
現在のバルカン半島とアナトリア半島との間に横たわっていたことから、「バルカナトリア」と呼ばれているこの大陸は、ヨーロッパの「動物相」(特定の地域内に分布する動物の全種類)に大きな変化をもたらした犯人かもしれない。
バルカナトリア大陸が、陸の橋となって、アジアの哺乳類がヨーロッパに進出する手助けをした可能性があるというのだ。
バルカナトリア大陸の存在が動物相を変えた
バルカナトリア大陸は現在、大半が地中海東部に沈んでしまっている。しかし5600万〜3400万前の始新世初期には、海面が低かったために水面に姿を現していた。それが一時的な陸橋となって、3400万年前のヨーロッパの動物相を一変させた可能性があるという。
「グランド・クーピュア(大断絶)」と呼ばれるヨーロッパの動物大絶滅への「道筋をつけた」と、『Earth-Science Reviews』(2022年1月18日付)に掲載された研究では述べられている。

アジアから大量に哺乳類が流入
化石の調査からは、ヨーロッパ固有種に致命的な圧力を与えたこの動乱の原因は、サイからハムスターまでの各種哺乳類がアジアから大量に流入したことであると推測されている。フランス、環境地球科学研究教育センター(CEREGE)の研究員で、ワシントン大学の客員助教でもあるアレクシス・リヒト氏を中心とする研究グループは、「いつ、どのようにしてアジアの哺乳類クレードがヨーロッパ南東部に進出したのか、あまり理解されていない」と論文で説明する。
研究グループはこの謎を解明するべく、新しい化石を集めるとともに、中央ヨーロッパからコーカサス地方までの化石発掘地を包括的に再検討している。これについて、論文では次のように述べられている。
「始新世のユーラシア大陸における哺乳類の分布は、これまで認識されていなかった生物地理学地域(ここではバルカナトリアと呼ぶ)の存在を裏付けている」
「バルカナトリアには、始新世に一時的に浮き沈みしたという複雑な歴史があり、"不連続な群島”や"広く連続した島"などと表現されてきた。――それゆえにアジアの哺乳類は、バルカナトリアを経由する”南ルート”にそって、ヨーロッパ南東部に散らばって行ったのだと説明されてきた」

アジアの哺乳類は本当にバルカナトリアを渡ったのか?
しかし、アジアの哺乳類がバルカナトリアを渡ったという仮説は、現在も議論されるところだ。バルカナトリアの東西両端から採取された化石によれば、3400万年前のグランド・クーピュアまで、他の地域とはまるで違う哺乳類が存在したと考えられるからだ。
どうも孤立していたらしい生態系は、アジアの哺乳類は別のヨーロッパ進出ルートを通過しただろうことを示唆している。さもなければ、彼らがバルカナトリアを渡った証拠がもっと発見されているはずだからだ。
こうした疑問に反論するため、リヒト氏らは、トルコで発見された3500万〜3800万年前の化石を提示している。
それはアジア原産の「ウマ目(奇蹄目)」のもので、グランド・クーピュアが起きる以前、そうした動物がバルカナトリアを経由してアジアからヨーロッパへと移住してきたことを証明している。
また既存の研究を再検討した結果、バルカナトリアの固有種である「後獣下綱」(有袋類の仲間)や、カバのような「重脚目」が特定されている。
このような特有の動物がいた事実から、そこが長い間周囲の大陸から孤立していただろうことがうかがえる。
このこともまた、かつてバルカナトリア”島”が存在し、やがてアジア、ヨーロッパ、アフリカを結びつける架け橋になっただろうことを裏付けているという。

バルカナトリアの奇妙な野生生物とその地理的な重要性を理解するには、この失われた大陸や周辺地域からさらに多くの化石を発見する必要があるという。
今回の新しい研究は、さまざまな地域の動物たちがヨーロッパで衝突した激動の時代の様子を、私たちに垣間見せてくれている。
References:Scientists Discover the Long-Lost Continent ‘Balkanatolia’ / A Forgotten Continent From 40 Million Years Ago May Have Just Been Rediscovered / written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1.
2. 匿名処理班
考古学や動物学の人が新たなモノを発見しマンドクセと
ぶつぶつ言いながら顔はいい笑顔で論文書いているのが
目に浮かぶ
3. 匿名処理班
太古のロマンに思いを馳せる( ̄ー ̄)
4. 匿名処理班
ムー大陸とか
あながち有りなのかもね
5. 匿名処理班
>>4
規模も内容も違いすぎて、比較にならないぜ
人類どころか、尾のないサルがでてくるかどうかという時代でもあるし