
最近公開されたその画像は、幽霊のようにぼんやりとした、巨大な手のようなパルサー星雲の「磁場構造の骨」の部分だ。
その宇宙のレントゲン写真からは、燃料を使い果たし崩壊した星が、パルサーとして生まれ変わり、高エネルギーを帯びた物質と反物質の粒子を噴出し続ける様子をうかがい知ることができる。
宇宙に浮かび上がる幽霊のような手
およそ1500年前、私たちが暮らす天の川銀河の中で、とある巨大な星が核燃料を使い果たした。燃やすものがなくなったその星は自らの重力で崩壊し、やがて「中性子星」という高密度の天体に生まれ変わった。強力な磁場とともに自転する中性子星=パルサーは、太陽風のような強烈な風と、物質と反物質のジェットを吹き出し、「パルサー星雲」を形成することがある。
2001年、NASAのチャンドラX線観測衛星がパルサー「PSR B1509-58」を観測し、そこに人間の”手”のような構造があることを発見した。
それが地球から1万6000光年離れたパルサー星雲「MSH 15-52」だ(なおパルサー自体は”手のひら”の付け根あたりにある)。
そして今回天文学者たちは、2021年に打ち上げられた最新のX線望遠鏡「IXPE衛星」の観測データをチャンドラのものと組み合わせ、磁場によって形成された”手の骨”を浮かび上がらせることに成功した。
「荷電粒子がX線を発生させながら磁場に沿って移動し、まるで人の手の骨のような星雲の形を作り出しています」(スタンフォード大学 ロジャー・ロマーニ氏)

天文学者の診断結果
地上の医師たちは、X線を利用して人体の診断をするが、天文学者たちはそれを宇宙の診断に利用する。たとえばIXPE衛星の観測データからは、X線発生源の磁場によって決まるX線の電場の向き、すなわち「X線偏光」を知ることができる。
それによると、MSH15-52が広まっている領域では、この偏光が非常に大きく、理論上ありえる最大レベルにまで達しているという。
これほどX線が偏光するには磁場がまっすぐで、しかも均一でなければならない。それは、パルサー星雲のその領域では、乱流がほとんどないことを意味する。
「X線は人間の医療に使われます。ですが私たちはX線を別の方法で使い、普通は見えない情報を明らかにしています」(スタンフォード大学 ジョセフィン・ウォン氏)
MSH 15-52のもう一つ面白い点は、パルサーの下の方、つまり「手首」に向けてまた別のX線ジェットが出ていることだ。

その吹き出しの部分は、X線偏光が小さい。おそらくその理由は、そこが強く乱れた領域で、高エネルギー粒子の発生にともなって複雑にもつれ合う磁場があるためだろうという。
ところがジェットの末端では、磁力線がまっすぐで均一になっているらしく、偏光が大きくなる。
こうした発見は、手のひらの付け根(パルサーがあるところ)は大きく乱れており、ここでエネルギーを得た粒子が、指や手首のような磁場が均一な領域へと流れていくことを物語っている。
なおIXPE衛星は、「ベラパルサー」や「かにパルサー」でも同じような磁場を検出している。このことから、こうした不思議な天体が宇宙ではかなり一般的であるらしいことがうかがえるそうだ。
この研究は、『Astrophysical Journal』(2023年10月23日付)に掲載された。
References:NASA X-ray Telescopes Reveal the "Bones" of a Ghostly Cosmic Hand - NASA / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
さわさわなでなで
2. 匿名処理班
ハロウィンに合わせた掲載だったのかな。なかなかのインパクト。
3. 匿名処理班
ダークネスフィンガーかな?
4. 匿名処理班
宇宙の見えざる手!