
それは、ニュージーランドやニューカレドニアの周辺にある、世界最小、世界最薄、世界最年少の大陸で、その9割以上が海の底にある。現在見えているのはほんの一握りの島だけだ。
世界最小といっても、面積は490万平方キロでインド亜大陸に匹敵する。それなのにほとんど知られていないのは、その存在がはっきり証明されたのが、2017年とつい最近の話だからだ。
この発見までには、一番最初にヨーロッパ人がその大陸を目にしてから、じつに375年の歳月が流れている。
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始まりはニュージーランド発見から
ジーランディアの存在が証明されたのはつい最近のことだが、そこに大陸があるという伝説は大昔からあった。地球球体説を信じた古代ギリシャの知識人は、当時知られていた大陸がどれも北半球に偏っていたことから、南半球にも大陸があってバランスがとられているはずだと考えたのだ。
大航海時代、そんな伝説の大陸探しを命じられたのが、オランダの探検家で、オランダ東インド会社に勤務していたアベル・タスマンだ。
1642年8月14日、タスマンは2隻の小型船でインドネシアのジャカルタを出発し、やがてニュージーランドの南島にたどり着いた。
これはヨーロッパ人による初のニュージーランドの発見だったのだが、あまり平和的なものではなかった。
タスマンは、そこに暮らしていたマオリ族と争いになり、死者を出すような流血沙汰になる。
タスマンはその運命の地を「ムーデナーズ湾(人殺しの湾)」と名付け、せっかくの新天地に降り立つことなく、帰路についた。
だが、少なくとも彼は南方大陸(当時はメガラニカと呼ばれていた)を発見したと信じていたようだ。今にしてみれば、彼は本当に正しかったのだ。
ジーランディア最初の証拠が見つかる
次にヨーロッパ人がニュージーランドを訪れたのは、およそ100年後のことだ。1769年、イギリスの地図製作者ジェームズ・クックは、エンデバー号による科学航海の最中、ニュージーランドを訪問。ここを一周してニュージーランドが島であることを明らかにする。
さらに100年後、ジーランディアの存在を示すもっと直接的な証拠が初めて見つかる。
1895年、スコットランドの自然科学者ジェームズ・ヘクターは、ニュージーランド南岸に浮かぶ島々を対象とした調査航海に参加。最終的にニュージーランドは水没した大きな大陸の残骸であると結論づけた。
ヘクターの発見は画期的なものだったが、それによってジーランディアの研究調査に勢いがついたわけではなかった。
第8の大陸はロマンを感じさせはしても、並大抵の努力では発見することができない。それだけの労力とコストに見合うメリットがない以上、誰も急いで探し出そうとはしなかった。

タスマンの航海から375年後、ついにジーランディア発見へ
だが1960年代になると、ようやく変化の兆しが見えるようになる。この頃、大陸の定義についての地質学者たちの議論に決着がついた。
彼らが合意した大陸とは、「標高が高く、さまざまな岩石が存在し、厚い地殻を持つ地質地域」である。これが重要なのは、第8の大陸の存在を証明するための土台となってくれるからだ。
さらに1995年、アメリカの地球物理学者ブルース・ルエンダイクが、「ジーランディア」という名称を提案し、第8番目の大陸というアイデアは再び注目されることになる。
ちょうど同じ頃、国連海洋法条約が発効した。これによって各国は、海岸から200海里までの「排他的経済水域」のさらに先に広がる、大陸棚の資源を採掘する権利を主張できるようになった。
国家にとっては、これが水没した大陸探しを支援する直接的な動機となった。
ニュージーランドは、自国がただの島ではなく、大きな大陸の一部であると証明できれば、領土を6倍に広げることができたのだ。
ニュージーランド政府は、研究者を後押しするべく調査予算をたっぷりと用意して、ジーランディアの証拠を集めさせた。
ニュージーランドがオーストラリアに匹敵する海底大陸の一部であると発表されたのは2017年。タスマンによる南島発見から375年後のことだ。これによって第8番目の大陸の存在が証明された。
大陸といっても、そのほとんどは海中に沈んでいる。海の上から見える姿は、ニュージーランド、フランス領ニューカレドニア、オーストラリア領ロード・ハウ島とボールズ・ピラミッドといった島々にすぎない。

photo by iStock
約400年たった今も謎めいたジーランティア大陸
こうして発見された第8番目の大陸ジーランディアは、タスマンの冒険から400年近く経った今でも多くの謎に包まれている。かつてゴンドワナ大陸の一部だったジーランディアは、どのようにしてそこから切り離されたのか?
恐竜をはじめ、そこにはどのような動物が住んでいたのか? ニュージーランドにも現れている奇妙なねじれはどのようにして形成されたのか?
この海底大陸には、専門家を惹きつけてやまないいくつものミステリーがある。

ジーランディアの発見は、困難な状況に負けることなく忍耐と情熱をもって取り組んできた冒険者と研究者の物語だ。
同じ忍耐と情熱が、いつの日かそうしたミステリーを解明してくれるかもしれない。
References:The missing continent that took 375 years to find / The missing continent that took 375 years to find - BBC Future / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
大陸であったなら膨大な地下資源が眠ってる可能性が高い
つまりあの国に注意しないといけない
2. 匿名処理班
ムー大陸やアトランティスのようだが、これは証明されてるのか。
3. 匿名処理班
こういうの浪漫溢れすぎてて好き
4. 匿名処理班
話は聞かせてもらった
ここがアトランティスなんだ!
5. 匿名処理班
ジーランディアは1995年に名付けられたのか。名前がついたのはかなり最近なんだね。
つまり、先に「New・ジーランド」という名前があったから、あとからNewじゃない「ジーランド」が見つかったってことなのかな。
6. 匿名処理班
>>4
ΩΩΩ<な、なんだってー!!
7. 匿名処理班
ゴンドワナ大陸の一部だったのなら今のニュージーランドに土着の地上性哺乳類がいないのはなぜだろう 大陸プレートの縁で元々海底にあったものが隆起したからなのかな
8. 匿名処理班
あながちムーとかアトランティスとか
実在したのかもね例えば1万2000年前とかは
海面潮位が低く世界中の陸地面積が大きかった
海沿いにいた人間たちの集落や遺跡もあったとしても
今は海の中でそんなものが世界中にあるわけだ
9. 匿名処理班
海底に眠るジーランディア大陸には、人工衛星による調査で人工物と思わしき長い距離に渡るライン状の何かが存在する事も判明しているのですよね
10. 匿名処理班
何故沈んだんだ
11. アユラ
九十九島(つくもじまじゃなくて、くじゅうくしま)と
同じで、逆に海が消えて陸になった所は他所の方にも
有りそう気がします。(地殻変動って、面白いですね。)
12. 匿名処理班
>>9
ジーランディアが沈んで、現在の状態になったのは約2000万年前と言われているから、単なる自然地形でしょうね
13. 匿名処理班
>>7
決して大きいとは言えない島国だから、当初は生息していたものの、歴史の途中で絶滅したのかも?
14. 匿名処理班
かつてプレートの境目としてもう一つ湧き出る所なり有ったけど、冷えて活動停止になって海溝プレートの力で東西とも沈み込んだのかもしれないね。
ひょっとしたら沈んでいたジーランディアが浮き上がるような超大きな東西のプレートの反発からの大災害もあるのかもしれない。
何十万〜何千万年単位だととんでもない地殻変動もあるようだし
15. 匿名処理班
オーストラリアとぎりぎり引っ付いてないのが気になる
16. 匿名処理班
>>4
アトランティスがあるのは大西洋、これは南太平洋
なぞらえるとしたらムー大陸ですね
17. 匿名処理班
>>7一度全水没して陸上の生き物が全滅したらしい(隆起したのが今のニュージーランド部分)