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NASAが探査機を衝突させた小惑星、変形し別の天体のようになっていた

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(著) (編集)

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 探査機DARTを小惑星「ディモルフォス」に意図的に衝突させ、軌道変更を試みるNASAのミッションが2022年に行われたが、その後小惑星はどうなってしまったのだろうか?

 衝突により大きなクレーターが残るようなことはなかったが、その形状を大きく変形させた可能性があるようだ。

 『Nature Astronomy』で発表された最新のシミュレーション結果によると、衝突の衝撃により、ディモルフォスからは幅広い円錐形の粉塵が上がり、小惑星全体に移動して形状を変化させたという。

宇宙船を衝突させ小惑星の軌道を変える防衛ミッション

 NASAが行ったミッションは、探査機「DART」を秒速6.1kmで小惑星に衝突させる「キネティック・インパクト(運動衝突)」だけで宇宙空間の天体の動きを変更できるのかどうかを確かめるために行われた。

 将来的に地球に衝突する恐れがある小惑星が飛来したとき、その脅威から人類を守る方法を見出すための重要なミッションだ。

 標的となったのは、小惑星「ディモルフォス」だ。この小惑星は、より大きな小惑星「ディディモス」の周りを周回する衛星で、ディディモスとあわせて二重小惑星と呼ばれている。

 狙い通り、2022年9月、DARTはディモルフォスに突撃した

 その結果として、ディモルフォスの公転周期は11時間55分から11時間23分に短くなり、探査機をぶつけた衝撃で軌道を変化させられることが確認された。

 予想外のコースに進んでしまったものの、このミッション自体は成功した。

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衝突から30分間のディモルフォスの様子 / image credit: S. D. Raducan (UNIBE)

探査機が衝突した後、小惑星はどうなったのか?

 だが気になるのは、その後ディモルフォスがどうなったか、だ。まさか衝突により大穴が開いて、現実のデス・スターのような容貌になったのではないか?

 最新の研究によれば、そうはなっていないようだ。

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DART衝突の観測結果(左、中央) とシミュレーション (右) の比較 / image credit: Raducan et al. 、Nature Astronomy、2024

小惑星が全体的に変形し、別の天体のようになっていた

 スイス、ベルン大学をはじめとする研究チームは、流体力学的なコンピューターモデルを利用して、DARTに衝突されたディモルフォスがその後どうなったのかシミュレーションしてみた。

 それによると、ディモルフォスの全質量の1%が宇宙空間に散らばったが、約8%が小惑星全体的に移動したようだ。大穴は開かず、ディモルフォスの形が全体的に変わったと考えられる。

 この結果は、ディモルフォスの構造についても伝えている。シミュレーションが示していたのは、それが瓦礫が弱い重力によってまとまっただけの「ラブルパイル天体」だろうということ。

 DARTの衝突によって吹き飛ばされた粉塵は、160度と幅広の円錐形に拡散。小惑星の重力も物質のまとまる力も弱いために、衝突後も膨張し続けた。

 また、こうしたことから、ディモルフォスの出自も推測することができる。

 前述したようにディモルフォスは小惑星ディディモスの衛星で、その周りを公転している。

 そのディディモスもまた瓦礫が弱く集まったものだと考えられているが、そのために回転の遠心力によって瓦礫がこぼれ落ちることがある。

 それが重力で再度まとまったものがディモルフォスである可能性が高い。

 こうした発見は、似たような連星小惑星の特徴を伝えており、ひいては太陽系の形成や進化の歴史を知る手がかりになる。

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衝突から178秒後。広く散らばった粉塵はタコの足のようにも見える / image credit:S. D. Raducan (UNIBE)

今後も続く地球防衛ミッション

 今回のことはあくまでシミュレーションが伝えていることだが、近い将来その答え合わせがなされることだろう。

 欧州宇宙機関「ESA」は今、DART衝突によるディモルフォスの変化をくわしく調べるため、また新たなミッションを計画している。

 2026年に予定されている、日本のJAXAもまた参加する「二重小惑星探査計画」では、今年打ち上げ予定の探査機ヘラによって、ディディモスとディモルフォスを再訪する。

 ヘラによる追跡観測は、小惑星の形成プロセスを知る手がかりのほか、地球を防衛するプラネタリ・ディフェンス法を確かなものにする貴重なデータも得られることだろう。

References:Physical properties of asteroid Dimorphos as derived from the DART impact | Nature Astronomy / A NASA mission that collided with an asteroid didn’t just leave a dent. It reshaped the space rock / Asteroid Struck by a Spacecraft Might Be ‘Healing’ as Its Surface Reforms : ScienceAlert / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント 17件

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  1. 直径160mだと普通なら地球に衝突すれば被害甚大だけど
    こんなフワフワした天体だと衝突前に瓦解しそうな気もする。
    それとも硬度はあまり関係なかったりするんだろうか?

    • +3
    1. >>2
      こういう岩石が緩く集積したタイプの小惑星がバラバラになるとそれはそれで散弾銃のように広く降り注いで結局被害が出る

      • +4
      1. >>3
        直径10m以下くらいになれば大部分は
        落下前に燃え尽きると言われてるけどね。

        • +2
        1. >>13
          それは速度や進入角度にも拠るし、バラバラになると言っても一様に細かくなるわけでもない
          2013年のチェリャビンスク隕石も石質隕石でたった17m程度しかなかったけど広範な被害が出たわけで楽観できるもんじゃないよ

          • +1
          1. >>18
            もちろんそれなりの被害は出るだろうけど
            直径160mの普通に硬い隕石が落ちるのに比べたら
            相当軽微な被害になると思う。
            画像見る限りでは殆どチェリャビンスク以下のサイズのようだし。
            まあ中の方に核となるでかい塊が入ってるかもだけど。

            • +1
  2. 本番の2025年7月5日には間に合うのかね
    (´・ω・`)
    今度の小惑星は直径1.4kmだぞ

    • 評価
    1. >>4
      世界の名だたる富豪たちがこぞって堅牢なプライベートシェルターを建造中なのが気になるところですよね

      • 評価
    2. >>4 当たる場所にもよるだろーけど核ミサイルが1~2発当たれば軌道がそれると思うけど

      • -4
      1. >>7
        核による破壊手段では>>3のような副次災害が起こることが懸念されています

        • 評価
  3. 小さいとは言っても惑星には違いない
    軌道を変えるほどのエネルギーぶつけたんだから当然の様な気もする

    • +2
  4. 人類は地球以外の天体の環境も破壊し始めたな

    • 評価
    1. >>9
      いうてなんの生き物もいない岩の塊削ったところで何の問題がって感じもするが

      • +1
  5. インパクトよりも推力で軌道を変える事に賛成

    • +3
  6. その後小惑星ディモルフォスは突如地球に向かって軌道を変え、あわや激突というその時、
    ディモルフォス人「コラ~!宇宙船をぶつけたのは貴様らか~っ!」

    • +1
  7. まあ隕石のせいで恐竜滅んでるしな
    備えておくに越したことはない

    • +3
  8. >>小惑星全体に移動して形状を変化させたという。

    何が?移動したのか主語がないので不明だね。

    • -2

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