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スナネコの珍しい生態が明らかに。行動範囲が広く縄張り意識を持たないことが判明

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(著) (編集)

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 あどけない表情と大きな三角お耳が魅力の砂漠の猫、スナネコは、かわいい顔して意外とタフな生き方をしていることが新たな研究で明らかとなった。

 一般的な野生のネコ科の動物は、ある程度の行動範囲がある程度決まっていて、縄張りをもっているが、スナネコは縄張り意識をもたず、時には水を求めて何十キロも移動するほど行動範囲が広いという。

 スナネコは、砂漠という過酷な環境に生き抜くために適応した特殊なネコ科だ。ゆえに人との接点がほとんどなく目撃記録も数えるほどで、なかなかその実態が明らかとなっていないが、長期追跡の末、ようやく新たな知見が得られたという。

砂漠に適応した唯一のネコ科「スナネコ」

 食肉目ネコ科ネコ属のスナネコ(Felis margarita)が最初に発見されたのは、1858年のこと。

 当時の発見場所はアルジェリアのサハラ砂漠だが、現在ではアフリカのサハラ砂漠やアラビア半島の砂漠地帯のみに生息する唯一のネコ科といわれている。

 こちらの動画は、2017年に世界で初めて撮影に成功した野生のスナネコの幼獣だ。

Sand Cat Kittens Spotted in the Wild for First Time

 水源もなく猛暑や極度な乾燥など、多くの動物が苦手とする砂漠で生きるスナネコは、砂色の毛や足裏に断熱効果が高い長い毛をもつなどその過酷な環境に適した特徴でも知られる。

  体長はおよそ45 cm前後と小柄で、尻尾の長さは30 cmほど。夜行性で日中は涼しい地下の巣穴で過ごし、夜になると小型哺乳類や鳥類などを狩りに行く。

 生物が少ない砂漠に特化したスナネコは時に毒蛇を襲って食す時もあるという。なお身体的な特徴の一つとされる頭の後方の短い耳も砂の中の獲物探しに役立っているそうだ。

大型ネコ科並み!スナネコの行動範囲の広さが判明

 こうした既知の生態に加え、さらなる調査で判ったこと。その1つはスナネコのやたらと広い行動範囲だ。

 イエネコサイズなのにもかかわらず、その範囲はなんとヒョウやトラなどの大型ネコ科のそれに匹敵するほど広いんだそうだ。

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image credit:cGREGORY BRETON/panthera

 この結果は、ネコ科の保護活動を世界規模で展開中の「パンテーラ(Panthera)」とモロッコのラバト動物園とドイツのケルン動物園の研究チームが長年かけて行ったスナネコの追跡調査で得られたもの。

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 チームは2015年から2019年にかけモロッコ南西部の農村で22匹のスナネコに調査用の首輪をつけ移動の様子を追跡した。

 これまで狩りの移動距離は平均5.4 km程度と考えられてたスナネコだが、今回判明した行動範囲はとんでもなく広く、6か月半で1,758平方km踏破した個体もいた。

 その記録は同じネコ科で行動範囲が特に広いクロアシネコやリビアヤマネコを抜く最高記録であり、彼らが思いのほか遠くまで歩き回ることがわかったのだ。

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image credit:cGREGORY BRETON/panthera

 小柄なスナネコにとっては途方もない距離に相当するが、どうやら彼らは愛らしい見ためのわりにおそろしくアクティブでタフなネコ科だったもよう。

 加えて今回の調査結果では、スナネコがまるで雨雲を追うように降雨とともに移動することも確認できた。獲物や水の確保が目的とみられるこの行動は、これまで野生のネコ科動物には見られなかった発見だ。

スナネコは縄張り意識をもたない可能性

 またチームは追跡した個体を含む47匹のスナネコを観察したが、彼らはみんな健康で争ったような痕跡もなく、ひっかき傷や歯の病気などの兆候もなかった。

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image credit:cGREGORY BRETON/panthera

 この結果からチームはスナネコは縄張り意識をもたず、他のスナネコや生息地域がかぶるリビアヤマネコなどとも平和に共存している可能性を示唆している。

 仲間同士や他の生き物ともめた形跡が無いってことはテリトリーなどにこだわらずわりと温和に生きてそう。ある意味スナネコは遊牧民的でフレキシブルな性格なのかもしれない。

実際の個体数が少ない?絶滅危機レベル引き上げの提案も

 今回の結果は現時点で国際自然保護連合(IUCN)の「低危険種(LC)」にあたるスナネコの保護に重要なものになった。

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image credit:panthera

 チームはスナネコの行動範囲が従来の予想よりはるかに広いことから、実際の個体数がより少ないおそれがあるとし、スナネコの絶滅危機レベルの引き上げを提案している。

 チームによるとスナネコの生態への知識は依然としてわずなもので、交配パターンなどもほぼ未知だという。

 この研究は『Journal of Arid Environments』誌に掲載された。

 少しずつ分かってきた砂漠に生きる猫の生態。猫界のピーターパンなスナネコ先輩LOVE&ウォッチャーな我々としても今後の報告が見逃せないや。

 とりあえず「スナネコのうた」をマスターしておくことにしよう、そうしよう。

References:iflscienceなど /written by D/ edited by parumo

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この記事へのコメント 41件

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  1. 乾燥地域でエサに余裕がない環境だから、行動範囲が広くなるんだなー。
    縄張り闘争に割く体力的余地もないほど。

    • +6
  2. 水で争うことないように縄張り意識を持たないようになっているのだろうか?もし水が豊富な環境で育てば普通の猫のように縄張り意識を持つのか気になる

    • 評価
  3. 遊牧民の暮らし方が人だけじゃなく生物全般に有効って事なのかもね
    考えてみれば草食動物は端からそんな感じだもんな

    • +4
  4. 普通の猫でも一つの町以上に動いていることがわかるくらい
    行動力の広さは半端でないけど、スナネコの場合それの
    何千万以上大きい広さ
    そりゃ調査しようにも不可能で、現代の利器使っても
    完璧に調べるには無理じゃねえの

    • +1
  5. 来月那須動物王国に会いに行くんだ。
    楽しみ(≧▽≦)

    • +19
  6. 顔が誰かに似てるんだけど、誰だかわからない

    • 評価
  7. 生息地域が過酷すぎるんでしょうね。
    縄張りを主張しても意味ないのでしょう。

    • +11
  8. あっちこっちで見かける、わーけっこういるんだ。
    実は同じ個体が長距離移動してたのでした、は哀しすぎる。

    • +19
  9. かわいいけど指を差し出したら食いちぎられたりしないかね?

    • 評価
  10. マヌル姐さんだけじゃなく、スナネコの歌もあったのかw
    こうなるとクロアシヌッコの歌もほすいな

    • +1
    1. あどけない中にも凶悪な性根が見え隠れしてそれがいい

      • 評価
  11. よよよよ、ようじゅう……
    ハアハア、バタッ

    かわいすぎて動悸がする

    • +1
  12. スナネコのうたは中毒性がないから一度きいてみるといい
    かれこれ30分ぐらいループしてるけど全然飽きないぞ

    • +5
  13. 「世界的なネコ科の保護組織パンテーラ」だと?
    我がNNN以外にもそんな組織がっ!

    • 評価
  14. スナネコ(砂猫)とスナドリネコ(漁り猫)が割と混同されやすい。
    なんでこんな似た和名を付けたのか・・・

    • 評価
  15. 絶滅危惧の猫科動物ってカリカリとチュールあげたら増えるんちゃう?

    • -1
  16. お顔そのものは大好きって事もないけど、
    このページで使われてるショットの何枚かがとてもいい
    走ってるであろう時の後ろ姿と、車?の下でこちらを振り向いてるのの二枚
    最高に可愛い

    • +2
  17. 行動範囲が広いのも、なわばりに拘ってないのも生存できない時があるからじゃね?

    • 評価
  18. そのうちペットとしての人為的な交配種が中東や欧州から出回りそうな嫌な気がする。

    • -1
  19. 縄張りを持たないという事は、食うに困らない餌があるという事か。

    • 評価

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