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極小のダイヤモンドの球体からクリーンなエネルギーを生み出す技術

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(著) (編集)

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 昨年12月5日、米カリフォルニア州の研究所で今後40年は不可能とされた「核融合反応の点火」に成功したそうだ。

 ローレンス・リバモア国立研究所の国立点火施設で行われた実験では、小さなダイヤモンド製の燃料カプセルに192本のレーザー光線を照射。それによる高温と高圧力によって核融合反応が発生した。

 これが革新的なのは、「発生したエネルギーが入力されたエネルギーより大きい」ことが史上初めて確認されたからだ。

 太陽と同じ仕組みで得られる無限のクリーンエネルギー実現へ向けて、重要な一歩が踏み出されたことなる。

 実用化までにはまだまだ克服すべき課題がいくつもあるが、重要な最初の一歩を踏み出せたことで、技術革新が加速すると研究者は期待している。

核融合の核「ダイヤモンド燃料カプセル」

 国立点火施設の”核”とも言えるのが、「ダイヤモンド燃料カプセル」だ。コショウの粒ほどの小さなものだが、その中に核融合を引き起こす燃料が入っている。

 カプセルの生産を担当するのは、ドイツのダイヤモンド・マテリアル社だ。

 カプセルに求められる性能は非常に厳しい。燃料を点火して核融合を引き起こすには、カプセルが完璧につるつるでなければならず、汚染も一切許されない。

 表面のでこぼこを極限まで減らし、不純物もつかない製造法を考案するために長い年月が費やされたという。

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核融合反応の点火に成功したローレンス・リバモア国立研究所の国立点火施設。ここには世界最強のレーザーがある / image credit:LAWRENCE LIVERMORE NATIONAL LABORATORY

 ダイヤモンド燃料カプセルを作るには、炭化ケイ素の芯にダイヤモンドの結晶を丁寧に重ねつつ、丹念に磨いていく。

 それは20~40個作るのに2ヶ月かかるほど根気のいる作業だが、それでも顕微鏡レベルでは表面にでこぼこが残ってしまう。

 そこで磨き上げたカプセルをさらにダイヤモンドでコーティングしてやる。するとまるで鏡のように美しい表面に仕上げることができる。

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ダイヤモンド燃料カプセルの表面は鏡のように滑らか / image credit:LAWRENCE LIVERMORE NATIONAL LABORATORY

 その後ダイヤモンド燃料カプセルから芯を抜き取り、細いガラス管で「重水素と三重水素」を注入する。これが核融合の燃料となる。

 ここにさらに金と劣化ウランの筒と、カプセル内を冷却するためのアルミ製の筒をかぶせる。こうして3重の層で構成されるダイヤモンド燃料カプセルが完成する。

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レーザーによる核融合を起こすには光学技術の進歩も必要 / image credit:LAWRENCE LIVERMORE NATIONAL LABORATORY

 だがこれだけでは足りない。国立点火施設で使われているレーザーは世界最強のレーザーだ。強力すぎるために、一度起動するだけで、光学系の部品がダメージを受けてしまう。

 そのため国立点火施設の研究者は、1970年代初頭から専門のガラスメーカーや光学機器メーカーと密接に連携して、過酷な実験に耐えられる体制を整えてきた。

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世界最強のレーザーを照射し、カプセル内の燃料に核融合を引き起こす / image credit:LAWRENCE LIVERMORE NATIONAL LABORATORY

夢のエネルギーの実用化へ向けて

 核融合反応の点火に成功したとはいえ、核融合エネルギーの実用化までにはまだまだ時間がかかる。

 今後も研究を続け、核融合発電所の建設にともなう工学的な難題を克服し、高エネルギーの負荷に耐えられる材料を見つけねばならない。

 だがこの成功は、世界各地の優秀な科学者の注目を集め、より多くの開発資金を呼び込むことで、核融合エネルギー開発に弾みをつけてくれるだろうと関係者は期待している。

 ローレンス・リバモア研究所最大の企業パートナー、ゼネラル・アトミックス社のマイク・ファレル氏は、実験の成功によって今後さらなるサポートが期待できるとBBCで語る。

 「この実験は科学者の意見を一変させました。それまで点火はあと40年は無理だろうと思われていたのです。12月の結果は、目を見張るものでした」

 ファレル氏は、一度ブレークスルーが起きてしまえば、その後の展開は一気に加速すると指摘する。基本的な方法さえわかれば、それはどんどんと改善されていくからだ。

 「ライト兄弟による世界初の飛行は1903年のことです。1950年代には超音速機が空を飛びました。40年かそこらで、あっという間に進歩するのです」

References:Scientists are using a tiny diamond sphere that could change life as we know it / The tiny diamond sphere that could unlock clean power – BBC News / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント 39件

コメントを書く

  1. 安全と分かってても、核に対する理解は進んでないから
    そっちとの闘いのほうが長そうですね

    • +9
    1. >>1
      核分裂も核融合も、危険なのは技術そのものよりも扱う人間の社選さだと思うんだよね。
      燃料をバケツで運んだり電源施設を津波が直撃する場所に作ったり、扱う人間がだめだといくら素晴らしい技術を開発しても無駄になる。

      • +3
  2. クリーンな核融合は夢のエネルギー・・・・・・とはいえ、そこから生み出された熱で水を沸騰させてタービンを回すのは変わらないらしい。
    もっとこう、熱交換率がめっちゃ高くなる新技術が開発されないものだろうか。がんばれ科学者たち。

    • +5
    1. >>2
      科学の発達は、工学においては「手法が増える」のであって「優れた手法になる」のは選べる手法が増えたことによる副次的作用に過ぎない
      なので、大昔に見つけた手法が現在においても優れた手法であり続けるというのも良くある話

      • +4
    2. >>2
      現在主流の重水素と三重水素の反応(DT反応)で電荷を帯びたヘリウムを生成するので、MHD(電磁流体力学)発電と言うのも可能だが、DT反応では発生エネルギーの大部分を高速中性子が占めるため、中性子が炉壁に当たることによる発熱で湯沸かし発電を行うことになる。
      重水素対重水素(DD)反応、重水素対ヘリウム3(DHe3)反応であれば荷電粒子の割合が大きいのでMHD発電に適している。

      >>4
      重水素対三重水素(DT)反応では放射性物質である三重水素の保管が必要になるため、漏洩が懸念される(水素は極めて漏洩しやすい)。また反応で生じる高速中性子が炉材に当たることで放射化し、炉材の頻繁な交換と処分が問題になる。重水素対重水素(DD)反応、重水素対ヘリウム3(DHe3)反応なら上記の問題は解決されるが、反応温度がDT反応より高いので現状では困難である。

      補足:「核融合反応による熱出力エネルギーが入力エネルギーを上回った」ことが直ぐに実用化につながるわけではない。核融合発電を実用化するには、
      「核融合反応の熱出力エネルギー」>「ドライバーの入力エネルギー」、
      「ドライバーの入力エネルギ」=「核融合反応を引き起こす最低エネルギー」×「ドライバー効率の逆数」×「発電効率の逆数」
      を満たす必要がある。湯沸かし発電の効率は40%程度、ドライバー効率を10%程度とすると、実用的な発電に最低必要な熱出力は入力の10倍ぐらいになる。
      「ドライバーの効率」というのが最大の難点であり、本記事の装置だと電気エネルギー→レーザー出力の変換効率は精々数%程度ではないだろうか。

      • +4
      1. >>14
        勉強になります。
        今回は投入エネルギー<出力エネルギー程度なので、発電までにはまだ課題山積であることがよくわかりました。あちこちで効率を上げないとイカンということですか……
        クリーンといっても、熱中性子?にさらされた部品類は放射能を帯びることと思いますので、放射性廃棄物はそれなりにでるでしょうね。
        技術発展に期待してます。

        • 評価
    3. >>2
      核がクリーンだって???ww
      南相馬の汚染された土壌の山々を見たことが無いだろ
      汚染された範囲の土壌が全て、10cmぐらいだろうか(知らんけど)
      全部除去するんですよ

      • -19
      1. >>17
        ただただ「核」という言葉に踊らされて、話を全く関係がない方向に飛ばして煽るのはNG
        核融合と核分裂炉では発生する問題の方向性も違う

        • +12
    1. >>3
      爆縮レンズに原爆を使わないとなると、使用できるハードルが一気に下がるな…

      >>8
      それも微妙に間違え。核分裂よりは多くはないが核融合炉でも炉心が中性子汚染されるので、ある程度の放射能汚染された核廃棄物は発生してしまう
      核分裂炉よりははるかに少ないので(まだ)扱いやすい事だけは確かだけど

      • +5
      1. >>6
        自分で調べるとかしないのか?
        何でも解らないことは人に聞けばいいと思う根性が気に入らない

        • -11
    1. >>4
      現状の核分裂ほど不都合な物質が残らないし、出てくる中性子を熱に変えるからクリーンだぞ

      • +5
    2. >>4
      日米の研究チームが「放射性物質を使わない革新的な核融合技術」のテストに成功したというのが気になりますね

      • +4
      1. >>9
        燃料として「放射性物質は使わない」であって核融合をする以上、放射線とそれによる炉材の放射化はそれこそイスカンダルのテクノロジーでも無いと避けられない。

        • +3
    3. >>4
      核分裂と核融合混同してるだけですよ自分も昔はそうだった

      核分裂は中性子等をぶつけてウランの原子核を分裂させることで
      エネルギーを得るけど核廃棄物が出る、暴走すると止められない

      核融合はH3等の原子同士を超高圧で融合させることで
      エネルギーを得るけど核廃棄物は低レベル、暴走は起きない

      この記事の場合ダイヤが元々高密度炭素の塊だから
      核融合を起こす際のエネルギーロスが少なくなるようになる
      だから素材に最適なんでしょう

      • +6
  3. 「カプセルに求められる性能は非常に厳しい。燃料を点火して核融合を引き起こすには、カプセルが完璧につるつるでなければならず、汚染も一切許されない。

     表面のでこぼこを極限まで減らし、不純物もつかない製造法を考案するために長い年月が費やされたという。」

    ウーン🧐
    この時点でクリーンじゃない

    • -15
    1. >>10
      clean energy の意味がわかってなさそう

      • +4
  4. イメージとしては、火薬入れた圧力鍋をコンクリでガチガチに固めて溶鉱炉に放り込んで爆発させる、って感じで合ってる?
    炭素分子の結合の強さで高圧を生み出すってことなのかしら。
    1回使うとぶっ壊れる強力レーザーとか、色々胸熱でワクワクするな。

    ところで、根本的な疑問なんだけど。

    >発生したエネルギーが入力されたエネルギーより大きい

    …どして?(´・ω・`)

    • -3
  5. 核融合に使われた水素は
    地球上から永遠に失われていかないのかなぁって
    素朴な疑問なんだけど、怖い

    • -2
    1. >>13
      それ以上のペースで地球の大気は宇宙空間に散逸し続けてるので気にしなくて良いですよb

      • +6
  6. 小さな燃料カプセルに
    192本のレーザー光線を照射して
    高温と高圧力によって
    核融合反応を発生させるぞ

    ダイアモンドだね AH AH いくつかの場面
    AH AH うまく言えないけれど 核融合反応の点火だよ
    あのとき閃いた AH AH 理論は本物
    AH 今 私を動かすのは ダイアモンド

    • -4
  7. おらワクワクが止まらないぞ(w
    飛行機は約50年で音速の壁を越えたけど核融合発電が一般化するのに
    何ねんぐらい掛かるだろうか?
    割と早いと良いな

    • 評価
  8. 多分とんでもない費用がかかるよなあ…
    どうすれば石炭火力より安くできるか

    加速器では絶対無理なのかな?

    • 評価
    1. >>19
      加速器駆動未臨界炉(ADSR)というものがあり、これは加速器で高速陽子を核分裂性物質に照射し、陽子と核分裂性物質の核融合反応で生じた中性子が周囲の核分裂性物質を核分裂させるというものだ。
      ADSRは核融合炉と核分裂炉のハイブリットであり、このシステムの利点は燃料の濃縮度を未臨界にすることで加速器停止により核反応が絶対に停止する(チェルノブイリ型の事故は原理的に生じない)、燃料を溶融塩のような高沸点のものにすれば最悪空冷でも冷却が可能なことである。問題点としては加速器の能力及び効率が実用的なレベルに達していないことで、レーザー核融合に似た欠点である。

      • +1
  9. 入力したエネルギーより大きいエネルギーが採り出せたのはいいことだが、この燃料カプセルの製造にも結構なエネルギーかかってるように聞こえるな。
    将来は+になるとしても現状ではトータルでーだったりして。

    • +3
  10. ツルツルに磨く技術なら日本の方がありそうだなと思った

    • +1
  11. 材料等を製造するために費やしたエネルギーも含めて、得られるエネルギーの方が大きいのかな?
    それなら凄いことだけど。

    • -1
  12. そこから生まれたゴミがダイヤモンドダストになるんかな

    • -1
  13. でも結局水を熱して蒸気タービンまわすんでしょ?

    • 評価
    1. >>30
      それ以上に効率のいい変換方法が発見出来たらノーベル賞もらえるわ
      うまく権利を確保できれば一生どころか子孫数世代にわたって食うに困らない金が手に入るぞ! がんばれ!

      >>34
      「大気散逸」で調べると結構びっくりすることになるよw

      • +3
  14. 同時に高温の超電導技術の開発もお願いします。

    • +3
  15. ヒトは太陽を手に入れた?
    イカロスにならなきゃいいけど……

    • +1
  16. コメ欄を見てると核融合を全く理解していない人がまだまだ多い事がよくわかる。
    核融合に限らず物事をきちんと理解せずに、語感だけで脊髄反射を起こして拒絶する人が多いうちは政治でも経済でも科学技術でも日本の低迷は続くんだろうなぁ。。。

    • +5

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