
疑い例を含めると、年間有病率は8.4%と推定され、男性より女性に多く起こると言われているが、片頭痛持ちの人にはすこし慰めになるかもしれない研究結果が報告された。
アメリカ化学学会のメディアブリーフィングで発表された研究(21年8月26日付)によれば、片頭痛持ちの人は2型糖尿病になりにくいそうだ。
遠く離れているはずの脳と膵臓で起きている症状に奇妙な関係があるのはなぜなのか? それは片頭痛の原因であるペプチドが、インスリンを作っている細胞を守り、増殖を手助けしているからだという。
片頭痛を引き起こす要因とされる2つのペプチド
片頭痛のメカニズムは、まだ完全には解明されていないが、最近では脳そのもの、もしくは脳血管や三叉神経(眼神経、上顎神経、下顎神経の3つに分かれる神経)に原因があるのではないかと考えられている。体の神経の中には、「カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)」と「下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)」というペプチド(アミノ酸が短く鎖状につながった分子)が存在するが、何らかのきっかけで三叉神経が刺激されると、これら2つのペプチドが分泌され、脳硬膜の血管のまわりに炎症が起こり、その刺激によって片頭痛の痛みが起こると言われている。
面白いことに、これら2つのペプチドは膵臓にも存在しており、インスリンの分泌とも関係しているようなのだ。

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インスリンの作用不足で起きる2型糖尿病
何かを食べて血糖値が高くなると膵臓から分泌されるインスリンは、細胞がブドウ糖を取り込む手助けをしている。こうして取り込まれたブドウ糖は、筋肉や内臓が働くためのエネルギーとして使われる。2型糖尿病の原因の1つは、インスリンが細胞に効きにくくなり(これをインスリン抵抗性という)、ブドウ糖が吸収されなくなってしまうことだ。
インスリンが細胞に効きにくくなってしまうと、これを作っている膵臓内の「β細胞」(膵臓の内部の膵島でインスリンとアミリの合成と分泌を行う細胞)はさらにたくさんのインスリンを分泌して対応しようとする。が、やがては疲弊して死んでしまい、さらに病状が悪化する。

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片頭痛の時に分泌されるペプチドにインスリン分泌促進効果
米テネシー大学のタイン・ド博士らが調べたのは、CGRPとPACAPの2つのペプチドとインスリンの関係だ。わずか数百個のβ細胞からデータを得る方法を考案して調べたところ、まずCGRPがマウスのインスリン濃度を下げることが明らかになったという。
β細胞ではインスリンと一緒に「アミリン」というペプチドも作られている。これが溜まるとβ細胞を傷つけてしまうので、インスリンが作られなくなってしまう。
だがCGRPはインスリンの分泌をおさえる効果があるので、アミリンもまた抑制される。これによってβ細胞を守って、糖尿病を防いでくれるというのだ。(ただしこちらのペプチドはマウス実験の段階で、現時点で人間には効果がなかったとのこと)。
もう1つのペプチド、PACAPもまた糖尿病の発症を抑えていると考えられているが、不思議なのは、こちらにはインスリンの分泌を促進させる効果があることだ。
インスリンを増やそうとβ細胞が頑張れば、疲弊して死んでしまう恐れがある。それなのになぜ糖尿病の予防効果があるのか?
今回の研究で明らかになったのは、PACAPがβ細胞にもっと頑張るよう鞭打っているわけではないということだ。そうではなくその増殖を助けているらしいのだ。だからβ細胞は疲弊せず、糖尿病になることもない。

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ペプチドとインスリン分泌の関係解明で新たな糖尿病治療薬が
最近では、CGRPとPACAPペプチドを阻害して片頭痛を緩和する薬が登場している。しかしタイン・ド博士は、これが糖尿病になるリスクを高めるのではないかと懸念している。2つのペプチドは片頭痛の原因であるが、血管を広げるなど、人体の中で大切な役割をも担っている。それを変化させてしまっても本当に大丈夫なのか? タイン・ド博士らは、この点について研究を進めているとのことだ。
その一方で、CGRPとPACAPの2つのペプチドには、糖尿病を治す効果がありそうだ。しかし残念ながら、片頭痛を引き起こしてしまう可能性があるので、そのまま治療薬として使うことはできない。
それでもペプチドとインスリン分泌との関係が解明されれば、インスリンを調整しつつ、それでいて片頭痛を引き起こす痛みの受容体とは結びつかない薬を開発できると期待できるそうだ。
References:Those suffering from migraines could be at lesser risk for diabetes / written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
先進諸国では絶滅状態のサナダ虫をはじめとする寄生虫が一般家庭レベルで現役活躍中の途上国などではアトピーなどのアレルギー疾患や糖尿が少ないらしい
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3.
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5. 匿名処理班
無糖の飲むヨーグルトを毎日のんで
ネバネバサラダを週3回以上食べるようにして
ジョギングやウォーキングも頑張ってるから
もうこんなもんで勘弁してくれ。
6. 匿名処理班
どっちも嫌だけど、糖尿は生活次第で防げる。
片頭痛は割と運?だから片頭痛の方が嫌だな。
7. 匿名処理班
週1で吐き気を催すレベルの頭痛が起こる偏頭痛持ちなのに血糖値高いんじゃが…
8. 匿名処理班
偏頭痛持ちだけど甘いものあまり食べないジュース飲まないのに血糖値がすぐ高くなるんだけど
親が糖尿なんだよね
9. 匿名処理班
おれは偏頭痛おじさんだけど健康診断では順調にコレステロールと腹囲と血圧が高めに推移しています!
それはそれとして糖尿にはなりにくいってことを喜んでいいのかな?
10. 匿名処理班
頭痛持ちだったけど、(ヒドイときは嘔吐するレベル)
気が付いたら10年以上頭痛と無縁で生きてるわ
煙草をやめたおかげかもしれん
11. 匿名処理班
糖尿にならない家系だが頭痛神経痛家系だわ
平均寿命以降に癌でPPKの特典付き
なんか関係あるのか?
12. 匿名処理班
動けなくなるほどの片頭痛持ちに進化してしまいました
が、頭痛外来ともいうべき神経内科の先生と出会い、ゆっくりと治療していきましたところ
いつの間にか治っていました
あれ?そろそろ来るかな?と予感があり先日酷い片頭痛が来ましたが、それも数年ぶり
自分が片頭痛持ちだった事も忘れていました
13. 匿名処理班
自分は群発頭痛もち
発症するとかなりヤバい、激痛、頭が割れるようになる
自殺病とか言われてる 脳神経が暴走するらしい
滅多に発症しないし(年に数回)
病院に行っても解ってくれないから諦めてるけど
薬が出来たなら、欲しいな
この症状を持ってる人は、頭がいいと云われてるけど
自分は普通、ただやはりギターとか好きで当てはまってるなーとは思う
14. 匿名処理班
※1
アレルギー疾患はさておくとして、糖尿に関しては
単に「寄生虫を撲滅できてないくらいの発展途上国では
飢餓状態の国民も多く、糖質過多とは程遠い」
という擬似相関なだけでは…。
15. 匿名処理班
どっちも持ってる私はどうしたらいいですか
16. 匿名処理班
吐いてしまう程の偏頭痛持ちだったけど、整体と酸素バー(カプセルじゃなくてお茶飲みながら吸入させてくれる、今はもうなくなっちゃったけど)通ったら半年くらいでスッキリなくなったよ。
17. 匿名処理班
どっちが良いんだろ?
片頭痛持ちの人が「へ〜、糖尿病にならないんなら、片頭痛持ちで良かった」とはならんよな。
18. 匿名処理班
光や音で誘発されるということはてんかんとかはどうなるんだろうな?
19. 匿名処理班
偏頭痛持ちだけど唯一のいい情報なの…か?
月に数回は痛いし糖尿じゃない他の病気の確率は上がるからマイナスだけど
20. 匿名処理班
炭水化物食べてない日は確かに頭痛すごい
21. 匿名処理班
初めて偏頭痛で良かったと思えたわサンキュー