
テンジクザメ科に属する「マモンツキテンジクザメ」は、胸ビレと腹ビレを使って文字通り歩くのだ。
『Integrative and Comparative Biology』(2022年7月27日)に掲載された研究では、テンジクザメの赤ちゃんが、大人と同じように歩けることを明らかにしている。
このサメの赤ちゃんはお腹が膨らんだ幼児体型だ。人間の赤ちゃんがそうであるように、体型が歩き方に影響することを考えれば、サメの赤ちゃんが大人と同じ歩き方をするのはとても不思議なことなのだそうだ。
オーストラリアの歩くサメ「マモンツキテンジクザメ」
オーストラリアやニューギニア島の潮が引くと、サンゴ礁の潮だまりに「マモンツキテンジクザメ(Hemiscyllium ocellatum)」という、小さなサメが取り残されていることがある。英語では「エポーレットシャーク」と呼ばれている。普通の魚にとっては大ピンチだ。酸素が乏しく、温度も高くなりがちな潮だまりに捕まれば、死んでしまってもおかしくない。
ところが、このサメは何時間も息を止めて我慢してみせる。暑さにも耐えるし、いざとなれば歩くことだってできる。
米フロリダ・アトランティック大学のサメ学者マリアンヌ・E・ポーター氏は、「干潮になると、露出した岩礁を歩く姿を見ることができます」と語る。
とても丈夫で、パドルのようなヒレを上手に使って、27メートルも先にある快適な場所まで歩き、次の潮が満ちてくるのを待つのだそうだ。
Epaulette Shark Walks on Land
生まれた時から大人と同じように歩くことができる
生まれたばかりのマモンツキテンジクザメは、お腹がぷっくりと膨らんでいる。これは1ヶ月分ほどの栄養が蓄えられた袋で、小さなエサを食べられるようになるまで赤ちゃんの命をつなぐ大切なものだ。赤ちゃんは大人とは体型が違うのに、生まれた時から歩くことができる。ポーター氏は、子供のサメは大人とは歩き方が違うのではないかと仮説を立てた。
一般に体型は移動法に影響すると言われている。例えば、人間の赤ちゃんなら、大きな頭のバランスを取らねばならないので、大人とは歩き方が違う。
だから、お腹が大きなサメの赤ちゃんも、大人とは体やヒレの使い方が違うだろうとポーター氏は予測したのだ。
ところが、サメの赤ちゃんが歩く様子を観察して驚いたという。生まれたばかりの赤ちゃんも、お腹の袋がなくなった子供も、大人と同じように歩いていたのだ。
移動速度も、尾ビレを動かす速度も、体の曲げ方やヒレの回転まで、どれも同じだった。
ポーター氏の仮説は、ものの見事に外れたわけである。
"Walking" Sharks on the Move
なぜサメの赤ちゃんは大人と同じように歩くのか?
サメの赤ちゃんが、膨らんだお腹にふさわしい歩き方をしない理由はよくわからない。1つの可能性としては、重力が関係すると考えられる。観察されたのは、どれも水中での歩き方だった。
水の中ならお腹の袋は、それほど歩く邪魔にはならないのかもしれない。体が重く感じられる陸上での歩き方は、ポーター氏の今後の研究課題であるそうだ。
こうしたサメの移動法に関する研究は、海の生物がどのようにして陸へ進出したのか解明するヒントになるそうだ。
ほかにも、足やヒレと表面の相互作用や、異なる環境で重力や体型が移動に与える影響などを研究する、バイオメカニクスの分野にとっても重要な知見をもたらしてくれるとのこと。
また海が暖かくなれば、元々の生息環境から引っ越しするような生物もいるだろう。
生き物の移動法を理解することは、究極的には海洋生物が温暖化にどう対応するのか理解を深めることにもつながるそうだ。
References:FAU | Study First to Explore ‘Walking’ Shark Movements in Early Life Stages / Video reveals baby steps of newly hatched ‘walking’ sharks | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo
あわせて読みたい





コメント
1. 匿名処理班
陸上を歩けるサメが実在するのか。
B級サメ映画の新しいモデルになりそうだ。
2. 匿名処理班
デーデン デーデン デデデデデデ……(トコトコ)
3. 匿名処理班
ああこの水辺を切り取って部屋に置いて、24時間ずっと観察していたい
もう外の世界とはおさらばしたい
4. 匿名処理班
👏じょーず、じょーず
5. 匿名処理班
B級鮫映画監督がアップを始めましたといいたくなったけど、よく考えたらサメが痴情歩いたくらいじゃ陸上に進出した鮫なんていくらでもいるから今更インパクトないわ
6. 匿名処理班
ナムナム
人間食べない
ともだち
7. 匿名処理班
※5
流石に痴情歩いたらインパクト抜群だと思うの。
アサイラムもびっくり案件。
8. 匿名処理班
水槽の中でお腹の側から見ると、夏の夜外のガラスに張り付いたヤモリを思い出した。
そうか。進化ってそう言う事か。
9. 匿名処理班
※1
何ならB級映画のサメはすでに空も飛んでるから・・・(震え声)
10. 匿名処理班
※7
水辺だけど普通に多頭のサメが地上へ平然と移動した奴がいた気がする
あと砂浜を潜って移動するタイプ。雪山の雪にいるタイプとかもあるから…
11. 匿名処理班
サメ(ワシら一体何だと思われてるんや…)
12. 匿名処理班
実際に野外で遭遇したら悶絶する可愛さだよ
一緒に27メートル歩きたい