猫の手星雲(Cat’s Paw Nebula)
 地球から5500光年の先にある”猫の足星雲”で、宇宙ではとびきり珍しい大きな分子が検出されたそうだ。

 ”猫の手星雲”こと「キャッツパウ星雲(NGC 63341)」で発見されたのは、「2-メトキシエタノール」という化合物だ。

 13個の原子でなる複雑な作りをしており、これまで太陽系外で確認されたものとしては最大級の分子であると、『The Astrophysical Journal Letters』(2024年4月12日付)に掲載された研究で報告されている。

 こうした発見は、宇宙の物理的条件の違いが、そこで起きる化学反応にどのような影響を与えるのか理解する手がかりになるという。

天の川銀河に浮かぶ赤い肉球、猫の手星雲

 猫の手星雲(キャッツパウ星雲:Cat's Paw Nebula)は、公式にはNGC 6334とも呼ばれ、地球から約5,500光年離れた銀河系(天の川銀河)のさそり座に位置している。

 星が散りばめられた暗い宇宙を背景に、赤い雲状のガスが、見る角度によっては猫の足跡に見えることからこの名がついた。

 天の川銀河の中で最も活発な星形成領域の1つで、100万〜200万年の間に生まれた青い大質量星を多数有しており、新しい星が形成される様子を観測するのに最適な場所でもある。
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猫の手星雲 / image credit:

宇宙で分子を見つける方法

 宇宙は何もない空っぽの空間と思われがちだが、そうではない。一見空虚に思えるが、実際には、原子が集まってはバラバラに壊れ、何百万年もの時間をかけて星や惑星が誕生するという、化学的な営みが連綿と続いている。

 こうした営みを理解することは、星や銀河が形成されるプロセスや、生命がどのように誕生するのかを理解することでもある。

 とはいえ、広大な宇宙に存在する分子など、どうすれば調べられるのだろう? それはあらゆる分子が持っているエネルギーの”身分証明書”が手がかりになる。

 物質が光を浴びると特定の波長を吸収するが、この現象を量子レベルでみると、分子の回転エネルギー準位から別のエネルギー準位への遷移に対応している。

 そしてこのエネルギー準位は分子それぞれに固有のものだ。だからエネルギー遷移のシグナルを検出すれば、そこにどのような分子があるのかがわかる。

 宇宙を漂う分子を調べている天文学者は、電波望遠鏡でこうしたシグナルを探している。
猫の手星雲にズームする映像

猫の手星雲に過去最大級の大きな分子を発見

 マサチューセッツ工科大学をはじめとする研究チームがこの方法で発見したのが、「2-メトキシエタノール」だ。

 この分子は、エタノールの水素原子の1つがより複雑なメトキシ(O-CH3)基で置換された13原子で構成されている。

 これほど複雑なものが太陽系の外で見つかるのはかなり珍しく、13原子より大きな分子の”種“はこれまでに6種しか検出されていない。

 マサチューセッツ工科大学(MIT)の宇宙化学者、ザッカリー・フリード氏は、こうした分子がなかなか見つからない理由をこう説明している。
こうした分子は、もっとシンプルに形成される小さな炭化水素に比べると、はるかに数が少ないものです。

また、そのスペクトル・シグナルは、より多くの遷移に分布しているため、個々のスペクトルのピークが弱く、なおのこと観測が難しくなります(ザッカリー・フリード氏)
 彼らがそれを発見できたのは、ただの運のおかげではない。検出が難しい分子を探すために、人工知能を利用するというクレバーなやり方が功を奏した結果だ。

 研究チームは以前、宇宙のさまざまな領域にどれだけ分子があるのかモデル化する機械学習法を開発していた。このモデルが、まだ未検出の分子種を予測するのに役立った。

 今回のその大きな分子が猫の手星雲で発見された。

 この星雲と、「へびつかい座ロー分子雲領域」の連星系「IRAS 16293」では、過去にメトキシ基を含む分子種が発見されていたため、モデルからどこに未検出の分子があるのか見当をつけることができた。

 そこで研究チームは、まず実験室で2-メトキシエタノールの回転スペクトルを測定し、この分子が放つと考えられる2172種のエネルギーシグナルを記録。

 このデータをもとに、チリにある巨大電波望遠鏡「アルマ望遠鏡」で、キャッツポウ星雲とIRAS 16293を観察し、2-メトキシエタノールの存在を示すエネルギーシグナルを探した。

 その結果、猫の手星雲からのみ25個のシグナルが見つかり、2-メトキシエタノールの存在が確認されたのだ。
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猫の手星雲 / image credit:S. Lipinski/NASA & ESA

宇宙の化学反応は何によって左右されるのか?

 こうした発見は、宇宙の物理的条件の違いが、起こりうる化学反応にどのような影響を与えるのか理解する手がかりになる。

 たとえば研究チームは、今回観察された2領域において化学的な違いがあった原因は、放射場の強さの変動や、星が形成されるこれら2つの領域の塵の温度の違いではないかと推測している。

 研究チームは、こうした発見が、まだ未発見の宇宙の分子探しにつながることを期待しているそうだ。

References:Picture Purrrrrfect: NASA Snaps Incredible Photo of Cat's Paw Nebula | Space / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2024年05月03日 20:04
  • ID:oFqGX7bv0 #

なんてネコ々しいんだ・・・

2

2. 匿名処理班

  • 2024年05月03日 20:12
  • ID:YXaYR1Zr0 #

想像力がたくましすぎる

3

3. 匿名処理班

  • 2024年05月03日 20:22
  • ID:XOsktB1I0 #

宇宙について最も理解しがたいことは、それが理解可能だということである。

4

4. 匿名処理班

  • 2024年05月03日 21:26
  • ID:0CDVCO9c0 #

ネコ星人が住んでいるんだろうか

5

5. 匿名処理班

  • 2024年05月03日 21:38
  • ID:1VvJ.YSo0 #

これが宇宙猫の肉球か

6

6. 匿名処理班

  • 2024年05月03日 21:47
  • ID:tswD3iIK0 #

もし猫だったらどのくらいの大きさになるのだ
もしゴジラと戦うと一瞬で銀河系ごとぽちっとされ
ブラックホールが誕生しそう

7

7. 匿名処理班

  • 2024年05月03日 22:09
  • ID:3Cog1.9X0 #

海外ドラマ アルフのメルマック星人に見つかりませんように

8

8. 匿名処理班

  • 2024年05月04日 07:29
  • ID:OBhQknwO0 #

やっぱり、トーストの匂いがするんでしょうか

9

9. 猫ンデルタ

  • 2024年05月04日 08:04
  • ID:ki3KZRSY0 #

ニャラクシー

10

10. 匿名処理班

  • 2024年05月04日 09:42
  • ID:Kz4Y1P2.0 #

>>6
半径40光年で、銀河系の中に存在してる

11

11. 匿名処理班

  • 2024年05月04日 12:17
  • ID:Iyhkmhmk0 #

実際の猫の肉球でもなにか不思議な化学反応が起きていると思う
ポップコーンみたいなにおいするし

12

12. 匿名処理班

  • 2024年05月04日 13:07
  • ID:VPd.UUNB0 #

天文学者にも猫好きがいるんだね♪

13

13. 匿名処理班

  • 2024年05月04日 14:25
  • ID:oql0ApZX0 #

NNNの本部を発見してしまったか…

14

14. 匿名処理班

  • 2024年05月04日 16:12
  • ID:nJIbV5F20 #

「100万〜200万年の間に生まれた青い大質量星を多数有しており」←若いにも程がある猫よりは年長にしても人間に負けてる

15

15. 匿名処理班

  • 2024年05月04日 16:48
  • ID:OBhQknwO0 #

肉球状星団じゃ

16

16. 匿名処理班

  • 2024年05月04日 22:51
  • ID:.QksmZTP0 #

「敵、猫の手星雲前方に展開!」
「中央肉球に向かって全艦砲撃!!」
こんなSFやだわ。

17

17. 匿名処理班

  • 2024年05月06日 14:37
  • ID:vO9EdYFl0 #

>>16
見てみたいけどね。

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