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実験室で作られた人造のミニ脳が難病の治療に光明をもたらす

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17件のコメントを見る

(著) (編集)

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 実験室で人工的に作り出したミニ脳を1年近く成長させることは、科学者が禁断の領域に足を踏み入れたことになるのだろうか?

 だが、これが「筋萎縮性軸索硬化症(ALS)」や「前頭側頭型認知症(FTD)」といった難病を抱える人にとって、一条の光明にも感じられるかもしれない。

 英ケンブリッジ大学の研究グループは、ALSやTFDを発症させる突然変異遺伝子を組み込んだ「ミニ脳」を240日間成長させることに成功、既存の薬を投与したところ、治療効果が確認されたとのことだ。

 この成果は『Nature Neuroscience』(21年10月21日付)で発表された。

難病と言われているALSとFTD

 「筋萎縮性軸索硬化症(ALS)」や「前頭側頭型認知症(FTD)」は、いずれもこれといった治療法がなく、患者のそれまでの生活を大きく変えてしまう難病だ。

 ALSは、運動神経にダメージを与え、徐々に全身の筋肉を動かなくしてしまう病気だ。かかってしまえば回復することはなく、いずれは呼吸すらできなくなり、死にいたる。

 他方、FTDは、脳の前頭葉や側頭葉に病変が現れる認知症の一種だ。認知機能が損なわれる結果として、人格の変化や行動の異常などが現れる。

 どちらも別々の病気でありながら、奇妙なことに併発することが多い。たとえばALS患者の3分の1にFTDが生じる。そうなると、体の麻痺と認知機能の低下といった、それぞれの病気の最悪の症状が現れることになる。

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photo by iStock

難病を抱える脳オルガノイドの延命に成功

 どちらも今のところ治療法のない難病だが、脳オルガノイド(幹細胞から人工的に作られたミニチュアの脳)の登場によって、その状況も変わるのではと期待されている。

 見た目は本物の臓器とは似ても似つかない。それでも、生物学的には本物とほぼ同じ特徴を備えており、生身の人間では試せないさまざまな病気の治療法を実験することができる。

 ただオルガノイドには寿命が短いという欠点がある。しばらくすると死にかけの核ができて、ダメになってしまうのだ。特に脳のオルガノイドがそうだ。

 しかし今回、ケンブリッジ大学の神経科学者アンドラス・ラカトス氏らは、脳オルガノイドを240日間生存させることに成功した。

 しかも、それはただの脳オルガノイドではない。遺伝子にALS・FTDを発症させる突然変異がある脳オルガノイドだ。

 これは細胞をスライスする新しい技術のおかげで、従来よりも酸素と栄養をうまく供給できるようになったことが要因であると考えられている。

 また、まだ論文としては未発表だが、すでに340日間の生存に成功したオルガノイドもあるという。

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image credit: University of Cambridge

既存の治療薬の効果を確認

 この研究でラカトス氏らは、ALS・FTD関連突然変異を宿した脳オルガノイドを成長させ、病気が脳細胞(特に、筋肉の動きや認知を司るグリア細胞のアストロサイト)に与える影響を観察した。

 これによって、「GSK2606414」という既存の治療薬が、ALS・FTDによる細胞のストレスを和らげ、死を防ぐうえで有効であることを確認できたという。

 脳オルガノイドの寿命を延ばせたおかげで、近い将来、今回の薬以外のALS・FTD治療法も素早く試せるようになるだろうと期待されている。

 これまで1つの病気の治療法を開発するには、何十年という長い時間がかかった。しかし今回の研究は、それが近いうちに数年単位にまで短くなる可能性を示唆しているとのことだ。

References: Cambridge Neuroscience / written by hiroching / edited by parumo

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この記事へのコメント 17件

コメントを書く

  1. 沙羅曼蛇とかメトロイドのボスみたいに
    手足が生えて襲い掛かってくるんだろ?

    • +2
  2. 以前、ミニ脳に眼球を作り出す事に成功したという記事がカラパイアに載ってたのを思い出した。

    あれ怖かったなあ…

    • +6
  3. 我々はどこから来て、どこへ行くのだろう…
    ろくな所じゃないのは確信できる…

    • -6
    1. >>5
      こういうのよく聞くけど、なんでそんな悲観的なんだ?しかも確信て。
      気持ちはわかるけど、なんとなーくでとりあえず悲観しても生きづらくなるだけやで。

      • +2
  4. めっちゃサムネがマヴラブでトラウマが…。

    • 評価
  5. これ本人が寂しがったり痛がってる可能性はないのか?

    • +1
  6. オルガノイドをどれだけ長く生存させるかって技術は、なんか園芸趣味に通じる気配を感じる。
    園芸には俗に「緑の手」なんて言うどんな植物でも上手に育ててしまう名人がときおり発生するらしい。

    オルガノイドの培養的「緑の手」の持ち主なら脳オルガノイドでも数年単位で育てられそう。

    • +7
  7. この脳って、物を考えるんだろうか、自我はあるんだろうかって考えるとものすごく怖い

    • +3
  8. 脳オルガノイドの改良を重ねるうちに、その中に精神が目覚めたりしてね…

    この私は、実は脳オルガノイドの内に宿った精神であり、外界の事柄はすべて、脳内に生じた妄想に過ぎなかったりしてね…

    そしてあなたも…

    • +3
  9. ALS患者の3分の1にFTDが生じるとは始めて知ったわ
    ALSの人は知能には全く影響がない、と聞いていたので
    でも自分がもしALSなら、確かに精神を正常に保っている自信はない
    それは一面患者さんの救いにもなるのではないだろうか?

    • +8
  10. このサムネはこの形の脳が実験で作られたっていう誤解を招く恐れが強いのでやめたほうが良いと思う

    • +10

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