
将棋や囲碁など、頭脳戦でAIが人間に打ち勝つことはあった。だが今回は、物理世界で行われるドローン競技で、AIが人間のチャンピオンを倒したのだ。
その競技を見れば、人間の選手がどれほど高度な技術でドローンを操っているのかわかるはずだ。オンボードカメラの映像は、まるでジェットコースターの動きを映したかのようだ。
だがチューリッヒ大学とインテルの研究チームが開発したパイロットAI「Swift(スウィフト)」は、圧倒的なスキルを誇る人間の世界・国内チャンピオン3人をぶっちぎり、最速タイムまで叩き出したのである。
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速さとテクニックを競うドローンレース
ドローンは、上空から何かを撮影するだけのものではない。様々な用途に使用されており、速さを競う競技も行われている。世界最大のドローンレースリーグ「MultiGP」では、熟達したテクニックを持つ操縦者が、戦闘機さながらのスピードでドローンを飛ばしている。
選手たちはドローンを操って、コース上に設置された7つのゲートを通過しながらタイムを競うのだが、その視界に飛び込んでくる世界はトップガンのようだ。
Champion-level Drone Racing using Deep Reinforcement Learning (Nature, 2023)
AIが仮想フライトで三次元コースを学習
このドローンサーカスに参加したパイロットAI「スウィフト」は、内蔵されたたった1つのカメラと、慣性計測ユニットが検出する加速・速度・方向データをもとに状況を判断し、ドローンを操る。ただしきわめてハイレベルなレースなので、スウィフトは仮想環境で100機のドローンを飛ばして、事前にコースを学習している。
シミュレーション学習は、まずコースの環境を探ることから始まる。それからいくつもの飛行ラインをなぞり、その中から最速ラップを叩き出せるラインを選び出す。
この学習に必要な時間は1時間足らず。それでも1ヶ月ぶっ続けで飛び続けたのと同じくらいの飛行時間に相当するという。
コースを学習したら今度は実際に飛んでみて、乱気流や視覚シグナルの乱れなど、シミュレーションと実際の飛行とに食い違いを生じさせる要因をチェックする。

AIは人間の世界チャンピオン3人を圧倒
こうして準備万端になったスウィフトは、チューリッヒ近郊にある空港の格納庫に設置された25×25メートルの専用コースで大暴れした。対戦相手は、世界王者2人や3度のスイス国内王者など、手練れぞろい。そんな彼らの前で、正確無比なターンを連発。信じられない速度でラップを重ね、歴戦のチャンピオンたちを圧倒した。
MultiGP国際ワールドカップで2度の王者に輝いたトーマス・ビットマッタ氏は、「イかれてる」と舌をまく。スフィフトのラップタイムは、人間によるベストラップを0.5秒も上回ったのだから当然だろう。

AIの弱点は状況への適応力
では人間はもうAIに勝てないかというのと、そうではない。じつは状況の変化に対しては、人間の方が上手に対応できたのだ。たとえば、練習していたときより明るい日差しが格納庫を照らすと、スウィフトは途端に上手にドローンを飛ばせなくなった。
いずれ、こうした弱点も克服されるのかもしれないが、それでも人間の脳が臨機応変であるという事実に変わりはない。
このことは、AI時代においてとても大切な洞察を与えてくれるかもしれない。確かにAIは特定の状況で、特定の作業をこなすなら驚異的な力を発揮するだろう。
だが刻一刻と変化する状況で、より幅広いタスクに対処することに関しては、今のところ人類の頭脳だってそう捨てたものではないのだ。
References:High-speed AI drone beats world-champion racers for the first time | Ars Technica / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
AIにも苦手な状況が発生したりと不確定要素はあるにせよ
人間が操縦して競うからこそレースは楽しめるのであって
AI任せのレースになった場合プログラム能力を競うレースになりそう
感覚的にはAIにRPGゲームをプレイさせて
クリアするまでの過程をただ眺めるだけみたいな?
2. 匿名処理班
早く人間を養ってくれAI
3. 匿名処理班
いやいや、こういうのこそAIが得意とするものだろ
不確定要素があっても人を越えたならまだしも
ついにもクソもない
4. 匿名処理班
学習時間1時間かぁ、流石なのだが
チャンプの視点が大概な視界なんだが?まずそっちにビビったわ
5. 匿名処理班
最新の戦闘機は、旧式の戦闘機が束になっても勝てないんだっけ
AI学習でさらにその差が広がりそうだな
6. 匿名処理班
>>3
だよなw
こういうのはAIの方が圧倒的に強い分野
人間とは比べ物にならないレベルの精密捜査ができるのだからね
7. 匿名処理班
>>2
同意、テクノロジーが進歩して効率は上がってるはずなのに何で1日8時間も働かなきゃならんのかね。
8. 匿名処理班
ロボットアニメでAI(無人機)ロボが噛ませなのが納得行かないよな。
反応速度も照準も人間より遥かに正確だろうし、人間には耐えられない速度、機動で動けるんだから勝負にならないはず。
9. 匿名処理班
>>2
スカイネット「よろこんで!」
10. 匿名処理班
それがAIってモノだから驚くに値しない
だがそのAIの為に何を最適化するべきか?どうやって学習を重ねるか?などと試行錯誤した研究者の方々が素晴らしいのであって
11. 匿名処理班
驚く要素無し。
こういうセンセーショナルな言い分の記事好かん。
これじゃaiとか関係ないよ。車や戦闘機の制御と何ら変わらない。自律性関係ないじゃん、このやり方では。
12. 匿名処理班
ミニ四駆並みの子供のおもちゃに成る日は近い
13. 匿名処理班
田舎のおばあちゃんちの台所に入ってくる
めっちゃデカいハエの動きを思い出す。
14. 匿名処理班
本物のツバメのようだ
15. 匿名処理班
ゲームのシミュレーションじゃすでにAIが無双しているけど、とうとう現実に来ちゃったか。状況対応速度もこれから改善されるだろうし、特異点を超える日が楽しみでもあり怖くもあり。
16. 匿名処理班
20世紀に世界を変えたオートメーション(自動化)は、決められた動作をひたすらに繰り返すことだった。条件分岐も人間がif節を与えてひとつひとつ設定していく。
AIが今までの自動化と違うのは状況判断能力で、人間が指図しないような特殊な動作もAIはなぜかやり遂げてしまう。
17. 匿名処理班
そりゃそうよ 条件が整っていればAIが強いのは
人間ならタイムが落ちる程度の状況変化でもAIは全く動かなかったり人や物に被害を与えるほど『適応力』が無い
その適応力すらプログラマーが一つ一つ手入力で打ちこむアナログな構造なんだから
18.
19. 匿名処理班
X-9 ゴーストバードまでもうちょっとかな。
>>1
AI やプログラムが人間に勝っても人間同士の競技が色あせることはないと思いますよ。それはチェスや将棋がゲームとして面白いことや、マラソン・駅伝・100m競走に始まるトラックアンドフィールドが面白いこと、競泳なども含めて人同士の競い合いを損なうことはないです。単純に移動する速度だけなら自動車がありボートがあるわけです。モータースポーツだって結局はドライバーが、競馬だって競輪だって結局人が介在して面白いので、競技としてはなくならないと思います。
20. 匿名処理班
ゴルゴ13の話でも、AIの戦闘機が出てきたが、山をミサイルで壊されたことで状況が変わって混乱して撃墜されていた。
でも、計算能力が上がって行けば、そういった状況変化に対してもすぐに再学習できたりするんじゃないのかな。
21. 匿名処理班
だってこれやってる事はTASじゃん
そりゃAIのが強いさ
22. 匿名処理班
道具を使えば人間の能力を圧倒する事例なんて山ほどあるし、特別驚くことでもないよね
AIに関しては競技への参加のルールが整備されてないだけで、マラソンにバイクに乗って参加して世界記録を出したと言ってるようなもん
23. 匿名処理班
>>2
AI🔴「では、みかえりにあなた方の人生を操作して、楽しませていただきましょう」
24. 匿名処理班
🔴「楽しい試合をありがとうございます。」
25. 匿名処理班
>>2
AIが人間を養う時代が来ると思いきや、いつの間にかAIに人間が働かされる時代になる。
26. 匿名処理班
>>21
TASは全部人が操作してるから全く性質の異なるものかと
27. 匿名処理班
>>2
どんどん仕事奪ってくれていいよね
労働なんてこの世から消滅するべき
28. 匿名処理班
>>1
これを「AIにRPGゲームをプレイさせて」というのなら、
人間が操縦するレースを"観戦する"のは、
「人間がプレイした動画配信を眺める」、つまり、
「AIのプレイ動画」と「人間のプレイ動画」で比較すべき
スーパープレイなら人間の方が盛り上がるかなぁ
そうじゃないなら技術面がって意味でAIかな
トークとかはなくプレイだけ前提の話で
29. 匿名処理班
そんなAIを作り、育て、使うのは良くも悪くも人間。
30. 匿名処理班
戦争もドーローンになるか、入り組んだ場所をかいくぐりターゲットを狙い攻撃。
アサシンコマンドw