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史上初、実験室で作られた人間の「ミニ脳」が視覚刺激に反応する瞬間を目撃

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(著) (編集)

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 史上初めて、人間の「脳オルガノイド」がマウスの脳と融合して、視覚刺激に反応する瞬間が目撃されたそうだ。

 脳オルガノイド(ミニ脳)とは、ヒト幹細胞を培養し実験室で作製した、脳に似た構造の小型の組織体のことである。

 人間のミニ脳をマウスの大脳皮質に移植すると、3週間のうちに両者の間でシナプスが結合。マウスの脳からは血管が伸びて、脳オルガノイドに栄養を与えようとすらしていたとのことだ。

ミニ脳が外部刺激に反応したのを初めて確認

 ヒト脳オルガノイドは、いわば人間の脳の3Dミニチュア(ミニ脳)で、神経の発達や障害を研究するモデルとして利用されている。

 人間の幹細胞から作られるヒト脳オルガノイドには、小さいながらも本物の脳のような神経活動がある。

 だが周囲の組織と結びついて、外部刺激に同期して反応することが確認されたのは今回が初めてだそうだ。

 それが難しかったのは、技術的な問題があったからだ。これまでの電極アレイでは、そのときのわずかな電気活動を記録できなかったのだ。

 そこでカリフォルニア大学サンディエゴ校などの研究チームは、プラチナ・ナノ粒子で透明なグラフェン微小電極アレイを開発し、このハードルを乗り越えることに成功した。

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photo by Unsplash / Hal Gatewood

マウスの脳とヒト脳オルガノイドが融合する様子を観察> マディソン・ウィルソン氏らが行った実験では、マウスの大脳皮質にヒト脳オルガノイドを移植。それから白色光(視覚刺激)で照らして、そのときの神経活動を新開発の電極で観察した。

 するとマウスの脳はもちろんのこと、移植されたヒト脳オルガノイドでも、視覚刺激に対して同じように反応することが確認されたという。

この実験では、視覚刺激が脳オルガノイドに電気生理学的反応を生じさせ、それが周囲の大脳皮質の反応と同じであることが明らかになりました(ウィルソン氏)

 その様子は文字通り”目撃”されている。二光子イメージングという高性能顕微鏡で観察したところ、マウスの血管が脳オルガノイドに伸びて、栄養とエネルギーを与えようとしていることがわかったのだ。

 さらにマウス脳と脳オルガノイドでは脳波のシンクロも見られた。

 ウィルソン氏らによれば、移植から3週間でヒトとマウスの大脳皮質組織が機能的に結合したそうだ。

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photo by iStock

ミニ脳は人間の神経系の解明に役立つ

 結局、この実験では11週間続けられ、ヒト脳オルガノイドとマウスの大脳皮質が機能・形態的に統合される様子が観察された。

 こうした脳オルガノイドと神経記録技術は、神経レベルで病気をモデル化するのに役立つとのこと。

 いずれは、患者それぞれの遺伝子に起因する病気の治療法の開発、ダメになった脳の一部を脳オルガノイドで治療する方法といった研究にも使えるかもしれないそうだ。

 この研究は『Nature Communications』(2022年12月26日付)に掲載された。

References:Multimodal monitoring of human cortical organoids implanted in mice reveal functional connection with visual cortex | Nature Communications / Human “Mini Brains” Observed Responding To Visual Stimuli For The First Time | IFLScience / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント 16件

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  1. オルガノイドちゃらを移植されたマウスは、知能が高くなったりするのかな?

    • +4
    1. >>2
      そういう機能はないんじゃないかな

      • 評価
    1. ※4
      AIに人格を与えようとかヒトの脳細胞を培養して復元させようとか
      できそうではあるけど、倫理的にやっちゃいけないレベルの研究っぽいよね

      • +9
  2. 培養液の中にむき出しの脳みそが浮かんでいるイメージ

    • +7
  3. 将来すべての動物が人間になるっていう予言があったけどこれのことか?
    動物に人間の脳細胞を移植していくととんでもないことなりそう

    • +5
  4. アメリカの動物実験の義務付け撤廃のニュース見て、「人間以外の動物で有効でも人間では使えないってこと多いし、AI発達やミニ臓器とかもあるからそれで済むことならそれでいいよな」と思ってたんだが…
    作ったものが生体内で稼働するか試そうとするとこうなるよな…

    別に動物実験即刻やめろとか極端なこと言うつもりなんてないけど、こういうキメラ的なのは肉体痛めつけ系とはまた別の方向で生理的嫌悪がすごい

    • +7
  5. ES細胞とかiPS細胞だとリンリガーとかいうのにミニ脳はいいんですかっ?!

    • 評価
  6. こういうのって再生医療とかに非常に役に立つとは思うが、
    同時に倫理的にそれをしていいのかと抵抗もある。

    筋肉や他の臓器は兎も角「脳」はもうその時点で一人?の人間なのでは・・・

    • 評価
  7. これって、2021年08月23日の
    『人工培養したミニ脳にしっかり見える「2つの目」を作り出すことに成功』の記事の、
    「4名のドナーから幹細胞から入手し、~脳オルガノイドを作成」「形成された目は原始的なものだ。だが脳の前に左右対称で並んでおり、きちんと機能する。さまざまなタイプの網膜細胞が含まれており、神経ネットワークも発達している。光を受ければ、それに反応して脳に信号を送る。」「原始的ではあっても、光に反応し、各種細胞が備わった体内の器官と同じ感覚構造を脳オルガノイドで再現できることを示した」ってのとは、何が違うの?
    物理的な眼球や網膜細胞という器官が無くても、
    脳への直接照射で反応が出たのが新しいってこと?

    • 評価
    1. ※20
      素人が読み取った範囲だけど、
      2021年の研究は「眼球から脳への信号」は確認できても、その信号が脳オルガノイド内でどう反応してたかは確認してない
      今回の研究は、視神経からの信号が脳オルガノイド内でちゃんと反応して機能していることが確認された
      ってことなのかと思った

      • +1
  8. ミニ脳って僅かながらも知性を持ってるんだよね?
    医療の面でとても重要な研究なのは理解できるんだけど…羊水に浮かぶ胎児に電極付けるイメージがよぎって仕方ない…

    • 評価

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