脳しんとうと腸内細菌の関係
 脳と腸に密接な関係があることはよく知られているが、腸内細菌は脳の緊急事態をも伝えてくれているようだ。

 脳しんとうは、頭部への衝撃を受けたことで生じる、意識消失や意識障害、記憶障害、けいれんなどの神経の機能的変化のことだ。だが脳に明らかな損傷が見受けられないため、その診断が難しいという。

 新しい研究によると、脳しんとうを起こすと腸内細菌が変化することがわかったという。これを利用すれば脳しんとうの診断ができ、更に回復具合を確認することもできるという。
広告

脳しんとうの診断は難しい

 頭部に強い衝撃を受けたとき、頭蓋骨の骨折や脳の腫れなどがあれば、レントゲン写真やCTスキャンで診断することはできる。

 しかし、神経細胞レベルで生じ、脳の構造に明らかな損傷が見当たらない脳しんとうは、そう簡単に診断がつかない。

 医師はめまい、視界のぼやけ、吐き気などがないか患者に問診して診察することもあるが、これも必ずしも上手くいかない。

 本人が症状に無自覚ということもあるし、特に激しいスポーツの世界ではベンチ入りしたくない選手が隠すことすらあるからだ。
no title
photo by Pixabay
 脳しんとうの影響で、何か生物学的な変化が生じているのなら(これを「バイオマーカー」という)、それをもとに客観的な診断を行えるようになるだろう。

 たとえば脳に損傷を受けると、血液に含まれるタンパク質に変化が現れることが知られている(2018年、アメリカ食品医薬品局が検査法として承認)。同様に、唾液や尿に基づく検査も有望だ。

脳しんとうで腸内細菌が変化することが判明

 アメリカ、ヒューストン・メソジスト研究所による最新の研究では、腸内細菌叢(腸内に棲息している細菌の集まり)の変化から、脳の傷のサインを読み取ることができないか探られている。

 そのために研究グループは、大学アメフトの選手33人をワンシーズン観察し、血液検査・検便・唾液検査とあわせて、腸内細菌叢を調べてみた。

 その結果、脳しんとうを起こすと、一般に健康な成人には豊富にいるはずの細菌2種が減少することが明らかになった。

 さらにそうした細菌と脳の外傷で変化する血液のタンパク質が関係していることも突き止められた。
iStock-857984504
photo by iStock

腸内細菌の変化が脳しんとうの判断に役立つ

 奇妙な関係だが、研究グループの推測によれば、脳しんとうで炎症が起きた結果、そのタンパク質が体内に広まり、腸内細菌叢に影響している可能性があるという。

 こうした結果を総合的に考えると、腸内細菌叢の変化は、脳しんとうを客観的に診断するバイオマーカーとして有望であるとのこと。

 それだけでなく、怪我からの回復具合の確認にも使えると考えられるそうだ。

 患者がどんなに大丈夫と口にしても、腸内細菌がもとに戻らない限り回復したとは言えない。「腸は嘘をつかない」と、研究グループは語っている。

 この研究は『Brain, Behavior, & Immunity―Health』(2022年3月1日付)に掲載された。

References:Study links concussion to changes in gut bacteria / written by hiroching / edited by / parumo
あわせて読みたい
腸内細菌はどのようにして記憶に影響するのか。その秘密は乳酸菌にあった?(国際研究)

孤独?寂しい?その感情は腸内細菌が関与しているという研究結果が報告される

腸内細菌と脳が直接対話している様子が観察される。腸が指令を出していた

人間の腸の中に14万種ものウイルスを発見。そのうち半分は完全な新種(英研究)

便微生物移植がアルコール依存症の治療に効果があることが最初の治験で明らかに(米研究)

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします

この記事に関連するキーワード

キーワードから記事を探す

コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2022年05月18日 09:01
  • ID:8Ua69T0s0 #

最近腸内細菌の話題が熱いね。
爪のアカを煎じて飲ませたいって言葉があるけど〇〇さんの大便を移植したいって方が科学的に理にかなってるってことかな?

2

2. 匿名処理班

  • 2022年05月18日 09:55
  • ID:aVaChOag0 #

脳震盪で変わるなら下痢したらどんだけ変わるねんって話

3

3. 匿名処理班

  • 2022年05月18日 10:37
  • ID:LsE50Hal0 #

ハリガネムシがカマキリを操る話は有名だけど、実は人間も腸内細菌に操られてるって説があるらしいね。

4

4. 匿名処理班

  • 2022年05月18日 10:40
  • ID:FkNfu5lT0 #

※2
無神論者だけど下痢の時だけは神に祈る程度に変わる

5

5. 匿名処理班

  • 2022年05月18日 11:04
  • ID:gpgBZ0Yi0 #

全身は密接に繋がっていて相互に影響し合ってるんだな

6

6.

  • 2022年05月18日 11:12
  • ID:8cnlm.RW0 #
7

7.

  • 2022年05月18日 11:33
  • ID:0A9tCRP40 #
8

8. 匿名処理班

  • 2022年05月18日 11:55
  • ID:Kl03pUFM0 #

脳と腸の関係性を追っていくと脳だけ取り出してサイボーグの体に移植しても成り立たないのではと感じた

9

9. 匿名処理班

  • 2022年05月18日 12:37
  • ID:ZOB8JbJH0 #

腸「こちら腸よりコマンドポスト、放屁の許可を願う。」
脳「こちらコマンドポスト、放屁のみであれば許可する。」

嘘つきなんだよなぁ。

10

10. 匿名処理班

  • 2022年05月18日 12:45
  • ID:9wSzoZ9L0 #

生き物の本体は腸だって話もあるくらいだもんね

11

11. 匿名処理班

  • 2022年05月18日 12:51
  • ID:UOtD5cGw0 #

めちゃくちゃ快便で3回もバナナ●が出た日は情緒も絶好調だったけど、寝不足になった次の日にはおなか壊すし、メンタルも不調になる。腸って如実に影響力あるね

12

12. 匿名処理班

  • 2022年05月18日 12:56
  • ID:Z2ascCcT0 #

腸カタル(語る)

13

13. 匿名処理班

  • 2022年05月18日 13:29
  • ID:xrWbt6UD0 #

肌の常在菌と同じで正しい状態がはっきりしないのに騒ぎすぎ
ストレスは万病のもとみたいに、そう言われても無理ですよねって話

14

14. 匿名処理班

  • 2022年05月18日 15:57
  • ID:htaKj2O00 #

精神的ショックですら下痢するんから物理的ショックで細菌が少々変わるなんて当然

15

15. 匿名処理班

  • 2022年05月18日 18:30
  • ID:la4RF6VR0 #

>>1
自分も同じ事を思った。結局腸内環境って脳並みに大事だよね。記事とは関係ないんだけど、肥満で胃を切除したりクリップで止めたりする人がいるけど、痩せ型の人の腸内細菌移植ではだめなのだろうか?

16

16. 匿名処理班

  • 2022年05月18日 19:23
  • ID:Z3iQg51B0 #

記事を読んで思い当たる事があったし、今も続いている

17

17. 匿名処理班

  • 2022年05月18日 21:40
  • ID:Va4YmQet0 #

どうせ移植するなら
臭いの少ない人のがいいな
好き嫌いあると思うの
食糞するんだし

18

18. 匿名処理班

  • 2022年05月18日 22:50
  • ID:8eXDOPkn0 #

うつ伏せなので顔がわからない

19

19. 匿名処理班

  • 2022年05月19日 00:00
  • ID:KLFzWZXb0 #

腸が人間の本体説あったよな

20

20.

  • 2022年05月19日 05:45
  • ID:WpmU5pWQ0 #
21

21. 匿名処理班

  • 2022年05月19日 11:55
  • ID:l5ytZOKL0 #

※19
そりゃ、ミミズ。
進化した結果、脳まで捨て去った。

22

22. 匿名処理班

  • 2022年05月19日 21:01
  • ID:23T06wcK0 #

山科けいすけの四コマで、
医者が「腸って脳ににてるな」って気づいて(漫画にするとそっくり)
頭蓋内に腸を移植してごまかすのがあった
40年ぐらい前に描かれたものだけどすごい慧眼

23

23. 匿名処理班

  • 2022年05月20日 06:33
  • ID:6L8XcWdL0 #

※4
私も無神論者だけど下痢の時だけはあまりの痛さに神に祈ってしまう

24

24. 匿名処理班

  • 2022年05月22日 18:26
  • ID:9xenkWBa0 #

確か、神経系もニューロンもない海綿動物から神経伝達物質を分泌する細胞が見つかったとかで、ニューロンは最初海綿動物の消化システムから発生し、やがてそこから脳が作られた可能性が高い、という研究が発表されてた

つまり、「腸は第二の脳」どころか「脳は腸から生まれた」みたいな話

お名前
ADVERTISING
記事検索
月別アーカイブ
ADVERTISING
ADVERTISING