メインコンテンツにスキップ

羊賢い。羊の群れはリーダーを定期的に交代することで集団的知性を発揮している

記事の本文にスキップ

21件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
Advertisement

 羊の群れは、まるで1つの巨大な生き物かのようだ。そんな印象を裏付けるかのように、とある研究チームによれば、羊の群れには「集団的知性」が備わっているのだそうだ。

 群れ、すなわち動物の自己組織化プロセスは、各個体が絶えず自分の方向や速度を調整することで、集団運動が作られるとこれまでの研究では説明されていた。しかし、こうした理論には、そこに隠された「階層構造やリーダーの存在」を忘れている。

 『Nature Physics』(2022年10月20日付)に掲載された新たな研究では、物理学の理論を用いて、羊の群れの行動について分析した。

 それによると、羊の群れは、1日のうちに何度も、それを構成する個々の羊がリーダーとフォロワーの役割を交代しながら、「集合的知性」を獲得するのだそうだ。

動物の群れの集団行動に関する研究

 フランス、コード・ダジュール大学フェルナンド・ペルアーニ氏によると、動物の群れは連続的なプロセスではなく、区切りのある1つの出来事なのだという。たとえば、ひとたび発生した群れも、休憩や食事のために中断される。

 だが、従来の集団行動の理論は、群れは最初から最後までずっと群れとして動き続けることを前提としている。さらに群れの個体は、どちらへ移動するのか絶え間なく交渉しているのだと想定されることもある。

 そこでペルアーニ氏らは、動物の集団行動に「始まりと終わり」という時間的要素を取り入れ、さらにそれを「集団相」の集合体と捉えることで、これまでとは違った視点から群れを分析しようと考えた。

この画像を大きなサイズで見る
photo by Unsplash

羊の群れにはリーダーがいて定期的に入れ替わっている

 研究チームはまず、羊の小集団が見せる動きを、間隔を変えながら観察してみた。そして群れ全体の空間的な秩序と向きを計算するとともに、個々の羊の移動速度との相関を調べる。

 ここから、群れには「高度に階層化され相互作用ネットワーク」が形成されていることが判明したという。さらに、このネットワーク内で伝達される情報が、群れにおける「羊の位置だけ」であることも明らかになった。

 こうした発見をもとに構築された集団運動モデルによれば、羊の群れには「全体を率いる”一時的”なリーダー」がいるのだという。

 このリーダーは階層的相互作用ネットワークを通じて、群全体を完全にコントロールする。しかし1日の内に非常に短いスパンで、また「別のリーダーに交代」する。

 つまり、羊の群れはリーダーとフォロワーが交互に入れ替わりながら移動するのだ。

この画像を大きなサイズで見る
photo by Unsplash

羊の群れは集団的知性を獲得

 そのメリットは、リーダーが何か役立つことを知っていれば(迷路の出口やエサのありかなど)、群れ全体がその恩恵にあずかれることだ。

 個々の羊は交代でリーダーになり、その情報を群れに集積する。そうすることで、群れは「集団的知性」を獲得することができる。

 集団的知性は、その集団自体に知能、精神が存在するかのように見える知性のことだ。

この画像を大きなサイズで見る
photo by Pixabay

 今回の研究は、羊の小集団の運動を分析したものだ。ここでの発見がどの程度一般的なものなのか知るには、もっと大きな群れや異なる動物を用いたさらなる実験が必要であるとのことだ。

 だが交代するリーダーモデルは、自然に発生する動物の集団戦略が、階層的組織スキームと民主的組織スキームの両方を利用している可能性を示唆している。

 将来的には、これにインスパイアされた動物の集団行動に関する物理学や生物学が誕生するかもしれない。

References:Physics study shows that sheep flocks alternate their leader and achieve collective intelligence / written by hiroching / edited by / parumo

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 21件

コメントを書く

  1. 羊たちは沈黙しなくて、常に話し合っているのか。

    • +12
  2. 人もそうだよね。
    全体で知性を蓄積している。

    しかし羊の中の山羊と言う様に、集団的知性では、突発的な出来事に対処出来ないんだろうな。羊群全体での意思統合を図っていたのでは、即座の判断は難しいものなぁ。
    だから緊急時にはカリスマ性を帯びたリーダーが必要になる。そしてそれは緊急事態の一代限りで、また平穏に戻れば平穏なリーダーが取って代わる。

    それも存続の為の摂理に組み込まれているんだろうな。

    • +5
  3. 「俺リーダーとかやりたくないんだけど」
    っていう俺みたいな羊いたら可哀想だな

    • +4
    1. >>5
      目立たなければ大丈夫じゃない?
      これってつまり、次にどこ行けばいいのか分からず屯ってる羊の中に「こっちに行けば良いことがあった筈」って思い出した奴が現れて
      周りの羊が「おっ、こいつなんか知ってるみたいだぞ」って合図を出して更にその周囲が次々と情報を伝播することで群れ全体が「なんか今度はあっちの方にいる奴に着いてけばいいらしい」と知るってことじゃないかな
      群れになんの貢献もせず、ただただ着いていくだけの一生を送る羊もいると思うよ。

      • +1
  4. 日本社会もこれがうまくできたらよいのですが。かなり汚れてしまった現状を憂います。なんとかしなければなりません。よい人材の登場と成長を望みます。

    • -2
  5. 人なんかより獣や植物の方が賢いよな。
    技術的な意味じゃなく。

    科学で武装しただけの蛮族が人だわ。

    • +4
  6. たくさんいる羊の中からどうやってリーダーだとわかるんだろう?

    • +3
    1. ※8
      発信機とかのマーカーつけてドローンとかGPSで観測とかでしょ

      • +2
  7. てっきり頭突きしてくるでかい羊がリーダーなんだと思ってたけどアイツら単に短気なだけか

    • +7
  8. 羊A「ようやくそこに気付いたか」
    羊B「人間も進化したものだ」
    羊C「しかしまだまだ…」
    羊D「さよう、もっと我々を楽しませてくれなければな」

    • +4
    1. >>18
      羊A「羊Bが刈られたようだな」
      羊C「ククク…奴は我ら四天王の中でも最弱」
      羊D「さよう、人間ごときに刈られるとはマザー牧場の面汚しよ」

      • +1
  9. 定期的とは何年?

    これ書かなきゃ定期的とは言えないだろう

    年をとれば交代するのは当たり前なんだから

    • -6
    1. >>19
      リンクから元論文見れるよ
      メソッドに、最大40秒の群れ移動行動、次の群れ行動までに最大3分の個別放牧行動があるって書いてあるよ
      つまり一日のうちのすごく短いスパンにリーダーが変わるってことらしいよ

      • +10
      1. >>24
        そんなに目まぐるしいんだ!
        でもリーダーする時の負担が少なくて済みそうだね。

        • +3
  10. 羊の群れには山羊を1匹入れておくと
    良いリーダーになり外敵から群れ守る、

    みたいなことって何で読んだんだろう…
    思い出せない

    • 評価
  11. なにやら小難しい言葉が並んでるけど、これ
    「相互作用ネットワーク」とやらが一体なんなのか
    という肝心な部分の詳細は書かれてる?書かれてない様に見えるが…

    • -2
  12. ずっとリーダーにいると腐るよね、全員がってわけじゃないけど
    定期的にすげかえることは大事だと思う

    • +2
  13. 例えば「俺に2m以上近づくな、でも俺から5m以上離れるな」みたいな単純なルールを持つ集団が動くと時間の経過と共に規則的な構造が現れるという

    羊の場合、きっと「誰がが動いたらそれに続け」みたいなものなんだろう

    今まではその「誰か(リーダー)」がいわゆる、“強いオス”とか“ベテラン”とかだと思われてたけど、どうやら一定時間ごとにランダムに入れ替わっている、と

    そのおかげで何か問題が起きた時、個々に持ってる経験値や能力をワンチャンスでなく何回か試行錯誤してで解決できる可能性がある(集合知)、と

    民主的かどうかはよくわかんないなぁ…ほんとにランダムに入れ替わるんだろうか、リーダーになるメリットやリスクが状況や個体によって違うなら別のメカニズムも働きそうだけど

    • +2

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

動物・鳥類

動物・鳥類についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。