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気候変動の影響で樹木の成長が急速に早まっている

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(著) (編集)

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 新たな研究によると、気候変動により大気中の二酸化炭素が増加したことで、アメリカでは森林の木々の成長が早まり、大きくなっていることが明らかになったそうだ。

 樹木は二酸化炭素を吸収して成長するために、気候変動を緩和する機能があると考えられている。

 今回『Nature Communications』(2022年9月19日付)に掲載された研究では、全米の森林10か所で、一貫して木の体積が増加していることが判明した。

 樹木が気候変動から地球を守っているだろうことが示唆されている。

木々は排出された二酸化炭素をもりもり吸収している

 研究の共著者である米オハイオ州立大学のブレント・ソーンゲン氏は、森林の大切さについて次のように語る。

森林は排出された全ての二酸化炭素のおよそ十数%を大気から吸収します

私たちは何十億トンという二酸化炭素を大気に放出していますが、森を育てるだけでかなりの量を取り除くことができます

 二酸化炭素が樹木の成長をうながす効果を「CO2施肥効果」という。

 木々が二酸化炭素をたくさん利用できるようになって、光合成がアップし、その分成長のエネルギーを多く作れるようになることが原因だ。

 大気中に放出された二酸化炭素は、永遠にそこにとどまるわけではない。そのかなりの部分が海・森・湿地に吸収される。

 過去20年、アメリカの森林は毎年7、8億トンの二酸化炭素を吸収したと試算されている。これは同国の二酸化炭素総排出量の10~11%にあたる。

 あまりにも多くの二酸化炭素は自然に悪影響を与える可能性があるが、木々はたっぷりと二酸化炭素を吸収しても問題ない。

 木を大きな円筒に見立てると、今回判明した体積の増加は、年輪を1つ追加したようなものと、ソーンゲン氏は説明する。

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photo by Unsplash

過去30年で木々の体積が2、3割アップ

 ほとんどの人はその変化に気づかないだろうが、30年前の木と比べて、2、3割は大きくなっていることになるそうだ。

 これを世界最大の木で構成される「レッドウッド国立州立公園」の森林に当てはめると、ほんの少しの増加であっても、二酸化炭素の保管場所が大量に増えたとみなすことができる。

 しかも古い木々であっても、同じようなバイオマス(特定の時点においてある空間に存在する生物(バイオ)の量を、物質(マス)の量として表現したもの)の増加が見られるという。

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photo by iStock

木々が大きくなったことと二酸化炭素排出量の増加に関連性

 今回の研究では、アメリカ農務省林野部のデータ(USFS-FIA)を用いて、過去数十年で森の樹木の体積がどのように変化したのか調査された。

 その結果、1970年から2015年にかけて、木々の体積が大幅に増加していることや、それが二酸化炭素排出量の増加と相関していることが明らかになった。

 また自生の木と植樹された木とで違いがあるかどうかも確認された。

 というのも、植樹はその地域に最適なものを選別して植えられることが多いので、その分CO2施肥効果も大きくなるだろうと予測されたからだ。

 ところが実際のところ、自生樹と植樹には違いが見られなかったそうだ。

 全体としては、今回明らかになった木々の体積の増加は、これまでの推定よりも多いことがわかったという。

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1997年と2017年の1ヘクタールあたりの木材量を森林グループごとに分けて表示 / image credit:Nature Communications (2022). DOI: 10.1038/s41467-022-33196-x

木は気候変動から地球を守ってくれている

 こうした結果は、気候変動時代における木の価値をはっきりと示している。

 ソーンゲン氏は、CO2施肥効果を利用することで植樹の効率をアップできるだろうと話す。たとえば、約4平方キロに植林する費用が50ドルだとするなら、CO2施肥効果を利用すれば簡単に40ドルまで下げられるとのこと。

CO2施肥効果は、植林や森林破壊の防止など、森林の炭素吸収源に関連するコストを下げてくれます

「私たちはもっと多くの木を植え、古い木を守るべきです。なぜなら結局のところ、気候変動、地球温暖化を緩和する最善の策は、おそらく木だろうからです

References:Climate change is turning the trees into gluttons / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント 37件

コメントを書く

  1. 最善なのは結局木を植えることぐらいってのは元も子もないようで案外真理なのかもね

    • +13
    1. ※2
      買ってくれるんなら何でも植えるよ

      • 評価
  2. 大味ながらこうやって地球の温度調整がなされるようになってるんだ
    よくできてるもんだなあ
    日本も無花粉スギとか花粉症に影響少ない木を増やしたいもんだ

    • +5
    1. ※5
      なるようにしかならないだけで調整なんかしてないよ

      • 評価
  3. 高層ビルを木で建てるプロジェクトを海外にも広めたらいいんじゃないかな。
    使う場があれば植樹ももっと進むかも。

    • -5
  4. >30年前の木と比べて、2、3割は大きくなっていることになるそうだ。

    当たり前だ
    成長しない木なんて存在しない

    成長スピードが増えたと主張したいのなら、60年前から30年間と直近の30年と比較しなきゃならないのに、そんなデータは書いていない。

    結局、成長スピードが増えたと主張する根拠は何もない

    • -12
    1. ※7
      随時成長と枯れ死が起きているから平衡状態だと両者が等しいと考えられるわけで、ヘクタールあたりのバイオマスが増えているということは成長量のほうが多いからという結論になるんでないかい?
      バイオマス0の状態で始まっているわけではないんやで。

      • +3
    2. ※7
      年代別の生育状況なんて切り口の年輪見るだけでわかるで?

      • +1
    3. ※7
      ここの文章から想像するに、(もうこれ以上Co2を吸収しない)極相林であっても、限界地が2-3割増えているんじゃないかな

      細かい説明が書いてないからよくわからないが

      • +2
  5. 藤子・F・不二雄先生のみどりの守り神。好き

    • +2
  6. 先進国で植えるのを遥かに上回るスピードで途上国で切ってるからなぁ
    途上国で地道に環境教育と植樹する以外どうにもできん

    • +4
  7. 植林ってどんなもの想像するか知らんけど
    海外の植林ってユーカリの木を使うこと多いからな
    日本の杉みたいなもん
    乾燥が進んでて植林しても無駄とか気候が変わってしまってるから新しい植林に適した土地を探したほうがいいとかユーカリじゃなくて地域の固有のを植えろと木を植えろ言っても簡単でもないみたいだけど

    • 評価
    1. ※10
      その結果がオーストラリアの大火災だから笑えないよね
      スギ花粉はまだ何とかなるが
      あの規模の火災はどうしようもない

      • +1
  8. 地球規模の歴史で
    二酸化炭素多かった時期は植物もりもり育ってた時代だからな~

    • +10
  9. プラスチックから紙へ移行しようと頑張ってた処は又方向転換するかな?

    • +3
  10. だからと言ってガンガン二酸化炭素出していいやとならん事を祈る。

    • +4
  11. 昼間は二酸化炭素使うけど、樹木も呼吸するから酸素も使うよ。

    • +7
  12. 成長が早いなら林業は良いかもしれないね

    • +2
  13. 先進国がいくらやっても途上国の発展のために切りまくるので意味薄い

    • +1
    1. ※19
      現在の状況は先進国が買いまくった結果だよ。
      たとえば今でこそ総エネルギー消費は中国がトップだけどつい数年前まではアメリカがトップだったし、
      1人あたりのエネルギー消費は日本は現在でも中国を遥かに上回っている。
      他人のせいにしてはいけない。

      • 評価
      1. >>28
        エネルギー使用量とは、一次エネルギーを他の最終使用燃料に変換する前の使用を指し、これは自給自足生産と輸入・在庫変動を加えたものから、輸出と国際輸送に従事する船舶や航空機に供給される燃料を差し引いたものに相当します。

        開発具合とかではないから、都合の良いデータで日本モーするのは意味がない。中国の都市部と農村部では現代と中世くらいの文明差があるしな。歪な国だよ。

        • 評価
  14. でも気温がこのまま上がると光合成の効率が悪くなって森林がCo2をまき散らすって研究結果があったけどね

    • 評価
  15. 成長が早いと言うことは寿命が短くなったりはしないのかな。
    昨今の異常気象ですごい台風とか来てるし、すくすくそだった木が早々に寿命で倒れたりしたらそれはそれで大変かも。
    ウチの近所はやたらに植樹して緑が多いけど手入れも大変だし、管理もしないと危険。立ち枯れてるのもあるし、雑草が生えすぎて歩道が塞がったり落葉樹を植えてるから落ち葉が凄まじく、排水溝を塞ぐのは元より、うっかりタバコの火でも点いたら大惨事だと密かに思ってる。
    最近植えすぎたのにやっと気付いたのか1/3くらいを伐採し始めてる。落ち葉回収や伐採の経費は莫大だろうな…とぼんやり思ってる。

    • 評価
    1. >>22 そことはあまり関係ないが、ソメイヨシノの一斉寿命問題、特に交通量が多いとこの並木はえらいことになってるな。
      台風対策もあって、古木をまとめて伐採して新品種に植え替えたとこが近くに複数ある。
      街中に白いソメイヨシノが咲いてる春は昭和晩期-平成のレトロ風物誌になると思うな、未来。

      • +1
      1. ※23
        「ソメイヨシノ」の生産はもうしていないので、多くは「ジンダイアケボノ」に入れ替わっていますね
        ソメイヨシノよりもピンク色が濃いけど、病害虫に強いのが特徴みたい

        • +1
        1. ※38
          ソメイヨシノの一斉開花で季節の変化が視覚化される感じ
          これからも見たいけど難しいのかな

          • +1
    2. ※22
      成長と寿命の問題は種によるんじゃないかな。
      杉は成長が早いから一時期たくさん植えられましたけど、巨樹といわれる現在も残ってる古い木の上位はほとんどが杉で、少し新しくなってくるとクスとかイチョウとかが出現してきます。 だから、杉は成長が早く寿命も長いわけで良しあしはともかく、もし今人間が突然すべて消えて日本の山が放置されて 5000 年も経つと杉の巨木ばかりになりそうです。

      • +2
    3. >>22
      成長が早いと言うことは寿命が短くなったりはしないのかな

      それ思った
      ブラック企業でガンガン働く社畜状態で、将来的に何かしら皺寄せがくるんじゃないかと

      • 評価
  16. ハウス栽培なんかは二酸化炭素を敢えて加えて促成栽培するし、食料生産に関しては二酸化炭素の増加はプラスなのは確実。人口の増加に関しては、二酸化炭素の増加も気温の上昇もプラス。後は海水面の上昇による陸地の侵食とどうバランスさせるかが問題。

    • +1
  17. 地球の長い歴史の中では温暖期の時代もあったわけだしなぁ…

    • +2
  18. CO2ガスの吸収は良いことだと思えるけど
    樹木の巨大化が環境や生態系にどんな影響を与えるかは全く未知数だね

    • 評価
  19. いいね、崩壊世界の巨大樹木とか胸アツ

    • 評価
  20. 面積を減らされたから体積増やして対応って感じなんだろうけどね
    生物相が集中すると色んな要因に弱くなるはず。横に広がろうとする植物にとっては苦肉の策
    成長が追いつかなくなったらどうなるんだろう…

    • 評価
  21. 単に森を利用しなくなったり、盲目的に野焼きを毛嫌いしたり
    それによって古い「背の高い」木によって日照が妨げられ、若い木や低木類が映えず結果として弱い土壌になったり森がダメになりかけたりもします
    また低木や藪が密な場合でも、地表付近を見れば皆枯れ始めて居たりで根が張っておらず、一雨来れば地表が流れそうな土地になっていたり

    文章の「古い木を守ろう!」を盲信するのではなく、実際に森に入って自然を見て判断して欲しい所
    昨今、都会の頭でっかちさんの宗教の如くな自然保護活動が逆に自然破壊につながっている事が多いのでね

    • 評価
  22. 地球「今ちょっと調整してるんですよ…森がないとあなた達めっちゃ困るでしょ…」

    • 評価

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