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死んだ細菌を注射して腫瘍を死滅させる、新たながん治療の研究

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38件のコメントを見る

(著) (編集)

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 オーストラリア国立大学の研究グループは、とても斬新ながん治療の開発を進めている。

 それは腫瘍に細菌の死骸を注射するというものだ。細菌の死骸が注入されると、免疫系が異物の侵入を感知する。すると、がん細胞までも攻撃対象となり殺されてしまうのだ。

 すでにキャンベラ病院で第I相試験が行われており、その結果が『British Medical Journal』(21年9月16日付)で報告されている。

細菌の死骸で免疫系を活性化させ、がん細胞を攻撃する

 研究の中心人物オード・ファーラー准教授は、やり方はとてもシンプルだと語る。

 細菌(マイコバクテリウム属)の死骸入りのオイルを生理食塩水を混ぜる。そうしてできた歯磨き粉のような乳剤を、がんに注射するだけだ。

 すると免疫系が死骸を異物と認識し、「キラーT細胞」を集めて排除しようとする。その時、がん細胞までをも敵と認識して、殺しにかかるのだ。

 こうして免疫が強化された結果、注射した部位だけでなく、転移したがん細胞まで死滅する。

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副作用も少なく、治療が簡単でコストも安い

 治験では、安全性と有効性について有望な結果が得られている。だが、ファーラー准教授によると、ほかにもいくつか利点があるという。

 まず投与が簡単で、その回数もほんの数回でいい。

 一般的な化学療法や放射線治療では、長期にわたって繰り返し治療を施さねばならない。しかし今回の治験では、6週間間隔で、たった2回死んだ細菌入りの乳剤が注射されたのみだ。

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 また副作用も軽い。一部の患者から、注射後1時間ほどちくっとした痛みが続いたと報告されているが、その程度。

 一晩ほど熱が出た患者もいたが、それは免疫系がきちんと作用している証拠でもある。

 「化学療法や放射線療法の副作用に比べれば、些細なもの」と、ファーラー准教授は説明する。

 しかも安い。投与1回分の費用は、たったの5~20ドル(570~2280円)だ。一方、ほかの免疫療法を試そうものなら、4万ドル(約450万円)はかかる。

 これほどの低コストならば、途上国でも利用できるだろう。

 一方、欠点としては、腫瘍に直接注射しなければならないため、手が届きにくい部位や血液のがんなどには使えないことが挙げられる。

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がんの治療に細菌の死骸というアイデアは1世紀前から存在した

 ちなみに、がんの治療に細菌の死骸を使うというアイデアは、すでに100年以上前にあったのだとか。

 免疫療法の創始者の1人として知られるアメリカの外科医ウィリアム・コーリーが、1890年代にがん患者でその実験を行なっていた。

 しかし実際に治験を行なったのは、今回のオーストラリア国立大学のグループが初めてとのことだ。

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今後、第II相試験が予定

 ファーラー准教授らは今、第II相試験の準備を進めている。そして、その時は死骸だけでなく、「阻害剤」の併用も検討しているそうだ。

 阻害剤は、T細胞のブレーキを解除する作用がある。細菌の死骸によって免疫系が強化され、しかもそれを抑えるブレーキが外れてしまえば、相乗効果でよりいっそうの治療効果が見込めるとのことだ。

※この記事に掲載されている情報は、教育および情報提供のみを目的としており、健康や医療に関するアドバイスを目的としたものではありません。病状や健康上の目的について疑問がある場合は、必ず医師またはその他の資格を有する医療従事者に相談してください。

References:Promising link between dead bacteria and cancer treatment / written by hiroching / edited by parumo

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この記事へのコメント 38件

コメントを書く

  1. 抗がん剤よりも負担少ないならいいかもね
    髪が抜けるのとかは女性にとっては更に辛いしね

    • +13
  2. もし本当に有効が証明されたらノーベル賞級の大発見ですね

    • +23
  3. こりゃいいな
    是非とも製品化まで頑張って欲しい

    • +13
  4. >がんの治療に細菌の死骸というアイデアは1世紀前から存在した

    さいきん思いついたんじゃないんだ ?

    • +15
  5. ガンに直接薬品を入れるのは前からあったけど(アルコールとか)、適応範囲が狭いためかあまり使われたとき聞かない。
    深部なら長い針で技術がいる、皮膚ガンとかは切除が早いとか…

    これ骨ガンは狙えるかな?
    直接、狙えるのは甲状腺と咽頭、鼻腔辺りはできるだろうから早く実用化してほしい。

    • +3
    1. >>7
      内視鏡という技術があってですね、消化管や肺もイケるハズ。何よりこれの凄いところは、転移にも有効なコト。勿論低コストも素晴らしい

      • +8
      1. ※16
        いや内視鏡は知ってます。
        GF・CFを受けたし、弟は気管支…まあいいや
        そうですね、この療法が使えますね。

        ※29
        骨ガンのことですか?
        あなたのコメントが何に対してか
        わかりません、ゴメンね。

        • -3
    2. ※7
      血液のガンはダメとあるから、腫瘍のように塊ができてないとダメなんじゃないかな。腫瘍細胞を殺す感じかも。あとは流れ弾(はぐれキラーT細胞)が他の正常細胞を攻撃しないようにするアタリをどうするか・・・

      • 評価
  6. 健康で健全な人のうんちっちを移植すると
    鬱が改善されたとか色んな疾患が治ったとか
    やってたけどがんもうんちっちでなおったりは
    しないんかね 腸内細菌ってすごいんやなあ

    • +3
    1. ※8
      糞便移植でガンも治る説もあるよ
      突き詰めればすべての病はすべて自律神経異常だからね

      • 評価
  7. ただひたすらに素晴らしいよ。ちゃんと実用化までされて欲しい。
    これが似非科学でなく本当に効果の高い治療法でありますように。
    もっと高コストな治療薬を商売にしようとしている人たちに潰されませんように。

    • +13
  8. ホントに何処に解決策が転がってるか判らんね癌は
    見付けた人も凄い

    • +9
  9. ガン細胞は「自分は敵ではない」という信号を発信して身体の免疫系を騙して攻撃されないようにするらしい
    こうやって免疫にしっかり敵と認識させるとあっさり片付くんだな

    • +16
  10. 素晴らしい!
    頑張って実用化させてほしいね!

    • +6
  11. 最近は、癌をわざと外部に取り出し何かの薬剤で弱らせたあと体内に戻すと、
    はんごろしにされ弱体化した癌は自分を叩けというシグナルを出すようになるので
    免疫を活性化させる薬剤と組み合わせて叩くというのを読んだなあ。なるほどと思った。
    癌研究も日進月歩だなあ

    • +7
  12. >しかし実際に治験を行なったのは、今回のオーストラリア国立大学のグループが初めてとのことだ。

    なぜだ?

    不自然すぎる

    • -8
    1. ※15
      何を勘ぐっているか知らないが、こうして日の目を見たんだからいいじゃん

      • +3
    2. ※15
      眉唾と思われてたんじゃないの?
      じっさい、予備知識ないと、え~~~って思う。

      でも最近は、細胞内共生細菌(Wolbachia)に感染した蚊の体内でデング熱ウィルスが減少することがわかってきたり、免疫系について新しい知見も増えてきたからね~。

      こういうこと思いつく人たちすごいわ。

      • +8
    3. ※15
      トレンドだよ
      コーリーが細菌に対する免疫反応によるがん治療を開発して、その後ワクチンを使ったより安全でスマートな治療法へとシフトしていったんだ
      実際、現代ですらワクチンを打つことすら嫌がる人がいるし、死んだ細菌をガンに直接擦り込むなんていう原始的な方法は当時でも受けが良くなかったんだろうね
      そんなわけで、医学の世界も治療法に流行り廃りがあるのさ

      • +3
    4. ※15
      謎を提起するのは誠に良いが、
      何がどう不自然に思ったのか、具体的に書いたほうが良い。

      • 評価
  13. 死んだ、もしくは死にかけの弱ったウイルスを投与すると免疫がゲットできるみたいな話だな

    • +2
  14. そーいえば大腸がん治療で新しい治療法が承認申請ってニュースもあったなぁ
    この治療法は日本で承認されるんかな・・・・

    • 評価
  15. 安い!
    ・・・ということはアメリカでは流行らないな

    • -1
  16. 異物を狙ったガン患部に注射して脳筋免疫細胞を総動員させる技術的な課題が克服されてきたという事なんだろう
    どんな異物がキラー細胞の殺意の波動を呼び覚ますか判明したのは最近の医学の進歩によるものだ
    死んだ雑菌が安全性が高くて一番いいんだろう

    • 評価
  17. 丸山ワクチンも似たような発想やったんけどな〜w
    効くんだか効かないんだか大論争大混乱だったよな〜ww

    • +1
    1. ※23
      ステージが進んでもう手術できない知人が免疫療法やって
      一時的には相当元気になってたよ、退院後は発病前の身のこなしだった

      • 評価
  18. 100年も前からアイデアはあって一応実験もされてたのにこれまで確立されなかったのは、儲からないから(治療費が安いから)なのか?なんて勘ぐりたくなるな
    ともあれ実用化に近づいたなら喜ばしいことだ
    副作用も少ないならたとえ効果が限定的でもトライしたい患者さんはたくさんいるだろうから

    • 評価
  19. なんとなく、
    カリオストロの城で、
    銭形警部がルパン三世を追いかけるのを口実にカリオストロ伯爵の偽札工場を満天下に暴いて見せたシーンを思い出す。

    • 評価
  20. アメリカの金儲け主義の製薬会社に消されなければいいな

    • -1
  21. 活性化した免疫機能が勢い余って健全な細胞を殴り始めるようなことはないんだろか。
    なんだっけ、最近聞いた、サイトカインストームみたいな。

    何にせよ、おもしろい。今後に期待だねえ。

    • +2
  22. 皮膚がんにアクネ菌を注射してガンを消すって記事を昔読んだけど、その後の音沙汰が無い辺り、思ったほど上手くいかないのかなぁと思うわ

    • +1
  23. かんたんで副作用も少なそうだから効果の確認を待たず受けたい人は誰でも治験できるようにしてほしい。

    • 評価
  24. 医療費が桁違いすぎる。素晴らしい
    患者も家族も政府も大助かり

    • +5
  25. 転移まで効くってのはなかなかすごい技術だね。コストも安いだろうし早期実用化を期待したい。

    • +6
  26. 日本では医師会と製薬会社と議員の利権確保の為に普及しないor法外なマージン付の治療法に、までがテンプレ

    • 評価

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