こうした配列はほぼ同じだというのに、ゲノムの複数カ所に存在するため、きちんとした場所を特定できず、最終的な解析結果に長さも配列もわからないままのギャップができてしまう。

 ハイギョは、遺伝子の設計図の中には含まれるものの、実際に機能しているかどうかわからない「ジャンクDNA」がたくさんあるため、せっかかくDNAを解析しても、きちんと特定された配列よりもギャップばかりが目立つ結果しか得られないことになる。

 ロングリード・シーケンシングは、その名が示す通り、100~200塩基の断片ではなく、数千塩基の断片を用いてゲノムを解析する技術だ。

 繰り返しを全体的にとらえることで、ショートリードでは避けられないギャップを防ぐことができる。

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最新の遺伝子解析技術で知られている動物の中で最も大きなゲノムを持つことがわかったミナミアメリカハイギョ(Lepidosiren paradoxa) / image credit: Katherine Seghers / Louisiana State University

ハイギョに人間の30倍もある巨大ゲノムがあることが判明

 この技術でオーストラリアに生息するハイギョで、四肢動物の祖先が持っていた手足のようなヒレがある「オーストラリアハイギョ」のゲノムが解析されたのは、2021年のことだ。

 そしてこのほど、アフリカと南アメリカに生息する「アフリカハイギョ」と「ミナミアメリカハイギョ(Lepidosiren paradoxa)」のゲノムが解析された。

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photo by iStock

 これら3種は2億年前にゴンドワナ超大陸が分裂したとき、それぞれ別の道を歩んだようだ。だがこの3つのゲノムは、どのハイギョにも共通しており、なおかつ四肢動物の祖先にもあっただろう特徴を解き明かす手がかりとなる。

 まず明らかになったのは、ハイギョのゲノムが、400億~900億塩基対で構成されていることだ。

 人間ならば30億塩基なので、最大30倍も長いということになる。900億の塩基は19本の染色体にまとめられ、そのうち18本はそれぞれが人間のゲノム全体を合わせたものよりも長い。

 こうした巨大なハイギョの遺伝子は、およそ2万のタンパク質をコードしている。興味深いことに、それよりずっと短い人間のゲノムにも、2万のタンパク質がコードされている。

 この点において、ごく一部の例外を除けば、これまで調べられてきたどの四肢動物もほぼ同じだ。実際、こうした遺伝子は、あらゆる四肢動物の共通祖先の遺伝子と似たものかもしれないという。

 この研究は『Nature』(2024年8月14日付)に掲載された。

追記(2024/08/21)誤字を訂正して再送します。

References: :The fish with the genome 30 times larger than ours gets sequenced | Ars Technica

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この記事へのコメント 21件

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  1. 神「あの時代はファイル管理とか不慣れで・・不要なゴミデータが散乱しちゃってて・・」

    • +5
  2. 頼む✋ ゲノムを調べさせてくれ<m(__)m>   🐍「はいぎょ」

    • +3
  3. 遡れば遡る程煩雑なゲノムになるってのは割と理解出来るな
    取捨選択が種の分岐な訳でそれぞれ特化型に進化していけば不要な部分は消えて行くって事なんだろう

    • +8
    1. >>3
      逆に言えばまだ進化できるポテンシャルを備えていると言えるかも
      遺伝子の刈込みが進んだ種だと環境変化に対応する冗長性が少なくなるだろう

      • +5
  4. 人間は一度絶滅しかけたから種類が少ないんだな
    みんな仲良くしたいのに同族嫌悪だ

    • +1
  5. ゲノムが多いから、そこから派生する種も多くなるってことなのかな
    てことは、現代の種類からはあんまり多様に発達した別種が生まれるってことも少なくなる? 亜種くらいしか生まれなくなるんだろうか

    • +4
  6. 水の中ならば水の中メイン。陸上ならば陸上メインなど
    色々な方向性に先鋭化する前の雑多な情報全部入りなんだろうか?

    • +2
  7. ちなみに生物界最大のゲノムを持つのは
    ユリ科のキヌガサソウでヒトの50倍程度だとか。
    まあまだ未調査の生物も多いんだろうけど。

    • +3
  8. ハイギョのやつ、さてはデフラグするのサボったな

    • +11
  9. こんなかわいい顔して噛まれるとマジで危険なハイギョ
    噛む力が洒落にならん

    • +2
  10. 遺伝子数はヒトと同じ2万個くらいなので、非コード領域がやたらと長いということだね

    • +4
  11. 知れば知るほど人間よりも偉大な
    生き物だらけだという現実を今更さら知って
    アレも食べるな・コレも保護しろって
    いつものモードにならなきゃいいけど。

    • -1
  12. 塩基対が多いとどういう影響があるのだろう?

    • 評価
    1. >>13
      遺伝子コピー時にエラッタが起きやすい
      →変異ができやすい
      →環境適応能力が上がるかもしれない

      • +2
      1. >>15
        古生代に生きていた祖先はいろいろな可能性を秘めていたのかもしれないが、現生種が古代の姿を留めているのは変異しにくいという形質を進化させたからだと思う

        • +2
  13. まあ別にゲノムってほとんどの領域は無意味な部分だから別に長いから高等ってわけじゃないけどな
    人間より200倍長いゲノム持ってるアメーバとかいるし
    ウーパールーパーとかもすごく長い

    • +3
  14. ソースで言うとほとんどコメントアウトされてる行ばっかのソースみたいなもんか
    読みづらそう

    • +2
  15. シン・ゴジラより大変じゃないか!(あれは物語を分かりやすくする為の嘘なので仕方ない)

    • +1
  16. ちょっと他の生き物を軽視し過ぎではないか?
    人間なんて何らかの事故で生活が原始時代に戻ったらあっけなく人口激減する位フィジカル的には脆弱な生き物だと思うよ。

    • -1
    1. そんなこと言い出したらどんなに金持ちだろうと、偉人だろうと大概の人は自分で垂れ流した糞尿すら自ら始末できない赤ん坊ですよ。何者かの世話にならなきゃ成り立ちません。

      • +4

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