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2つのブラックホールが偶然に衝突し、未だかつてない時空の波紋を広げる

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(著) (編集)

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 ブラックホール同士が衝突したとき時空に広がる波紋は、この謎めいた天体について多くのことを教えてくれる。

 2019年5月に検出された重力波GW19052」は、ほかに例のない非常に珍しいものだった。

 これまでに90個ほど観測されたブラックホールの衝突のほとんどは、「連星ブラックホール(二重ブラックホール連星)」によるのものだ。つまり2つの恒星で構成された連星が2つのブラックホールとなり、互いに引きつけ合って衝突したものだ。

 だが「GW19052」は、宇宙をさまようブラックホール同士が偶然に出会い、激しく衝突して1つのブラックホールに合体したときに発生した可能性があるという。

 もし本当なら、このようなブラックホールの”動的な出会い”の初の観測事例になるそうだ。

ブラックホールが衝突して合体したときにできる重力波

 アインシュタインの一般相対性理論によれば、質量をもった物体が存在すると、それだけで時空に歪み(ゆがみ)ができるという。さらにその物体が(軸対称ではない)運動をすると、時空の歪みが光速で伝わってくる。これが「重力波」と呼ばれるものだ。

 2つのブラックホールが衝突して合体した時、時空に波紋が広まる現象がまさに重力波だ。

 これまでの研究では、こうした重力波のほとんどは、長年連れ添った2つのブラックホール(連星ブラックホール)が合体して生じたものであることがわかっている。

 そうしたブラックホールは、おそらく恒星として生まれたときからずっと一緒で、いわば兄弟のような存在だった。

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photo by iStock

連星ブラックホールとは違う奇妙な重力波

 だが、宇宙を移動する2つのブラックホールの”動的な出会い”によっても重力波は発生する。

 2019年に検出された重力波「GW19052」は当初、2つのブラックホールが円軌道に沿って高速で回転しながら互いに接近し、やがて合体するプロセスで発生したものと考えられていた。

 ところがGW19052には、従来のブラックホールの合体では説明できない奇妙な点があった。それは10分の1秒未満と短く、鋭かったことだ。

 そこでドイツ、イエナ大学の天文学者ロッセラ・ガンバ氏らは、この重力波は、また別の種類の合体によって生じたのではないかと考えた。

 宇宙を移動する2つのブラックホールが動的に出会い、螺旋を描くことなく瞬間的に合体したときに発生したのではないかというのだ。

GW190521 The Impossible Black Hole

史上初めて観測された動的な出会い

 ガンバ氏らは、シミュレーションで衝突するブラックホールの軌道・回転・質量などを調整しつつGW19052の再現を試み、彼女らの仮説を検証することにした。

 その結果、2つのブラックホールは連星ではなかったことが示唆されたという。

 そうではなく、お互いがお互いの重力に捕獲され、荒々しい偏心したループで2回ほど宙返りした後で、衝突して誕生したブラックホールだったらしいことが明らかになった。

 この状況では、どちらのブラックホールも回転しないのだ。

 研究チームによると、こうした状況は、重力による相互作用が起こりやすい星団など、密集した宇宙で発生しやすいのだそうだ。

Gravitational waves from the first detection of a neutron star – black hole merger (GW200105)

2つのブラックホールが融合してできた単一のブラックホール

 今回明らかになったことは、GW190521についてすでに知られていたことと整合的だ。

 たとえば、GW190521を発生させたブラックホールの片方は、太陽の約85倍の質量をもつと推定されていた。

 現在のブラックホール理論では、太陽質量の65倍を超えるブラックホールが、単一の星から誕生することはないとされている。そのような大きなブラックホールは、ブラックホール同士の合体によってしか誕生しない。

 今回の研究では、衝突した2つのブラックホールは、それぞれ太陽質量の81倍と52倍だったと推定されている。

 つまり片方についてはこれまでの推定値よりもわずかに下回るが、それでも単一の星から誕生するブラックホールを超えている。

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 こうしたブラックホールの動的な出会いはきわめて稀と考えられているが、ありえないわけではない。GW190521は、そうした珍しい現象の初の観測事例である可能性もあるとのことだ。

 そして初めて観測に成功したということは、今後数年のうちにさらに多くの事例が観測されるかもしれないということだ。

 GW190521を検出した重力波観測装置「LIGO」と「Virgo」は、2023年3月から日本の大型低温重力波望遠鏡「KAGRA」と連携して、新たな重力波の観測を開始する。

 この研究は『Nature Astronomy』(2022年11月17日付)に掲載された。

References:Two Black Holes Met by Chance, And It Created Something Never Seen Before : ScienceAlert / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント 17件

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  1. なるほどなるほど~~~~~~そう来たか~~~~~~
    何もかもわからん!!

    • +3
    1. ※1 これから色々解って来るんじゃないかな
      ※4 超新星爆発で出来たって聞いてる
      なぜならブラックホールがぶつかってもブラックホールにしかならないハズだから
      なので重い元素が出来ても出てこれない
      ホーキング博士によるとブラックホールは蒸発するらしいが重い元素が出てくるまで
      蒸発するのにどの位の時間が必要なのか自分は知らない。

      • +4
      1. ※15
        “CERN”でつくろうとしたマイクロブラックホールはそれこそ数ミリ秒も維持できないらしいけど、wikiによると…

        > 通常の赤色巨星からできたブラックホールが完全に蒸発するまでには10^68年ほどかかると考えられている

        だそうです…10の68乗って

        • +3
        1. >>※18
          ※15です
          10の68乗だと1無量大数ですね 漢字圏の桁の 最大ですね
          むひゃー(笑
          自分が知りたかったのは重元素の(それこそ原子番号173以降の)
          原子が出てくるまでの時間ですw

          1無量大数年以降なら出てくるのかも解りませんが・・。(笑

          • 評価
  2. 人間界でも天敵な奴と同じく相手を嫌ってる奴と
    会ってしまうこともよくあるし、ブックホールと
    ブラックホールとの遭遇も人類が知らないだけで
    ごく普通にある遭遇かもしれんよ

    • +2
  3. 未だかつてないって……
    鉄より重い元素はブラックホール同士の衝突で生まれた説が有力だって聞いたよ

    • 評価
  4. ふふ~ん
    吸い込まれた内側で吸い込んだら
    元に戻ったということだな。

    • 評価
  5. そもそも考えるとか理論数学物理その物が宇宙が出来てからの概念だとしたら永遠に謎
    もはや概念という考え方すらも

    • 評価
  6. KAGRAの進捗状況はどうなってんだ?
    ニュースがサッパリ聞こえてこないんだが

    • +1
    1. ※7
      “KAGRA”は稼働中だけど、基礎研究を担う器材だから、
      その手の機材はよほどセンセーショナルな発見でもない限りあまり話題には出ないのだ

      • +3
  7. どっかでゲッターロボかグレンラガンかガンバスターが戦ってる???

    • 評価
  8. >お互いがお互いの重力に捕獲され。
    ガニ股でお互いが近づいていき

    >荒々しい偏心したループで2回ほど宙返りした後で。
    右腕(一回)と左腕(二回)をぐるっと回して

    >衝突して誕生したブラックホールだった。
    互いに人差し指を突き出して「フューーージョン…ハッ!」と、やったわけだな?

    • +1
  9. 鉄より重い元素は超新星爆発で少なくともカリホーニウムより上くらいまでは一気に合成され宇宙にばらまかれます。
    今現在「鉛」が結構含有量が多いのは、そういた放射性元素のなれの果てが138億年の間に結構積み重なった結果でしょう。

    • +3
  10. 死ぬまでに一度ブラックホールに行ってみたい

    • 評価

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