
この事実は、ユカタン半島の「チクシュルーブ・クレーター」を作り出した小惑星の衝突をシミュレーションし、さらに世界中100か所以上から採取された地質データを分析した結果、明らかになったことだ。
それによると、そのとき生じた津波の威力は、地球の裏側にある海盆の堆積物を撹乱・侵食するほどに強力だったそうだ。
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6600万年前、恐竜を絶滅させた小惑星の威力
今回の研究はミシガン大学のモリー・レンジ氏の修士論文で、『AGU Advances』(2022年10月4日付)にも掲載されている。6600万年前、現在のメキシコ湾とカリブ海との間にある、ユカタン半島に衝突した小惑星は、当時地球に存在した動植物の約4分の3を一掃。
当時地上を支配していた恐竜は、空を飛ぶもの以外はすべて絶滅し、現在まで生き残ったのは、恐竜の子孫である鳥だけだ。

隕石の威力は凄まじく、猛烈な火災で動物を焼き殺したり、硫黄を含んだ岩石を粉々にして危険な酸性雨を降らせたり、地球を長期に渡り寒冷化させたりしたことが知られている。
レンジ氏の研究テーマは、その時に発生した津波だ。
衝突で発生した巨大な津波を探るために、幅14キロの小惑星が時速43,500キロ(音速の35倍の速さ)で地球に衝突したと想定して、当時の状況をシミュレーションした。
これと併せて、恐竜を含む地球上の生物の70%を滅亡に追いやった、白亜紀末に起きた5度目の大量絶滅「K-Pg境界」前後の海底堆積物も分析している。
津波の瞬間的な高さは4.5キロに及んでいた
この分析によると、衝突によって発生した津波の初期エネルギーは、23万人以上の死者を出した2004年12月のスマトラ島沖地震津波のそれの3万倍と膨大なものだった。小惑星が地球に衝突すると、直径100キロのクレーターが生じ、その衝撃で大気中に高密度の塵と煤の雲が巻き上がった。
衝突のわずか2分半後、放出された物質のカーテンが海水を外側へと押し出し、波の高さは一時的に4.5キロにもなって、再び地表へ降り注いだ。
10分後、衝突地点から約220キロ離れた湾内を、高さ1.5キロの津波が縦横無尽に駆け巡った。さらに1時間が経過すると、津波はメキシコ湾から離れ北大西洋に進出。
4時間後、津波は「中央アメリカ海路」(当時、北米と南米を隔てていた海路)を抜けて、太平洋にまで到達した。
小惑星の衝突から丸一日が経過した頃には、太平洋と大西洋の大部分を横断し、インド洋には東西から津波が押し寄せた。そして48時間後、津波は地球のほとんどの海岸線に到達した。

津波は主に東と北東に広がり、北大西洋へ到達。また中央アメリカ海路を経て、南西に流れ込み、南太平洋にも広がっている。
こうした地域では水の流れが速く、時速0.6キロを超えていたと推定されている。これは海底の細かい堆積物を侵食する速度だ。
一方、南大西洋・北太平洋・インド洋・現在の地中海など、津波の影響をほとんど受けなかっただろう地域もある。シミュレーションによると、これらの地域の水流は時速0.64キロ以下だった。

さらに、「チクシュルーブ・クレーター」から12,000キロ以上離れたニュージーランド東部の島々でも、衝突の痕跡が見つかっている。
それは「露頭」と呼ばれる岩石が露出したものだ。
これまでこうした露頭は局地的な地殻変動によるものだと考えられてきたが、年代と津波のルートにあるという事実から、小惑星の巨大な波が残したものであることが判明した。
Dinosaur-killing asteroid triggered global tsunami
世界各地を10メートルの波が襲う
レンジ氏は、「これらの堆積物は、衝突による津波の影響を記録したものだと感じています。おそらく、この出来事が世界に与えた大きな影響を確認できるもっとも有力な証拠でしょう」と述べている。なお今回の研究では、沿岸部で起きただろう洪水の影響までは調べられていない。しかしメキシコ湾外洋の波は高さ100メートルを超え、北大西洋や南米太平洋側の沿岸部付近でも10メートル以上あっただろうことがわかっている。
そうした波は、水深が浅い海岸に近づいたとき、劇的に高くなったと考えられる。
歴史を通じてさまざまな津波が記録されてきたが、小惑星による地球規模のインパクトはまさに桁外れだったようだ。
References:Dinosaur-killing asteroid triggered global tsunami that scoured seafloor thousands of miles from impact site / Tsunami from dinosaur-killing asteroid had mile-high waves and reached halfway across the world | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
同程度の小惑星が落ちた場合、今の人類でも絶滅寸前までは追い込まれそうだな
下手すれば絶滅する。せめて数年前にわかってればシェルターなり作れるけど
2. 匿名処理班
もう、恐竜が絶滅と言う表現はしないほうが良いと思う
現存してる鳥類は紛れもなく恐竜なのだから
3. 匿名処理班
もしも今の地球に恐竜絶滅の時と同じ規模の隕石が落ちたらどうなるんだろ?
4. 匿名処理班
隕石落ちてくるだけで人の世も終わるんやな…
はよ宇宙に進出して火星でもテラフォーミングせにゃ
5. 匿名処理班
舞い上がった埃で太陽光を遮られ海は凍るだろうなー
原発か化石燃料を採掘出来る国じゃないと生き残れないだろう
日本じゃ生き残れないね
6. 匿名処理班
キロ単位の津波!
あーこりゃジタバタしても無駄だなぁ
何処に落ちても二日以内で終わりなんだな
7. 匿名処理班
※2
実際、鳥以外の恐竜を抜き出して指す「非鳥恐竜」という言葉が使われるようになって久しい。
※5
食糧生産が止まるから資源があっても終わりだ。
8. 匿名処理班
気候変動や小惑星衝突を予測し核兵器まで作りあげる人類の知性は
地球の生命が隕石に対抗する一つのアプローチとして進化し備えた物だったのだ(`・ω・´)
9. 匿名処理班
>>4
火星に行っても隕石は来るんじゃ…?
10. 匿名処理班
もし今恐竜隕石が1年後落ちますと分かっても、人類はどうすることも出来ない
まず10kmもの隕石を正確に破壊する技術もないし、軌道をずらず技術も出来てない
落下の瞬間半径1000kmの地上の生物は衝撃派で即死
そして落下と破壊で全滅するのでどこにも逃げれず人類は終わりを迎える
11. 匿名処理班
温度はどうにか出来ても
重力はどうにも出来ない
12. 匿名処理班
高さでキロとか、想像もつかんね。。。
13. 匿名処理班
大変有意義で真面目な研究なのはわかる
だが脳内にドリフのBGMが
14.
15. 匿名処理班
隕石の到達があと17分遅れていたら地球を逸れていたらしいな
16. 匿名処理班
※2
確かに分類上恐竜の一種だけど、鳥は当時から鳥だったからね…
17. 匿名処理班
>>2
進化先の種類が現存してるから絶滅してないと言い出したら、絶滅したとされている他の大半の生物もまだ絶滅してないことになってキリがない。恐竜は恐竜、鳥は鳥だよ。
18. 匿名処理班
※4
あんなとこにマジで移住出来ると思ってんの?
月にも住めないのに
19. じょん・すみす
そうか、当時は北米と南米の間が開いていて、そこから
太平洋に津波が抜けたのか。
20. 匿名処理班
>>4
木星と月というバリアがある地球の方が安全やで
21. 匿名処理班
>>10
こないだNASAが小惑星に人工物ぶち当てて軌道逸らす実験してたような
22. 匿名処理班
黒海だって紀元前8000年くらいまでに寒氷期が終わって温暖化したからできた訳で。
そん時は結構な洪水が起こって農耕やってた人類に、かなり影響があったはず。
隕石がそれを早めたって説もあったかな。
23. 匿名処理班
※15
きっと数十分の違いで衝突しなかった隕石もあるんだろうな
24. 匿名処理班
※21
NASAのDARTっすね。
ちなみにGoogleで「DART 探査機」で検索するとちょっと面白いことになる
25. 匿名処理班
※17
それは認識が間違ってる。
恐竜も鳥も個別の種を指す語ではなく、複数の種を内包する広がりのある語で、鳥は恐竜に内包されているから、その理屈は成り立たない。
その理屈を当てはめると、例えばもしコウモリ以外の哺乳類が全て絶滅した場合に、
「進化先の種が現存してるから絶滅してないと言い出したら、絶滅したとされている他の大半の生物もまだ絶滅してないことになってキリがない。哺乳類は哺乳類、コウモリはコウモリだよ。哺乳類は絶滅した。」
ということになってしまう。
26. 匿名処理班
>>2
それ言い出すと三葉虫も生きているとか言い出す人が出てくると、思うよ
27. 匿名処理班
>>10
NASAが先月隕石の軌道変更実験をやってるよ
しかも、成功してる。
【AFP=時事】米航空宇宙局(NASA)は11日、先月末に実施した探査機の小惑星衝突実験で、小惑星の軌道を変えることに成功したと発表した。
とニュースになってる。
28. 匿名処理班
>>25
哺乳類は分類単位。恐竜は通称。