
Photo by:ITER
フランスで建設が進めらている核融合実験施設「ITER(イーター)」に、世界最強の磁石が組み込まれようとしている。EU、日本、アメリカなど、7か国が参加するITERは、核融合エネルギーの科学的・技術的実現性の証明を目指す国際的な超大型プロジェクトだ。
地球の磁場の28万倍もの強力な磁石が組み込まれる理由は、核融合反応炉を金属面から離れたところに封じ込め、超高熱で溶けるのを防ぐためだ。
広告
地球上の小さな太陽を再現するITERの核融合反応炉
太陽をはじめとする恒星が燃えているのは、巨大な重力の圧力によって水素原子のペアが融合してヘリウム原子になるときに、大きなエネルギーが放出されるからだ。ITERの核融合反応炉は、このプロセスを再現することで、エネルギーを発生させる装置である。いわば地球上に作られる小さな太陽のようなものだ。
その1つの特徴としては、核分裂によって発電する原子力発電所に比べると、放射線や放射性廃棄物によるリスクが低いことが挙げられる。
また二酸化炭素が出ることもなく、燃料となる重水素も海水から豊富に手に入れることができる。さらに万が一トラブルが起きたとしても、絶対に暴走することがなく、安全性が高い。
こうした数々の利点があるために、現代社会が直面するエネルギー問題と環境問題を解決するエネルギー源だと言われている。
ITER-世界最大のパズル(2020年更新版)
強力な磁石で核融合反応炉を金属面から離れたところに封じ込める
しかし太陽のような巨大な重力を利用できない地球上でこの核融合を起こすには、1億5000万度以上という超高温が必要になる。残念ながら、地球にこれほどの高温に耐えられる物質は存在しない。あらゆるものが蒸発してしまう。
そこで、強力な磁石で核融合反応炉を金属面から離れたところに封じ込める必要がある。今ITERに組み込まれようとしている世界最強の磁石はそのためのもので、「中央ソレノイド」という。

地球の磁場の28万倍の磁力を持つ「中央ソレノイド」
中央ソレノイドは、6つのモジュールで構成されている。アメリカ、カリフォルニア州にあるゼネラル・アトミックス社の工場で、各モジュールに43キロのニオブ錫超伝導体のコイルを巻き、3800リットルのエポキシ樹脂で封印。こうして完成したものを、フランスのITER建設現場に輸送する。
最初のモジュールはすでに6月に出荷済み。その次のものも(予定通りなら)8月には出荷されているはずだ。
完成すれば高さ18メートル、幅4.2メートル、重さ1000トンと巨大なものになる。そこから発生する磁場は13テスラ。地球の磁場のじつに28万倍も強力だ。
それが収められる部分も、その強力な磁力を受け止めるために、スペースシャトルが離陸するときの2倍の推力に耐えられる構造となる。
2021年6月に米国カリフォルニア州のゼネラルアトミック工場から出荷された最初の中央ソレノイドは2021年9月9日にITERサイトに到着した
ITERの運用開始は2025年
ITERは当初、建設候補地として青森県六ヶ所村(日本)とカダラッシュ(フランス)が挙げられていたが、2005年6月、カダラッシュに建設することが決定された。ITERが完成すれば世界最大の核融合反応炉となり、2025年からその運用が予定されている。目指すのは、核融合反応炉に費やされる以上のエネルギーを得ることである。
ITERの参加国は、日本、フランスを含む欧州連合(JET)、アメリカ、ロシア、インド、中国、韓国である。
ちなみに「ITER」とはラテン語で「道」を意味する。その名の通り、核融合エネルギーが実現する未来へといたる道になるだろうか?
References:World's most powerful magnet being shipped to ITER fusion reactor / written by hiroching / edited by parumo
追記(2021/09/23)本文中の溶けてを蒸発に変更して再送します。 あわせて読みたい





コメント
1. 匿名処理班
絶対に暴走することはないとか流石に誇張しすぎ感ある
2. ほえほえ
アレか、スターオーシャン。
3. 匿名処理班
手塚治虫先生と藤子F先生に
「エネルギー問題は解決しました」と
ご報告できる時代がくると良いですね。
4. 匿名処理班
暴走しようが無いから仕方ないね。
5. 匿名処理班
ん?もしかして、こんなことやってるから、北極点がズレズレになって世界の気象がおかしなことになってきてるんじゃないの?
6. 匿名処理班
>>1
核反応が暴走しないのは誇張でもなく理論上確定してるからな
その他の設備が焼損とか2次災害を引き起こす可能性は別の話
7. 匿名処理班
ピップエレキバンが80ミリテスラ…だそうなので162ピップエレキバン?
強さの単位がよくわからないけど
この手のニュースでやべーやつとして挙げられるMRIが1.5〜3テスラと効くと13テスラの強さがわかる気がする。
8. 匿名処理班
※5
100mも離れれば地磁気より弱くなるだろうから、地球規模の影響はないんじゃないかな。
9. 匿名処理班
>>5
『ノミが人間サイズなら東京タワーさえ飛び越える』みたいな例えと同じじゃね?
いくら強力な磁石でも惑星の核サイズじゃなければ地球にとっては屁でもないと思うよ
10. 匿名処理班
頑張って欲しい。
核融合発電もさることながら技術の二次転用、電力ロスの少ない送電線、高温に耐えるステンレス、高磁気コイルを使うMRIの小型化・低価格、来る電動カー・リニアに使える技術もたくさんある。
あるいは福島のトリチウム(水)が燃料として使えるかも。
とても期待している。
11. 匿名処理班
※5
おとなしく頭にアルミホイル巻いとけ
12. 匿名処理班
つまりちっちゃい太陽を作ってみるのに強力な磁石が必要だと。これはすごい時代になってきた
13. 匿名処理班
※1
核融合を勘違いしているならYoutubeなどで勉強して戻って来い。
暴走できない(1億5000万度を維持できない)のが悩みの種なんだよ。
まあ、バカに言っても無駄だろうけど。
14. 匿名処理班
放射性物質の三重水素が漏洩するリスクがある、核反応で発生する中性子によって原子炉容器が高レベル放射性廃棄物になるといった問題があり、必ずしも核融合は環境に優しいとは言えない。
15. 匿名処理班
大学の低温物性の測定のときにMPMS(だったかな)で
5Tぐらいの磁場をかけた記憶があるから13Tと聞くと
別に大したことないように感じるな
パルス磁場ならそこら辺の大学でも50Tとか出せるんじゃないの
16. 匿名処理班
※14
文明を維持するのに電気が必要な以上、
核融合が100%クリーンじゃなくても、もっと環境負荷が重い発電所を止められればそれでいいんだよ
もっと環境負荷を減らしたいなら電気の需要を減らす方向性の話になるわけで、それは発電技術の問題じゃない
17.
18. 匿名処理班
そろそろ、とある博士が便利な粒子を発見する予定なんだけどなー。
19. 匿名処理班
※14
環境に、じゃなくて人間にでしょ。
20. 匿名処理班
こないだ臨界点(生成エネルギー>投入エネルギー)を超えたと話題になってたな。
自己点火条件を達成できればパラダイムシフトが起きる。
21. 匿名処理班
頑張って欲しいけど、トカマクはムリポになったみたいだからなあ…
22. 匿名処理班
病院のMRIも7Tくらいなら日本でも数台あるから、あまり凄さを感じない
23. 匿名処理班
小型化してモジュールチップ型にして乗り物にセットした方が効率的だがそこまでの技術力は無いのか、金属水素作れそうな気もするが
24. 匿名処理班
アイアンマンで見た
25. 匿名処理班
どうせDTだろ
DはそれなりにあるがTはそんなにない
26. 匿名処理班
>>14
それは融合反応自体の事ではないよね
27. 匿名処理班
ほう!これはすごい!わたしの部下に欲しいぐらいですよ
ちなみにわたしの磁力は53万です
28. 匿名処理班
どうりで最近東のほうに引っ張られている感じがすると思った。
29. 匿名処理班
え、これ肩に貼ったら肩こりも体内の鉄分も取れるの?
30. 匿名処理班
>>1
おっ文系か?
31. 匿名処理班
最初の計画だと2005年頃に完成するはずだったんだけど20年も遅れたのは何が原因だったんだろう。当時はトカマク方式が無難だったけどその後螺旋を組み合わせるヘリカル型が実績を上げてもうすでにトカマクは古いのではって感じるんだよな。設計にかかわってる人の記事にトカマクでは本格的な発電はできないって書いてあったの読んだこと有る。
32. 匿名処理班
ザンパノーー!
33.
34. 匿名処理班
地球の磁場ってコンパスの針がやっと動くくらいの強さやで。あまり比較にならないでしょ
35. 匿名処理班
※34
でもどこにいてもコンパスの針が動くってよく考えたらとんでもない事だと思うんです。
36.
37. 匿名処理班
※26
重水素対三重水素反応
H2+H3=He4+n
この式におけるnが中性子であり、これが原子炉容器に衝突すると炉材が放射性物質になってしまう。
※1
核融合炉自体が巨大な超電導磁石で構成され、超電導状態が何らかの外乱で解除されるクエンチという現象があり、クエンチが起きると大電流のエネルギーが解放され電磁石が発火・爆発する可能性がある。これは同じ超電導磁石を用いるリニアモーターカーでも問題になっている。
38. 匿名処理班
核融合発電、現在に於いてはこれが環境問題と経済を両立できる唯一の道で、完成したら多くの環境問題は解決に向かうのに、何故か環境問題に熱心な人に反対論も多い。
何故かと考えてみると、とにかくなんか反対してればカッコいいと思ってる人だからなのか?本心は経済なんかぶっ壊れてもよく、ただ自然に返りたい欲求の持ち主だからなのか?これが完成して人生を捧げていた環境問題が解決してしまったら自分の生き甲斐や存在価値、はたまた収入源が無くなっちゃうと思ってる人だからなのか?
とにかく、個人的な事情に引きずられて環境問題解決の道を邪魔する様では環境破壊してる人と同類。
39. 匿名処理班
三重水素を用いない核融合反応が実現できれば、漏洩の問題と炉材放射化の問題は解決され真に環境に優しいエネルギー源となる。候補として重水素対重水素、重水素対ヘリウム3、軽水素対ホウ素11といったものがあるが、いずれも反応を持続するために重水素対三重水素の2〜3倍の温度が必要になり、現在実現できる磁場強度では閉じ込めることはできない。
40. 匿名処理班
※1
それは核分裂反応ならの話です。核融合は文字通り「融合」させる事条件的に発生させにくいデメリットがありますがその分暴走はしません一般的に核で一元化されてるからな無理ないと思う、昔の自分もそうでした(笑)
核分裂は文字通り「分裂」させる事条件的に発生させやすいメリットがありますが火消しがしにくいでも核融合も問題はこれから仮に成功してもさあ電力をどう取るの?やら全然なのです、周りに更に大型なタービンやら熱伝達ポンプやらシステムの構築をしなければなりません実現まで本当の意味では2060年までかかるかもしれません。レーザー核融合もなかなか魅力的ですよ日本で開発が進んでる
41. 匿名処理班
※1
暴走ってのは連続的に反応が続くことなわけで、核融合の場合は燃料(今回は三重水素)の供給が止まれば反応も止まっちゃうので暴走しないわけ。いうなればガスコンロで火がついた状態が連続核融合中とすれば、ガスが止まれば火が消えますから、暴走できないわけ。あえて言うなら仮に燃料が異常に入ると反応が爆発的に進むから爆発するかもしれませんけど、それで終わりです。
これに対し核分裂の場合は臨界に達したら減速材で分裂を押さえないとずっと核分裂が連続で進むので暴走しちゃうわけ。だから減速材は通常高いところにあって、万一の時には重力で燃料棒の間に落ちて暴走を止めるように設計してありますが、引っかかって暴走が止まらないパターンがあったはず。
ITER は私はアイターって読んでましたw……しかし、まだ完成してなかったのね。ちょっとビックリ
42. 匿名処理班
これだけ磁力強いと血液中の鉄分とか引っ張られたりするのかね。X-MENの磁界王マグニートはそういう操作で敵倒したりするけど。
43. 匿名処理班
>>1
苦労してプラズマ作らないと維持できないって事はちょっとでも制御が崩れたら反応が止まっちゃうっこと
44. 匿名処理班
>>29
銀歯取れてしまうなとは思った
45. 匿名処理班
※43
高温のプラズマを閉じ込めるには磁気シールドを均等に展開する必要があり、少しでも均等が崩れるとプラズマの形状が崩れ炉壁に触れて反応停止となる。
逆にプラズマを一瞬だけ維持できれば良いという考え方の核融合も存在し、これは重水素と三重水素を詰めたガラス球にレーザービームを照射するというもので小型の水爆と考えてよい。この方法もレーザービームの効率が低すぎて出力が投入エネルギーを上回ることができていない。
46. 匿名処理班
この磁石が埋まっていた辺りも地球の地場では?
47.
48. 匿名処理班
何かの漫画で原発を
「星(神)の力を人が扱おうとするのは傲慢ではなかろうか」
て描いてて「いや厳密には星の力ではないから」と突っ込んだが、
とうとう神の力を・・・
49. 匿名処理班
実用化に目処が付くことを祈るよ。
50. 匿名処理班
>>14
補足
高レベル放射性廃棄物とは従来型の核分裂燃料の燃えかすを指すので、放射化した構造材は低レベルに当たりますね
51. 匿名処理班
各国の合同出資額2兆5000億円とかエグすぎるな
ビジネス的に考えたら、高くつく核融合炉より太陽光パネル普及の方が楽でないか
52. 匿名処理班
>>51
ビジネス的には全くペイしないだろうね
公共事業ってのはこういう世代を越えた超長期投資するためにあるからまあ当たり前ではある
53. 匿名処理班
なんか、普通の原子炉の方がまだ安全そう。